GANREF特別企画 夏の星空撮影テクニック&おすすめアイテム

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GANREF特別企画 夏の星空撮影テクニック&おすすめアイテム

レポート:飯島 裕

 夏は海や山に出かける機会も多く、都会とは違う満天の星や天の川に感動する人も多いことだろう。専門的な、いわゆる「天体写真」だとちょっと敷居が高い感じもするが、星空も自然の風景のひとつとして見てみると、星の輝きは被写体としても魅力的なもの。星空のある風景写真は「星景写真」とも呼ばれ、とても多くの人がその撮影を楽しんでいる。
 これまで夜空にカメラを向けたことがないのであれば、この夏に星空の撮影を楽しんでみてはいかがだろうか。カメラやレンズも、いつも使っているもので大丈夫。見ても撮っても、想像以上に楽しくて深い写真の宇宙が待っていたことに気づくに違いない。

星景写真の撮り方は2種類

固定撮影
作例

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0(マウントアダプター使用)/焦点距離:7mm/絞り:F5.6/シャッタースピード:850秒/ISO感度:800/ソフトフィルター使用

追尾撮影
作例

カメラ:オリンパス E-520/レンズ:ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0/焦点距離:100mm/絞り:F2/シャッタースピード:120秒/ISO感度:800/ソフトフィルター使用/ポータブル赤道儀使用

 星空は光が少ないので、カメラを空に向けて長時間の露出をすることになる。大きく分けてその撮影方法は2種類。ひとつはカメラを三脚に載せてそのままシャッターを開ける方法。これは夜景などの撮影とまったく同じだ。三脚に固定して撮るので、天体撮影のジャンルでは「固定撮影」と呼んでいる。固定撮影では、星の日周運動が光跡となって画面に記録される。短い露出時間で連続撮影した画像を「比較明合成」して長い光跡で表現したものも固定撮影法で撮ることになる。
 もうひとつは、星の日周運動に同期してカメラで追っていく撮影方法で、そのために赤道儀架台などを使用する。これが「追尾撮影」だ。追尾撮影では星の像をシャープなひとつの点として撮ることができる。東から西の空へと巡る星の日周運動は意外と速く、北方向以外の空では、わずか30秒の露出でも線になってしまうほど。固定撮影だとそれくらいのシャッター速度でも被写体ぶれをしてしまうということだ。言ってみれば、追尾撮影は動体をカメラで追いかけて撮る「流し撮り」と同じことだ。
 また、追尾撮影に使用する赤道儀は、モーションタイムラプスムービーの微動ターンテーブルとして使用することもできる。星空をタイムラプスムービーで仕上げてみると、人間の目ではわからない天体の運行や大気の流れが見えるようになりとてもおもしろいので、ぜひとも活用してもらいたい。

天の川の写真を例に、表現方法のバリエーションを見てみよう

 夏の星空のハイライトといえば、もちろん明るくて太い夏の天の川。明るく見えるのは、われわれの銀河系の中心方向が見えているからだ。
 同じ天の川でも、撮影方法の違いによって写り方が変わってくる。次に挙げる作例を参考に、固定撮影と追尾撮影でどのように変わってくるのか確認してほしい。自分が撮るとき、被写体のどこが主題になるのか、何を最も重視するのかを考えて撮影方法を選ぼう。

作例

沖を行く船の道しるべとなる灯台を主役に、水平線から立ち上る天の川を背景的に撮影した。地上をシャープに撮りたかったので、ここは固定撮影法で。とはいえ、天の川もあまり流したくなかったので、高感度に設定し、キットレンズを絞り開放、60秒の露出にとどめた。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ/焦点距離:12mm/絞り:F3.5/シャッタースピード:60秒/ISO感度:3200

作例

1本のコナラをまたぐように流れる天の川を追尾して撮影。天の川をシャープに表現した。数十秒も露出すると、固定撮影でも風などで結局木の枝先はぶれてしまうからという理由もある。天の川の左右に明るく輝く星は、七夕の「織女星」と「彦星」だ。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:SAMYANG 7.5mm f/3.5 UMC Fish-eye MFT/絞り:F4/シャッタースピード:120秒/ISO感度:2500/ソフトフィルター使用/ポータブル赤道儀使用

