写真家・佐々木啓太が教える・カラー&モノクロプリントの極意 ポートフォリオブックにまとめると写真が変わる! ~エプソン EP-10VA 活用編~ 執筆・撮影:佐々木啓太

EP-10VAエプソン EP-10VA 新登場!
2015年10月22日発売予定

佐々木啓太佐々木啓太 Keita Sasaki
1969年兵庫県生まれ。街角写真家。日本写真芸術専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。現在は『街角写真家』という肩書きをつけて活動中。雑誌での執筆をこなしながら作品作りに励んでいる。10月16日(金)~21日(水)(オリンパスプラザ東京)11月13日(金)~19日(木)(オリンパスプラザ大阪) で、「故郷(ふるさと)懐かしく感じた場所」という写真展を開催予定

エプソンのカラリオシリーズに登場した新高画質モデル「EP-10VA」。サイズは「EP-978A3」シリーズに準じた"ときどきA3"の複合機でありながらコンパクト設計。グレーとレッドを加えた新6色染料インク「Epson ClearChrome K2インク(以下 K2インク)」の搭載でグレーバランスに優れ、広い色域での鮮やかなカラープリントやなめらかな階調のモノクロプリントもできる。日常から作品作りまで使える新機種とその活用例を紹介する。

「写真をプリントする意味」を考えていますか?
ポートフォリオにまとめて自分自身と向き合おう!

撮影シーン デジタルでの機材選びはレンズ性能も大切な要素。信頼できるレンズを使うと階調も豊かで暗部に締まりのある表現が楽に作れる。信頼しているM.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8とOM-D E-M1の組み合わせ。

コンタクトシートをプリントして一覧でセレクト セレクトは、「EP-10VA」にメモリーカードを挿し、「作品印刷」/「撮影情報付き印刷」/「20面」の機能を使い、「写真選択」にしてある程度選んだ写真のコンタクトシートを作ると全体を把握しながら作業できる。

写真をプリントする意味と書くと少し難しく聞こえるかもしれませんが、モノクロ写真から始めた僕にとっては、プリントして初めて写真と言えるほど当たり前のことです。デジタルカメラではモニターやタブレット、液晶テレビで見るのが楽かもしれませんが、プリントはいつでも手に取れて、複数の人とも同時に見やすいのでコミュニケーションの手段としての写真の役割も強くなります。

プリントをしなくなる理由のひとつはプリントがうまくいかないという経験があるかもしれません。この問題を解決するためには、モニターの透過光とプリントの反射光という鑑賞時の光の違いやグレーバランスを意識する必要があります。光が変わると色の鮮やかさの印象も変わりやすいので、プリントに鮮やかさを求めるのであれば、僕は染料インクプリンターと高光沢写真用紙「クリスピア」が最適な組み合わせだと思います。グレーバランスはグレーインクで解決できます。「EP-10VA」のようなグレーバランスに優れたプリンターを使えば、プリントする意味を難しく考えることなく、手に持って見られるプリントの利点をもっと感じてもらえると思います。

仕上がったプリントは1枚1枚で善し悪しを判断せずに、ポートフォリオブックにまとめましょう。まとめるときはあらかじめセレクトしますが、そのときも写真の善し悪しやお気に入りだけでなく、「なぜか撮っていた」そんな写真も加えるとまとまりに広がりが出ます。この広がりが自分の求めているものを気づかせてくれたり、足りないことを教えてくれたりします。そして、その広がりこそ自分自身です。自分自身と向き合うとちょっと恥ずかしくなりますが、そんなことが自然にできるのがポートフォリオブックです。

EP-10VAでA4プリント

セレクトが終わったものはA4プリントで最初の確認。画素数も上がって繊細な表現になった最近のデジタルデータはモニター画面の拡大よりプリントのほうが細かいピント位置や階調を確認しやすい。

ポートフォリオブック

1枚の完成度も確かに重要だが、個人的にはひとつのテーマを複数のプリントでまとめたシリーズを大切にしている。ポートフォリオブックにまとめると自分らしさも意識しやすくなる。

気に入った写真はA3プリント

ポートフォリオブックを作りながら、気に入った写真はA3に伸ばして額装する。額装して部屋に飾ると作品らしさがいっそう強くなる。さらにまとめて写真展という流れにもつながる。

新6色インク採用でプリント画質の深みが極まった!!
A3連続給紙対応・エプソン「EP-10VA」が新登場!

