GANREF特別企画 田中希美男の“注目製品”実写レビュー タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD

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GANREF特別企画 田中希美男の“注目製品”実写レビュー タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD

SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD

希望小売価格(税込):147,000円
実勢価格(税込):110,000円前後

発売日:2012年4月26日(キヤノン用)
※ニコン用、ソニー用は近日発売予定

執筆・撮影:田中希美男

田中希美男田中希美男 (たなか きみお)
京都市生まれ。撮影分野は、人、モノ、料理、風景、スナップ、ファッション、ドキュメントを問わない。中でもクルマの撮影や、スナップの撮影を得意とする。「日本カメラグランプリ」選考委員。「デジタル一眼・上達講座」(アスキー新書)、「デジタル一眼・プロ級写真の撮り方」(技術評論社)、「名車交遊録」(原書房)などのほか、写真展など多数開催。ホームページは、http://www.thisistanaka.com/

フルサイズ判デジタル一眼ユーザー待望の
手ぶれ補正機構を搭載した大口径標準ズーム

 キヤノンやニコンのフルサイズ判デジタル一眼レフカメラのユーザーにとって、大きな不満のひとつは手ぶれ補正機構を内蔵させた大口径標準ズームレンズがないことだった。ところがつい最近、その不満を解消してくれるレンズ、つまり手ぶれ補正機構を内蔵させたF2.8大口径の標準ズームレンズが、タムロンから発売されることになったのである。タムロン 「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(Model A007)」(以下「SP 24-70mm」)がそのレンズである。

 やや“太め”のズームではあるが ―― 24mmからのズームで、かつF2.8コンスタントF値だから仕方ないだろう ―― キヤノンの「EF24-70mm F2.8L USM(旧型)」(以下「EF24-70mm」)やニコンの「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED」(以下「AF-S NIKKOR 24-70mm」)に比べれば、わずかだが小型で軽量である。
 このタムロン「SP 24-70mm」は、待望の手ぶれ補正機構(VC)を内蔵し、AF駆動用のアクチュエーターには超音波モーター(USD)を採用し、さらに、簡易ではあるが防滴仕様も施されている。最短撮影距離はズーム全域で38cm。絞り羽根は9枚で円形絞り機構を取り入れている。フィルター径はやや大きめの82mm。
 12群17枚のレンズ構成で、非球面レンズや異常低分散レンズ、高屈折率レンズなどの特殊レンズを多用している。価格やスペックを考えればじつに贅沢豪華なレンズ設計になっていて、このレンズ構成を見ただけで写りの良さ、タムロンの高画質に対する“こだわり”を十分に感じ取ることができる。

 対応マウントとしては、キヤノン用、ニコン用、ソニー用の発売が予定されていて、まず初めにキヤノン用が4月26日から発売されることになった(ニコン用、ソニー用は近日発売の予定)。実勢価格は約11万円ぐらいではないかと予想されている。現在、キヤノン「EF 24-70mm」が約18万円、ニコン「AF-S NIKKOR 24-70mm」が約20万円であることを考えれば、タムロン「SP 24-70mm」はとても魅力的な価格設定だと思う。そのことは実際にこのレンズを使って撮影をしてみればすぐに実感できるはずだ。

 手ぶれ補正の機能はさておくとして、その光学性能は大変に素晴らしい。文句のない描写性能のズームレンズである。
 開放F値でも、ズーム全域で“まるで単焦点レンズ並み”の描写力がある。意地悪く重箱の隅突きのような見方をすれば、F2.8の開放絞り値では24mm広角端側で、画面の四隅でわずかに描写の甘さと周辺光量不足が見られる。しかし、1~2段ほど絞り込めばその些細な欠点はすぐに目立たなくなる。実用上、まったくノープロブレムと言ってもいいだろう。
 遠距離から至近距離まで撮影距離にかかわらず、画面の中心部から周辺部まで解像感も高い。均一で安定した描写である。ボケ味もナチュラル。逆光にも半逆光にもじつに強い。今回、テスト撮影をするにあたってすべての撮影シーンをレンズフードなしで撮影をしたのだが、フレアーの影響をほとんど感じさせないヌケの良さ、クリアーな画像に驚かされた。フードいらずのズームレンズだ。

 手ぶれ補正機構は常時オンにして、すべてのシーンで三脚をいっさい使用せず手持ちで撮影を続けた。予想していたとはいえ、手ぶれ補正機構と明るい開放F値のおかげで撮影可能な領域が広がり、じつにフットワーク良く撮影ができたことに改めて感服した。三脚がないために撮影をあきらめていたようなシーンでも果敢にチャレンジできる。撮影結果も良好。
 いや、それだけではない。手ぶれ補正の機能により、1/125秒から1/60秒の中間シャッタースピードでのごくごくわずかな手ぶれも目立たなくなり、それによりレンズ本来の優れた描写力がフルに発揮できるのだ。考えてもみてほしい。どれだけ高性能、高画質な描写力を誇っていたとしても、ぶれてしまえばなにもかもが台なしではないか。

