GANREF特別企画 ポートレート撮影テクニック&おすすめアイテム
ポートレートは人気のあるジャンルのひとつで、GANREFでも多く投稿されているが、レベルも高く魅力的な作品が多い。一方で、撮影ではポートレートならではのテクニックやモデルとのコミュニケーションなど気を付けなければいけないことも少なくない。またポートレート作品をより良くするための撮影アイテムを活用することも上達のコツのひとつといえる。テクニックを身に付け、アイテムも万全にすることで、多様な表現ができ、充実したポートレート撮影を楽しめるはずだ。
人物の表情を写し取るバストアップ撮影は、ポートレート撮影の基本中の基本といえる。カメラを縦位置に構え、頭の上こぶしひとつ分ほどの空間を空けて、人物の胸元までを収める。こうすることでフレームの上辺からおよそ1/3の位置に人物の目の高さがそろう。この構図であれば人物がフレームを占める面積が背景よりも広くなるので、主題である人物に視線を集めることができる。また人物の目をほんのわずかに下から見上げるように撮れば、目にまつげがかかることもなく、瞳が発する繊細な表情をとらえることができるのだ。
この基本的なバストアップ構図をきちんと押さえた上で、いろいろな構図の変化を楽しんでいこう。例えば、フレームから頭や顔の一部がはみ出てしまうほどにモデルに近づき、絞りを開放付近にして目元にピントを合わせ、それ以外の部分をぼかすことで、立体感のある写真となる。逆にモデルから少し離れた位置に立ち、腰から上の上半身をフレーム内でとらえるようにすれば、モデルのボディラインを積極的に引き立てることもできる。また、モデルにしゃがんでもらい、膝や指の先までをフレームに入れた構図は、変化をつけるという意味でも、また人物の存在感を引き立てるのにも有効だ。もちろんこれらは必ずしも縦位置である必要はない。横位置の場合はモデルの左右に空間が生まれやすいので、その空間にどのような意味を持たせるのかを常に意識して構図を決めれば良い。
モデルとの適度な距離を保ちつつ、フレーム内における人物と背景の位置関係に注意しながら撮影する。このときカメラのAFフレームは人物の、カメラに近い方の目の位置に移動。細やかにしっかりと目にピントを合わせることが、瞳が放つ力をとらえるためにはとても重要だ。
カメラ:FUJIFILM X-T1/焦点距離:50mm/露出モード:絞り優先AE/絞り:F5.6/シャッタースピード:1/105秒/露出補正:+1EV/ISO 200
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人物撮影ではバストアップだけではなく、その立ち姿など全身をフレームに収める撮影も押さえておきたい。ただし、単に人物から離れて全身を撮ればいいというものではない。モデルの雰囲気や、撮影する場所を選ぶ意味合いなども写真では大切な要素だからだ。今ここで撮影することの意味、その人が身に着けている服やアクセサリーの形や色、光が差す方向や影の出方、光の色などを総合的に認識して、その中から表現したいものの優先順位を判断し、取捨選択する必要がある。これらは人物のイメージを前面に出すことで形にしやすいバストアップ撮影よりも、より明確にしなければならない。
一見複雑に思えるかもしれないが、これらの要素を切り分けて考えられるようになると、ひとつひとつの要素をパズルのように組み合わせて絵作りを行うことができる。例えばモデルの元気で若々しいイメージを優先したければ、肌の色がきれいで健康的に見えるような明るい光が必要となり、さらにその光のもとできれいな発色をする衣装が望ましい。逆に落ち着いた雰囲気でまとめたければ、衣装もシックな色や形のものを選び、明るさも抑え気味な照明を選んだ方が効果的となる。背景も少しダークな色合いや質感の場所がいいだろう。カメラアングルも少し低めの位置から撮ると落ち着きが出るし、高い位置から見下ろすようにすると動きのある構図としやすい。このように、モデルの魅力のどの部分を優先したいのかを自分で決めた上で、構図や小物を選択することが、見る者にも伝わりやすい作品を作り上げるコツだ。
手前から奥へとつながる線路の輝き、およびモデルの髪やスカートの透過光を得るために、強烈な逆光の夕日のもとで撮影した。また、あえてレンズに太陽光を直射させることで、レンズフレアとゴーストを発生させてより印象的なシーンとした。
カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/焦点距離:50mm/露出モード:マニュアル露出/絞り:F4.5/シャッタースピード:1/125秒/ISO 100
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一般的なポートレート撮影では人物を主題に置くため、画面全体に対する人物の占める面積は大きくなる。一方で、あえて人物を小さくすることによって風景の一部のように表現する方法もある。慣れないうちは人物を小さくすることに戸惑いもあることと思うが、この表現方法を自分のものにできれば、ポートレートの作風の幅が広がるに違いない。
ただしここで忘れてはいけないのは、あくまでも主題は人物であるということ。写っている大きさは小さくても、写真全体の中で人物の存在がポイントとなっていなければならない。それがなくなってしまうと旅行時の記念写真のようになってしまうからだ。また撮影後の画像仕上げも人物と風景の両方を際立たせるように仕上げる必要がある。そのためにも現像時に高品質な画像調整が可能なRAWデータでの撮影を行い、またできる限り適切な露出や構図で撮影するように心掛けよう。