EP-10VA

エプソン EP-10VA
価格:オープンプライス
予想実勢価格:45,980円(税別)

» EP-10VA製品紹介ページ

おもな製品仕様
最高解像度 5,760×1,440dpi
インク 6色、染料、独立型インク
用紙サイズ L判~A3
印刷速度 約2分23秒(A3 写真用紙<光沢>、リア手差し給紙)
インク・用紙合計コスト 約19.9円(税別/L判・写真用紙<光沢>)
液晶モニター 4.3型ワイド
外形寸法(収納時) (W)479×(D)395×(H)168mm
外形寸法(使用時) (W)479×(D)743×(H)453 mm
質量 約9.5kg インク・ACアダプタ含まず
※最小1/5,760インチのドット間隔で印刷します。

 エプソンプリンターの特徴といえば、作品作りに絶大の信頼を得ている「K3インク」を思い浮かべます。このネーミングは黒系の黒、グレー、ライトグレーインクが搭載されているためです。グレーインクがあるとグレーバランスの問題は解決できます。ただ、「K3インク」は顔料インクであり、搭載するプリンターはプロセレクションの少し大きめのプリンターだけでした。

 「EP-10VA」に採用された新6色染料インクには、グレーとレッドのインクが含まれています。グレーインクが採用されたことでグレーバランスの問題は大きく改善されています。さらにレッドインクで染料インクプリントらしい鮮やかさも活かしやすくなっています。これは先に挙げた光による鮮やかさの違いをより軽減してくれる利点があります。これまで気になっていたグレーバランスが改善されて、鮮やかさという染料インクの優位点をさらに高めて作品プリントへの道が広がった印象を受けました。特にモノクロプリントはこれまで微妙なグレートーンを再現するためにはプロセレクションという選択肢しかなかったので、このプリンターで多くの方に本来のグレートーンを体験していただけると感じました。さらに、作品プリントではレタッチしながらになることも多く、用紙を1枚ずつプリンターに入れながらではレタッチへの集中力が低下すると感じることがあります。「EP-10VA」は、A3写真用紙も5枚までの連続給紙に対応したので作業効率も高くなりました。

エプソン「EP-10VA」の特徴紹介

新インクに大幅な進化 グレー&レッドの効果

グレーインクでグレーバランスが良くなると、モノクロだけでなくカラーのプリントでも細かい描写や階調再現性の向上が期待できる。レッドインクは最後の切り札的に鮮やかさを引き立たせてくれる印象だった。

A3用紙の連続給紙など 用紙対応力も向上

写真用紙はA3サイズも5枚まで(普通紙は10枚まで)背面からの連続給紙が可能。背面トレイからはA3、2段の給紙トレイにはL判とA4というように同時セットも可能だ。

ダイレクトプリントにも対応

パソコンなしのダイレクトプリントができるのも「EP-10VA」の大きな特徴。「EP-10VA」は4.3型ワイドのタッチパネルがあり、大きなサイズで画像を確認でき、シャッター速度や絞り値などのExif情報も表示できる。

「Colorio V-edition」EP-10VA登場!
低コストで高画質プリントが楽しめるようになった!

Colorio V-edition EP-10VA 「Colorio V-edition」 EP-10VA
新登場

広色域・手軽なモノクロ印刷・コンパクト・A3連続給紙可能などのEP-10VAの強みはそのままに、新登場の「Colorio V-edition」EP-10VAは、これまでよりもインクカートリッジのコストが下がり、より印刷コストを気にせずに作品作りを楽しめるようになりました。

具体的には、L判写真用紙の印刷コストが今までは19.9円だったのが、12.7円になりました(用紙代込)。「Colorio V-edition」EP-10VAはたくさん写真をプリントするユーザーほどメリットを享受できるモデルといえます。これまで印刷コストにストレスを抱えていたユーザーにも、多機能で高画質な「Colorio V-edition」EP-10VAはおすすめです。撮影した写真をたくさんプリントできる環境が強化され、写真テクニックの上達や表現したいものの明確化にもつながりやすいでしょう。

» カラリオ・プリンターの新シリーズ『Colorio V-edition』の詳細情報

エプソン EP-10VA の作品印刷機能で「モノクロプリント」を制作
グレーインク搭載で作品集のクオリティも思いのまま!

作例

作品名 クロムの輝き
道端に停めてあったバイク。モノトーンの設定で撮影していたのでクロムのような輝きに吸い寄せられてシャッターを切った。このコントラストの強さは光沢モノクロに合っていると感じた。

パソコンレスでこだわりプリント

「EP-10VA」のタッチパネルで「作品印刷」/「モノクロ作品印刷」を選ぶとモノクロデータだけでなくカラーデータもプリンターだけでモノクロ化して、明るさ/コントラストを微調整しながらプリントできる。

切れ味あるモノクロを体感!調子表現や余白にこだわって作品と向き合おう!