作例

夏の大三角を流れる天の川を、できるだけ克明に描写しようと赤道儀で追尾して撮影した。開放F2のレンズをF2.8まで絞り込んで、星の形をゆがませてしまう画面周辺の収差の影響を軽減、画面全面で針で突いたようなシャープな星像の写真になった。天の川の中に入り乱れる暗黒星雲の様子がとてもおもしろい。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0/絞り:F2.8/シャッタースピード:240秒/ISO感度:1600/ソフトフィルター使用/ポータブル赤道儀使用

星空を撮るために必要なアイテムを準備しよう

 星空の撮影は、被写体の光量が少ないために、ほかの撮影に比べて少しだけ工夫しなければならないところがある。とはいえ、さまざまな明るさで撮影される一般的な写真の延長だと考えてみれば、実はそれほど懸け離れたものではないと思えるだろう。言ってみれば「ちょっと暗い夜景」のようなもの。あまり難しく考える必要はない。それでは、具体的にどのようなものを用意すればいいのか、ひとつずつ見ていこう。

製品画像 カメラ&レンズ

カメラやレンズは、レンズ交換の可能な一眼レフカメラやミラーレスカメラが最適。マニュアル撮影ができるタイプのコンパクトデジタルカメラでも大丈夫だ。レンズはなるべくF数の小さな明るいものが望ましいが、キットの標準ズームレンズでも撮影は十分に可能なので、まずは所有レンズでチャレンジしてみよう。一般に画角の広い広角レンズが使いやすく、キットのズームレンズなら最初は広角端で。また魚眼レンズも星空との相性はいい。狙いによっては、もちろん望遠レンズもアリだ。

製品画像 三脚

露出時間が短くても数秒、長いときには数時間にも及ぶという星空の撮影では、どうしても三脚が必要になる。撮影中にぶらさずカメラを固定する必要があるので、できるだけ大きくて重い三脚がいい。雲台は空に向けたアングルをワンタッチで決めやすい自由雲台がおすすめ。三脚や雲台のつくりがしっかりしたものほど構図の決定や撮影が楽になり、失敗も少なくなる。自分の持ち運べる範囲で可能な限り頑丈なものをセレクトしよう。

製品画像 ヘッドランプ

暗い中でのカメラ操作に使う明かりは、両手が自由に使えるアウトドア用のヘッドランプが便利だ。ただし、あまり明るすぎると目がくらんで肝心の星が見えなくなるばかりか周辺の状況もわからなくなってしまう。撮影中は足元がほんのり見えるくらいに赤テープなどで減光しておこう。赤い光は暗さに慣れた目を刺激しないからだ。最近では、白色と赤色LEDを切り替えることのできるヘッドランプも多くなっている。自分以外にも近くで星の撮影をしている人がいるときは、明かりの点灯が撮影の邪魔にならないようにお互いに声を掛け合おう。

製品画像 リモートレリーズ

長時間露出のときにカメラボディのシャッターボタンを手で押すとぶれてしまうので、離れた所からシャッターを切れるリモートケーブルや赤外リモコンを使用すること。カメラによっては30~60秒程度の長時間露出ができるので、その程度の露出時間のときはセルフタイマーでもOK。バルブ時間やインターバル撮影の設定ができるタイマーリモコンがあると、星の撮影には大変便利に使える。最近の機種ではスマートフォンからカメラを操作できるものもあるので、そのアプリを利用するのもいいだろう。露出を開始してリモートケーブルを手から離すときには、カメラに振動を与えないよう慎重に。

製品画像 ヒーター

湿度の高い夏場は、カメラやレンズが結露してしまうことが多い。1~2分程度の露出なら問題ないが、長時間にわたって撮影を続けるときは、結露防止のためにレンズを温めよう。レンズが外気温よりほんの少し温度が高いだけで結露は防げる。天体望遠鏡専門店などには専用電熱ヒーターなどが販売されているが、充電池式のハンドウォーマーをネット包帯でレンズに抱かせるのが手軽でおすすめ。厳冬期でなければ電池の保ちも十分だ。粉末式の使い捨てカイロは、もまないと発熱が持続しないので結露防止には適さない。

