GANREF特別企画 ポートレート撮影術&おすすめアイテム

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GANREF特別企画 ポートレート撮影術&おすすめアイテム

レポート:礒村浩一/モデル:夏弥

ポートレートは撮影してみると、なかなか思うような構図が作れなかったり、イメージをまとめることができなかったりする。そうならないためにも、撮り方の基本を身につけると同時に、さまざまなイメージを持って状況に合わせて撮影すること、そしてイメージどおりに仕上げるためのアイテムが必要になってくる。そこで今回はポートレート撮影の基本テクニックについて、作例とともに解説していこう。

ポートレート撮影の基本

 ポートレート撮影における構図の基本は「全身」「バストアップ」「顔のアップ」の3パターンだ。まずはこの3つの基本構図に慣れよう。その中でもモデルとの距離感がとりやすい「バストアップ」はポートレート撮影の基本中の基本だ。

 バストアップとはその名のとおり、人物の胸から上、頭頂までをとらえたものだ。胸元は低くてもみぞおちの上部まで。頭の上には少なくともこぶしひとつ分の空間を空ける。このフレーミングなら人物の細やかな表情を見分けられるし、髪の形やそれによる風の流れまでも表現の要素として取り入れることができる。その際、顔の向きは真正面よりは左右どちらかにわずかに振ってもらうと表情やしぐさに立体感が生まれる。目線の基本はカメラ目線。ピントも目にしっかりと合わせる。この距離で優しい表情でニッコリと笑ってもらえれば、それだけで撮る側も幸せになれるというものだ。

 バストアップに慣れたらモデルの「全身」、そして「顔のアップ」撮影に挑戦しよう。まず全身をとらえるということは、モデルの表情を見るだけではダメで、体の向きや足の形、そして腕および指先の表情にまで注意を払わなければならない。また引いた構図を取って、周囲の情景を取り込んだ作品も良いだろう。一方、顔のアップではモデルの表情のみで勝負が決まるため、ほんの少しの顔の角度、笑顔の口の開き方などの違いで大きく印象が変わる。いずれにしてもモデルがポージングに慣れている場合は、自ら動いてもらい、その中でかわいくてカッコイイ瞬間をとらえられるようシャッターを切るだけでもとても勉強になる。それを何度か繰り返していくと、自分なりに良いと思うポーズがわかってくるので、その後はモデルにポーズをお願いすることもできるようになるはずだ。

作例

標準から中望遠域のレンズを基本に胸元から頭の上までをバランス良くフレーミング。いわゆる「バストアップ」だ。ピントは顔が斜め向きの場合はカメラに近い方の目に合わせると良い。撮影時のモデルとのコミュニケーションも重要だが、話の内容はシンプルに。

作例

少し離れた位置から周囲の情景の中にモデルを置くようにして配置。背景となるものと人物の配置のバランスに気をつけよう。あえて目線を外すなど雰囲気を重視した絵作りも良い。撮影前にモデルにイメージを伝えておくと離れていても意思の疎通がしやすい。

作例

周囲の雰囲気を生かした横位置構図もおもしろい。ただし空間が広くなるので、その空間に負けないよう表情やポーズでモデルの印象を強めることを意識した方が良い。そうすることで見る者の視線を集中させ、自身がその空間にいるような錯覚を引き出すことができる。

屋内で光をコントロールしながら撮影する

 人物の肌をきれいに撮影するには、光をうまくコントロールする必要がある。とはいえ最初は凝ったライティングをする必要はなく、屋内に射し込む外光を生かすことから考えてみよう。そこにレフ板やストロボなどで光を補うのだ。もちろんライティング機材を使って自在に光をコントロールできるようになれば、さらに撮影イメージがふくらんでいく。その場合は外光を遮った室内で、ストロボやLED照明などで光を組み立てていく。まずは比較的扱いやすいクリップオンストロボを活用したライティングから始めると良いだろう。ワイヤレス発光に対応したクリップオンストロボであれば、多灯ライティングも含め、さまざまなライティングを試すことができる。またより本格的なライティングを行いたい場合には、撮影用スタジオでレンタルしている大型ストロボを複数借りて撮影するという方法もある。ただし特に複数のストロボを使用する際に忘れてはいけないのは、屋外であろうが屋内であろうがメインとなる光はひとつであるということだ。外光を遮る場合も、メイン光を太陽に見立て、光の流れを意識してライティングを組み立てるようにしたい。それによって自然な光の回り方になる。

作例 外光を生かして雰囲気を出す

屋内に射し込む光を生かすとはいっても、窓辺で顔を光のある方向に向けなければいけないわけではない。例えば室内でくつろいでいるようなイメージを出すなら、窓から離れた位置に座っている姿をとらえると良い。露出は顔の明るさを基準に設定する。必要に応じてレフ板を使用して明るさを補うと良いだろう。

露出モード:マニュアル露出/絞り:F4/シャッタースピード:1/125秒/焦点距離:70mm

作例 クリップオンストロボをフル活用

外光のあまり入らないような室内では、クリップオンストロボを使うと良いだろう。ただしストロボ光をモデルに直射すると強烈な光で影のきつい写真となってしまう。そのような場合にはストロボの発光部を天井に向けて光を反射させるバウンス撮影を行うと柔らかなトップ光となる。