 デジタルカメラの高画質化はモノクロ写真への敷居を低くしてくれました。これは、画質が上がって階調の再現力が高くなったこともポイントですが、グレーバランスに優れたプリンターの存在も大きいと思います。そんな要因もあってモノクロ写真は注目度が上がっている分野です。例えば撮影時の設定をモノクロやモノトーンにすれば簡単にモノクロ写真は撮れます。ただ、これまでの染料プリンターではグレーバランスの問題もあったのでプリントは少しピンクやグリーンに感じる純粋なモノクロにはなっていませんでした。「EP-10VA」にはグレーインクが採用されたので、染料インクプリンターらしい光沢感を活かした「光沢モノクロ」という表現も可能になりました。

 黒から白のシンプルなトーンのモノクロは少し大きめの用紙にフチをつけてプリントした方が、黒の深みや白の輝きを感じやすくなります。レストランなどでマットつきで額装されているモノクロプリントがかっこ良く感じるのはこのためでもあります。自分でプリントするときも用紙全面に写真をプリントせずにフチをつけるのがオススメです。ノートリミングでフチをつけると上下と左右のフチの幅が変わりますが、少し大きめのフチにするとそのフチも作品の一部という印象が強くなります。フチをつけてプリントするときは、「EP-10VA」はパソコンなしのダイレクトプリントでもフチにこだわったプリントが可能で、タッチパネルで「作品印刷」/「フチをつけて印刷」から、「フチなし」「フチ(黒)」「フチ(白)」「フチ(黒)枠付き」「フチ(白)枠付き」やフチの太さは「普通」「太め」「やや太め」「かなり太め」が選べます。パソコンからは「Epson Print Layout」というエプソン純正ソフト(Photoshop/Lightroomプラグイン)がオススメです。

 高光沢の「クリスピア」を使うと染料インクらしいシャープさを活かした光沢モノクロ表現がいっそう楽しくなります。光沢モノクロのときは、「フチ(黒)枠付き」、フチのサイズ「やや太め」にするとフィルム時代のダイレクトプリントのような黒の締まりと表面の輝きを強調できます。マット系のアート紙「Velvet Fine Art Paper(以下 ベルベット)」を選べばしっとりとした深みが表現しやすくなります。この用紙は、用紙表面に程よいテクスチャーが入っていて切れ味も表現しやすい特徴もあるので、マット系の落ち着いた印象と切れ味を同時に活かしたいときに最適です。ダイレクトプリントではカラーデータもプリンターが自動でモノクロに変換してプリントができます。モノクロと聞いただけで難しく感じる場合は、好きなカラーデータをプリンターでモノクロ化してプリントすることから始めてください。

仕上げ&プリントのポイント:1

パソコンなしのダイレクトプリントで思い通りの仕上がり
「EP-10VA」はタッチパネルの「作品印刷」/「写真の編集」の「一覧印刷」では色編集一覧を、「作品印刷」/「「モノクロ作品印刷」の「一覧印刷」ではモノクロ 明るさ調整・コントラスト一覧をプリントで確認でき、好みの仕上がりに設定できる。

仕上げ&プリントのポイント:2

Epson Print Layoutからのプリントは余白にこだわれる
「Epson Print Layout(Photoshop
のプラグインソフト)」では、余白や余黒の幅を自由に変えることができ、ダイレクトプリントでは、余黒・余白のサイズは3種類、枠付きも選べる。

モノクロプリントは
「余白の付け方」
にこだわろう!
(佐々木啓太先生)

エプソン EP-10VA を使って「A3作品プリント」を額装展示
Epson ClearChrome K2インクの美しい色再現性を堪能!

作例

作品名 水の流れ
台風の後で少し水量が増したせせらぎ。超広角レンズをライブビューで俯瞰気味のアングルにして緑の葉っぱの中を流れる雰囲気を狙った。

***

このカラーの作品には、白い額に少し意匠が入っているものを選んだ。額選びは、額の印象が強くなりすぎないようにするのが基本だが、たまには遊び心も大切だ。

染料・新高画質を体感!自分の作品はA3プリント&額装して展示しよう!