製品画像 双眼鏡

目で見た感動を映像に収めるのが写真の原点。肉眼で見るだけでも美しい星空だが、双眼鏡があればその感動やおもしろさが何倍にも深まる。何千、何万光年というはるかな宇宙から届いた光を自分の目でしっかり受け止め感じることは、星の写真の表現の幅を広げることに間違いなくつながるはずだ。星空の撮影に出かけるときは、双眼鏡もカメラバッグに入れていくことをおすすめする。星空に限ったものではなく、ほかのジャンル、特にネイチャー系の撮影に双眼鏡は大いに役に立つだろう。

製品画像 モバイル赤道儀

星の日周運動を追尾するための機材が、「TP-2」のようなモバイル赤道儀(ポータブル赤道儀)だ。星の撮影の人気に伴って、非常に小型軽量なものから重量級の望遠レンズまで対応できる機種まで発売されるようになった。カメラボディ1台分ほどの大きさでも追尾精度は想像以上で、星雲などのクローズアップも狙える実力がある。星を追尾することが可能になれば、天の川や星雲・星団のような興味深い天体の細部まで克明に描写することができるようになる。1台あることで星空撮影の世界がグッと広がり、さらにはタイムラプスムービー撮影でも大いに役立つので、ぜひとも使ってみてもらいたい機材だ。

製品画像 プランを立てるためのアイテム

星空の撮影では、いつどの方向にどんな星空が見えるかをあらかじめ知っておくことで、撮影のチャンスを逃すことがなくなる。星座早見盤は、今見えている星を知ることよりも、狙っている星がいつ見えるかを知るために便利に使える。スマートフォンやタブレットのアプリも同様に使うことができるので、撮影プランを立てるのに活用しよう。また、天文の年鑑や情報誌では、星の撮影で気になる月齢の確認はもちろん、流星群や日食・月食など天文イベントや星空の見どころの記事もあるので、目を通しておくといい。より専門的な撮影知識も得ることができる。

星空撮影おすすめアイテム

※画像をクリックすると、おすすめアイテム詳細ページに進みます。

どんな場所で撮ればいい?

 星の光は弱いので、余計な光、つまり人工の街明かりの影響の少ない所ほど写りがいい。基本的には市街地から離れた田舎や海、山などが撮影に適しているということだ。また天候が晴れていることはもちろんだが、空気の澄んでいる所ほど星の光がクッキリ見えるので、そういう面では標高の高い所ほど良いといえる。さらに雨上がりには空気がきれいに澄むので狙い目だ。
 星景写真としては風景の美しい所で撮りたくなるかもしれないが、身近な場所でも晴れていればいつも星はある。まずはどこでもいいので、星が見えたら撮ってみるというところから始めてみるといい。雲があっても、それがかえって空に表情を与えてくれ、星までの距離感を感じられるような写真になる。だから、すぐにあきらめてしまうのはもったいない。空の様子はすべて被写体になり得ると考えよう。
 星景写真は「星空の風景」だ。幅広い視野で、いつも星空を意識してみよう。

作例

透明度の良い高原で撮影した天の川。地平線近くの空が少し明るいのは、遠くの市街光が空に反映しているためだ。今の日本では相当の山奥に行ってもなかなか人工光から逃れることができないのがちょっと残念だが、大気の透明度がいいので天の川が細部までクッキリと写った。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M10/レンズ:ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0(マウントアダプター使用)/焦点距離:7mm/絞り:F4/シャッタースピード:480秒/ISO感度:800/ソフトフィルター使用/ポータブル赤道儀使用

作例

海辺で撮影。太平洋を行く船の光が線になって写っているが、水平線まで空は暗い。水平線近くの星がほとんど写っていないのは、大気を通過する距離が長くなって光が吸収されてしまうからだ。このときは大気の透明度があまり良くなかったので、見栄えを良くするためにかなり強力なコントラスト調整をしている。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:SAMYANG 7.5mm f/3.5 UMC Fish-eye MFT/絞り:F4/シャッタースピード:480秒/ISO感度:800/ソフトフィルター使用/ポータブル赤道儀使用