露出モード:マニュアル露出/絞り:F5/シャッタースピード:1/125秒/焦点距離:70mm

作例 多灯ライティングにチャレンジしよう

1灯でのライティングに慣れたら、ぜひ複数のストロボを使用した多灯ライティングにチャレンジしてみてほしい。ただしその場合でもメイン光はひとつという鉄則を忘れてはいけない。この作例では大型ストロボを2灯使用してライティングを行っている。メイン光はモデルの左側から当てて、サブ光はベッドの左奥の天井にバウンスさせ背景を明るくすると同時にモデルへのトップ光としての役割を与えている。

露出モード:マニュアル露出/絞り:F5.6/シャッタースピード:1/125秒/焦点距離:70mm

ポートレート撮影おすすめアイテム~スタジオ撮影編~

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屋外で現場の雰囲気も一緒に1枚の写真に収める

 屋外でのポートレート撮影の醍醐味は、やはりシチュエーションや刻一刻と変わりゆく光の変化だ。イメージに合った撮影場所や時間帯を選び、可能であるならば事前に現地を訪れる「ロケハン」を行っておくと良いだろう。そうすればモデルを連れていった際にスムーズに撮影を進めることができる。ロケ現場での撮影はその場所が持つ雰囲気と、モデルの魅力をうまくマッチングさせることが重要だ。カメラおよびレンズの画角という限られたフレームの中で、いかにこれらを配置できるかが作品の完成度につながる。一方、屋外での撮影ならではの、背景を極端にぼかすことで人物を浮かび上がらせて印象を強くするという表現方法もある。この場合はあくまでも人物の存在のみを重要視することで作品として成り立たせることが目的となる。いずれの場合でもモデルを引き立たせるという意味では共通した目標ではあるが、自分が取り組もうとしているのはどちらの表現なのかを考えた上で、撮影地やレンズなどを選択しよう。

作例 場所にこだわって撮ってみよう!

ローカル線の駅とそこに停まる列車をバックに撮影。味わいある光景の中に立っているモデルの表情にストレートに迫ることにより、ぼやけた懐かしさの中にある彼女のリアルな存在感を引き出した1枚。

露出モード:絞り優先AE/絞り:F5/シャッタースピード:1/160秒/露出補正:+1EV/焦点距離:135mm

作例 望遠レンズで背景をシンプルに写し取る

大口径の望遠レンズを開放絞りにて撮影することで、極端な背景ぼけを生み出せる。樹々の緑が溶け出すように輪郭を失なうことで、人物を浮かび上がらせ強い存在感を引き出すことができるのだ。

露出モード:絞り優先AE/絞り:F2.8/シャッタースピード:1/100秒/露出補正:+1.3EV/焦点距離:300mm

作例 時間によって変化する光の色を生かす

晴れた日の早朝の光は非常にクリアで色みは青みがかっている。日中は高い位置からの強い日差しにモデルもナチュラルで元気なイメージとなる。夕方の日の光は極端な斜光となり光もアンバー色が強くなるが、それにより人物の少し落ち着いた表情に魅力を感じられるようになる。これらの光の方向と強さ、色みといったものをうまく生かすことがイメージを作り上げるには欠かせないものだ。

露出モード:絞り優先AE/絞り:F4.5/シャッタースピード:1/200秒/露出補正:+1.7EV/焦点距離:55mm

ポートレート撮影おすすめアイテム~野外撮影編~

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夜だからこそ撮れる1枚を狙う!

 ポートレート撮影は昼間だけのものではない。明かりさえあればいつだって撮ることができるのだ。特に都会の街には夜であっても明かりがあふれている。その明るさをうまく生かしたナイトポートレート撮影に挑戦してみよう。とりわけ最近のカメラは高感度撮影時の画質も格段に向上しており、街明かりだけでも十分に撮影が可能だ。これにクリップオンストロボの光を組み合わせたり、クルマのヘッドライトなどでライティングしたりと、アイデア次第でナイトポートレートの世界は広がる。また三脚でカメラを固定して、イルミネーションなどと一緒に人物を入れ込んだり、背景に走る車や電車の光跡を入れるなど、スローシャッターでのナイトポートレートを狙うという手もある。クリップオンストロボ、三脚などのアイテムにアイデアをプラスすることで、昼間のポートレートとはひと味もふた味も違う作品になるのだ。ぜひさまざまなイメージにチャレンジしてみてほしい。

作例 主役と背景をきれいに取り込む方法

背景と人物の両方を取り込みたいならストロボを上手に活用したい。ただしナイトポートレートにおける背景の明るさと人物に当てる光のバランスは非常に微妙だ。背景の明るさに合わせた絞り、シャッタースピード、ISO感度を決めてから、それに合わせて人物の明るさを決めるストロボの発光量を調整すると良いだろう。うまくバランスをとることができれば、夜の街をバックに浮かび上がる印象的な作品となる。

露出モード:マニュアル露出/絞り:F2.8/シャッタースピード:1/30秒/焦点距離:55mm

作例 人工光を生かして夜ならではの雰囲気を出す

夜の光景の中でモデルの存在感を際立たせるポートレート作品を作る際、クリップオンストロボを使用する方法のほか、街灯を生かしたり、あるいは何かでモデルを照らす方法がある。ここではクルマのヘッドライトを生かしてモデルをライティングした。被写体ぶれを防ぐためにISO感度を上げているが、背景がぶれてしまったり、真っ暗になってしまってはイメージが損なわれるので、カメラをしっかりとした三脚に固定して長秒露光で撮影している。

露出モード:マニュアル露出/絞り:F3.2/シャッタースピード:0.4秒/焦点距離:27mm

ポートレート撮影おすすめアイテム~ナイトポートレート編~

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