 新6色インクやモノクロプリントを紹介してきましたが、「EP-10VA」は比較的コンパクトなサイズのプリンターでありながらA3プリントができるという特徴もあります。はじめのうちはA3プリントを手にするとその大きさに少し驚くかもしれません。その大きさも壁などに写真を飾ると程よいサイズになります。写真を飾るときはマットつきの額装にすると作品が引き立ちます。額装は専門の業者さんがあって、額の種類やマットと写真のサイズやその割合などが様々で奥が深い分野です。今回使った海外家具の通販サイトには、あらかじめカットされたマットがついている製品もあります。手始めにこんな気軽なもので額装を試してみるのがオススメです。

 写真用の額は、基本的にシンプルなほうが中の写真が引き立ちやすい傾向があります。例えば、季節ごとに写真を入れ替えるだけでも部屋を模様替えしたような気分になれます。旅先で写したお気に入りの写真を部屋に飾ればいつでもその旅の思い出に浸ることができます。

 カラー写真をプリントするときにオススメなのが、新しくなった「オートフォトファイン!EX」です。モニターで見ていたときよりプリントが少し暗かったり色がくすんだように感じるのは、モニターとの光の違いです。その違いを意識してレタッチする方法もありますが、微妙な違いをうまく調整するには経験と知識が必要です。そんな経験や知識をカバーしてくれるのが、新しくなった「オートフォトファイン!EX」という自動調整機能です。これまでの自動調整機能では少し効果が強く感じることもありましたが、今回は進化したインクとの組み合わもあって程よくなっています。パソコンからプリントするときも、新しくなった「オートフォトファイン!EX」を使えます。とりあえず試してみると程よくメリハリのある鮮やかなプリントが簡単にできます。

仕上げ&プリントのポイント:1

積極的に使おう 新しくなった「オートフォトファイン!EX」
カラーの印刷では積極的に使いたいと感じた 新しくなった「オートファイン!EX」。とりあえず「自動」がオススメ。その他「人物」「風景」「夜景」「高彩」「P.I.M」のプリセットもプリンター前面のタッチパネルでプレビューを確認しながら選べる。

仕上げ&プリントのポイント:2

プロファイルを使ったプリントももちろんOK
パソコンでのレタッチに慣れている人にはプロファイルを使ったプリントのほうが安心感があるかもしれない。「Epson Print Layout」を使うと、用紙やプロファイルの設定が1画面でわかりやすく黒フチと白フチのサイズも変えられる。

カラープリントは
新しくなった「オートフォトファイン!EX」 を使ってみよう!
(佐々木啓太先生)

[まとめ]
写真家・佐々木啓太はエプソン「EP-10VA」をこう使い切る!

「EP-10VA」使用風景

エプソン「EP-10VA」を使えばプリント表現の可能性はますます広がる。着地点がしっかりしていることで撮影にも熱意が入る。プリントすることも楽しくなる。相乗効果に大きく期待したい。

 僕自身、プリントはPhotoshopで調整してプロファイルを使うというフローが基本でした。そのためにハードウェアキャリブレーションのできるモニターと、グレーバランスに優れた顔料インクプリンターを使っています。今回「EP-10VA」を使いながら改めてプリンターの進化を感じました。そして、グレーバランスに優れた染料インクプリンターという新しいジャンルのプリンターは、これまでの固定観念から少し離れ、プリントをもっと手軽に楽しむほうが良いように感じました。「プリンター単体の自動補正機能も使いながらプリントを楽しむ」。そんな発想のほうが「EP-10VA」には合っていると思います。これまでプリント作品作りはしっかりとした環境作りも大切でしたが、このプリンターを使えば、データを入れたSDカードやUSBメモリーを使って、気軽にリビングで作品作りが楽しめます。家族や仲間と一緒にプリントしたいと感じました。

さらに上を目指すなら エプソン プロセレクション

エプソン SC-PX3V

エプソン SC-PX3V 3種類のブラックインクが特徴のEpson UltraChrome K3インク搭載。写真展などで大活躍のA2ノビ/17インチ幅ロール紙対応モデル。
» SC-PX3V製品詳細

エプソン SC-PX5V II

エプソン SC-PX5V II ライトグレー、グレー、ブラック(フォト/マット)の3種類のブラックインクが特徴のEpson UltraChrome K3 インク搭載。A3ノビ対応モデル。
» SC-PX5V II製品詳細

エプソン SC-PX7V II

エプソン SC-PX7V II ブルー・オレンジ・グロスオプティマイザ搭載で発色と光沢にこだわった高光沢顔料インクの写真愛好家向けA3ノビモデル。
» SC-PX7V II製品詳細

佐々木啓太おすすめのプリント用紙・グッズ紹介

製品イメージ エプソン写真用紙クリスピア<高光沢>

美しい光沢感と透明感あふれる白さを実現する写真プリントに最適な印画紙タイプの写真用紙。

製品イメージ エプソンVelvet Fine Art Paper

高コントラスト・高彩度の作品にも対応できる、柔らかな質感で味わい深い仕上がりのファインアート紙。

製品イメージ製品イメージ エプソン手づくりフォトブック<マット>

表紙・リング・プリント用紙6枚がセットになったA5サイズのエプソン純正フォトブック。専用の追加用紙を使えば写真枚数が増えて対応可能。