作例

富士五湖のひとつ、西湖から眺めた富士山と星空。風がまったくなく、鏡のようにないだ水面にも星が映っている。このような水面の星空も水辺の撮影の魅力のひとつだ。水面に揺れる星を肉眼や双眼鏡で眺めてみるのも結構おもしろい。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M10/レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0/絞り:F2.2/シャッタースピード:60秒/ISO感度:1600/ソフトフィルター使用

作例

月の光は空を明るくするので、星の撮影では障害になることが多い。星の撮影を計画するときは、常に月齢と月の出入り時刻を意識しておこう。ただ、月があっても空気が澄んでいれば天の川も写るし、月の光が地上の風景を照らし出してくれるので、星景撮影では逆手に取って利用することもできる。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0(マウントアダプター使用)/焦点距離:7mm/絞り:F4.5/シャッタースピード:60秒/ISO感度:1600/ポータブル赤道儀使用

チェックしておきたい方角

 長時間露出や比較明合成で日周運動の光跡を撮るのは、星景写真ならではの表現のひとつ。これにはカメラを向ける方角によって軌跡の描き方が変わるので、それを知っておくことが重要だ。
 星空全体で見れば、天の北極、北極星の近くを中心に反時計回りに大きく回っている。だから北の空にカメラを向ければ同心円模様を描くことになる。東の空では星が右上がりの光跡を描き、逆に西の空では右下がりの光跡になる。南の空では真南をセンターに左から右へ大きなアーチを描くという具合だ。
 地上の風景と合わせて撮りたいときは、星の移動していく方向を見極めて構図を決めるようにしよう。最初は難しいかもしれないが、北極星が見つけられるようになれば、すぐに予想できるようになる。

南向きで撮影
作例

太平洋に昇ってきた天の川を、15分という長時間露出で撮影した。星は、東の地平線から南の中天を通過し西の地平線までの180度を12時間で移動する。1時間あたりにすると15度だ。腕を伸ばしたときの握りこぶしの幅が約10度。星の移動量の目安になるので、この「げんこつスケール」を覚えておくといい。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M5/レンズ:SAMYANG 7.5mm f/3.5 UMC Fish-eye MFT/絞り:F4/シャッタースピード:900秒/ISO感度:400/ソフトフィルター使用

北向きで撮影
作例

富士山と北極星を中心とした星の光跡。このように、北の空は北極星近くを中心にした同心円になる。これを時計の文字盤に見立てると、短針1時間分を時計と逆回りに2時間かかって回ることになる。天球は24時間(正しくは23時間56分)でひと回りだからだ。これはカメラに搭載された比較明合成機能(ライブコンポジット)を使って撮影した星の光跡だ。

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M10/レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0/絞り:F2.5/シャッタースピード:10秒設定ライブコンポジット(比較明合成)で約30分/ISO感度:1000

準備ができたら撮り方を覚えてチャレンジしよう!

 さて、いよいよ撮影の実践だ。以下に撮影現場ではどのような手順で撮影をしたらいいのかを説明する。
 構図を決めたらピントと露出を合わせてシャッターを切るという流れは、一般的な写真撮影と同じ。だが、どれもカメラ任せの自動で行うことはできない。星空の撮影では、すべてを自分で判断して決めるマニュアル撮影ということになるのだが、デジタルカメラならば撮影結果がすぐに分かる。もしもうまく行かなかったら、その原因を考え設定を修正していけばいい。
 自分で考えたことがすべて結果に表れる。そこがまた楽しいのが星空の撮影だ。このプロセスは、ほかのジャンルの撮影にも生かせるので、撮影者のスキルを上げていくことにも直結するはずだ。

フレーミング
一眼レフカメラのファインダーやミラーレスカメラのライブビューでは、星がほとんどわからず構図が決めにくい。最初はカメラの向きを大ざっぱに決め、最高感度の短時間露出(ISO 25600で1~2秒)で試し撮りをしながら微調整し、望む構図に合わせていこう。
ピント合わせ
星の撮影は基本的にMFで。AFで合焦サインが出ても微妙にずれていることも多い。使用するレンズを決めたら、ピントリングをだいたい無限位置にしてそのときに見えている一番明るい星にカメラを向け、ライブビューの拡大MFで星の像が最も小さくなる所に合わせよう。ピントが決まったらテープでピントリングを固定してしまうといい。ズームで焦点距離を変えたときはその都度ピントの合わせ直しを。また、気温が変わってくるとピント位置もずれてくることがあるので、できるだけこまめにピントチェックをしよう。星でピントの確認がしにくいときは、遠方の外灯などを利用してもOK。
露出の目安
空の条件によって大きく適正露出が変わるが、いずれにしろ自動露出は測光範囲外の明るさなので使えない。天の川の見えるような星空では、ISO 1600/F2.8/30~60秒くらいがひとつの目安になるだろう。まずはそれくらいで試し撮りをしてISO感度や露出時間を調整してみよう。
適正露出の決め方
適正露出の判断は、必ずヒストグラムで確認すること。暗い中で見るモニターの画像は、実際よりかなり明るく感じてしまうからだ。空のどの部分を狙うかによっても変わってくるが、ヒストグラムのピークが左から1/3程度に来るように露出を決めるといいだろう。
ホワイトバランスなどの設定
ホワイトバランス設定は、まずはオートで。カメラによっては赤みがかった夜空になることもあるので、手動で4000Kくらいにセットして、青みがかった夜空にするのもいい。市街光の影響の大きい撮影地では、蛍光灯の設定が意外といいこともある。また、星空はコントラストがとても低いので、あらかじめコントラスト設定を高くしておこう。シャープネス設定を最低にしておくと、高感度ノイズも緩和され星像の描写も自然になる。気温の高い夏場はノイズが出やすいので、長秒時ノイズ低減は基本的にオンにしておくことをおすすめする。
長時間露出と比較明合成
固定撮影で星の光跡を撮るには、長時間シャッターを開けたままにする必要がある。高感度設定の試し撮りで適正露出が決まったら、狙っている露出時間で同じ露光量になるように感度を下げ絞りを絞り込む。ISO感度が1/2で露出時間は2倍、F数が2倍で露出時間を4倍にすると同じ露光量になる計算だ。月の光や街の明かりで空が明るいと、長時間露出では星の光が空の明るさに埋もれてしまって寂しい写りになってしまう。そのようなときでも星の光跡がはっきり写せるのが「比較明合成」だ。高感度で短時間(星の撮影としては)露出の連続撮影を合成して仕上げる。最近はこの機能を搭載しているカメラもあるし、合成用のフリーソフトも多数公開されている。
RAW現像
星景写真を階調よく仕上げるには、できればRAWで撮影し、現像時にトーンカーブを調整するなどして階調を整えたい。RAW現像では階調の調整幅も広く、ホワイトバランスも好みに調整できるのもメリットだ。RAW現像で階調を整えることを前提に、撮影時に多めの露出をしておく(ヒストグラムの山が中央で幅広くなるように)と、階調豊かでノイズの荒れも少ないきれいな画像に仕上げることもできる。

 これで基本的な撮影方法の説明はおしまい。初めての人でも、実際に撮影をしてみればそれほど難しくないことがわかると思う。

 私としては、星を撮りながら星空を肉眼で見ることも楽しんでもらいたいと思う。そして星のこと、宇宙のことをいろいろと知ってもらいたい。撮影する相手のことをよく知ることは、すべての被写体でいい写真を撮ることの第一歩だ。そして、宇宙のことを知ることは、とりもなおさず自分のいる所を知ること、考えることでもある。
 星の写真を撮ることが皆さんの世界を広げてくれることを願っている。

作例

カメラ:オリンパス OLYMPUS OM-D E-M10/レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0/絞り:F2.5/シャッタースピード:40秒設定ライブコンポジット(比較明合成)で約30分/ISO感度:1000

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