 じつは、タムロンには「SP AF28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO(Model A09)」という大口径標準ズームがある。こちらは手ぶれ補正機構なしだが、小型で軽量、低価格。しかし写りはすこぶる良いと、つとに評判の高いズームレンズである。愛用者も多い。現ユーザーも興味があるだろうと、そのレンズと新型「SP 24-70mm」とを撮り比べをしてみたのだが、結果は、あきれて“笑っちゃう”ほど「SP 24-70mm」レンズのほうが良かった。同じF2.8標準ズームでも、ぜんぜん別ものの写り、といった印象。

 キヤノンもニコンも、おそらくソニーも、今後、フルサイズ判デジタル一眼はもっともっと多画素化し、高画質化していくことだろう。そうなると、そうした高画質カメラの実力を十分に発揮させて撮影を楽しむためには、高性能なレンズがどうしても必要になってくる。そういう意味からも、この「SP 24-70mm」のような優れた描写力とぶれの目立たない機能を備えたレンズにこそ、これからは大いに注目しておかなければならない。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」解像感テスト

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F2.8 F5.6
タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」解像感テスト:F2.8 タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」解像感テスト:F5.6

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(24mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F2.8(左側の写真)、F5.6(右側の写真)/シャッタースピード:1/400秒(左側の写真)、1/125秒(右側の写真)/露出補正:+0.7EV/ISO感度:800/WB:オート/ピクチャースタイル:スタンダード/JPEG(L/画質 FINE)

開放絞り値でも十分な解像描写力を備えているズームレンズである。確かに、重箱の隅をつつくように画面周辺部を見れば少し描写が甘い部分もある。そのF2.8開放絞り値から1~2段絞り込むだけでそうした“不満点”は解消されてシャープさもいっそう向上する。左側の写真はF2.8開放絞り値、右側の写真はF5.6である。ともに24mm画角で撮影。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」周辺光量テスト

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F2.8 F4.5
タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」周辺光量テスト:F2.8 タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」周辺光量テスト:F4.5

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(38mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F2.8(左側の写真)、F4.5(右側の写真)/シャッタースピード:1/5,000秒(左側の写真)、1/2,000秒(右側の写真)/露出補正:-0.3EV/ISO感度:100/WB:オート/ピクチャースタイル:スタンダード/JPEG(L/画質 FINE)

このタムロン「SP 24-70mm」レンズの“唯一の欠点”は開放絞り値付近で、画面四隅に周辺光量不足の現象が見られることだ。ただし、撮影シーンによってはほとんど気になるものでもなく、さらに1~2段絞り込むとキレイに消えてしまう。左側の写真がF2.8開放絞り値、右側の写真がF4.5である。ともに38mm画角で撮影。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像

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タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像:1/10

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(24mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F8/シャッタースピード:1/160秒/露出補正:+0.7EV/ISO感度:100/WB:オート/ピクチャースタイル:風景/JPEG(L/画質 FINE)

ホールディングバランスの良いズームレンズだ。レンズの最短長(収納)状態で広角側で、望遠側にズーミングするとレンズ全長が伸びるタイプである。フォーカシングはインナーフォーカス方式なのでレンズ長は変化しない。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像:2/10

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(57mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F5.6/シャッタースピード:1/500秒/露出補正:-1.0EV/ISO感度:100/WB:オート/ピクチャースタイル:スタンダード/JPEG(L/画質 FINE)

フィルター径は82mmとやや大きめ。せっかくの高性能なレンズなのであるから、そのレンズの高画質特性を最大限に発揮するためにも保護フィルターの使用はおすすめしたくない(余計なおせっかいかもしれないけど)。レンズを丁寧に扱うこと、撮影時以外はできるだけレンズキャップをすること、を守れば、そうそうにレンズを損なうこともない。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像:3/10

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/レンズ:タムロン SP 24-70mm F2.8 Di VC USD(52mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F8/シャッタースピード:1/125秒/露出補正:なし/ISO感度:200/WB:太陽光/ピクチャースタイル:スタンダード/JPEG(L/画質 FINE)

東京では珍しいほどの明るくて大きな夕日だった。フレアーが出ることを覚悟して撮影をしたのだが、画面のどこを探してもフレアーもゴーストも見当たらない。シャドー部のヌケも大変に良い。この写真では、遠景の解像描写力の良さもあわせて見てほしい。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像:4/10

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark II/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(49mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/50秒/露出補正:-0.3EV/ISO感度:125/WB:オート/ピクチャースタイル:スタンダード/JPEG(L/画質 FINE)

どんよりとした曇り日。その柔らかなライティングのせいか、丸木と鉄パイプの質感がとてもよく描写されている。ごくごくわずかなボケを利用して立体感を出すために、撮影絞り値はF4に設定した。質感描写のためは、なにがなんでも絞り込めばいい、というものではない。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像:5/10

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(70mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F5.6/シャッタースピード:1/200秒/露出補正:+0.7EV/ISO感度:100/WB:オート/ピクチャースタイル:風景/JPEG(L/画質 FINE)

ボケ味が美しくナチュラルであることもタムロン「SP 24-70mm」ズームの特長のひとつだ。9枚の絞り羽根を使って円形絞りにしている。F2.8からF5.6あたりまでがキレイな丸ボケになる。この写真は38cmの最短撮影距離で撮影した。

タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」実写画像:6/10

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark II/レンズ:タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(55mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F2.8/シャッタースピード:1/50秒/露出補正:+0.7EV/ISO感度:1000/WB:オート/ピクチャースタイル:スタンダード/JPEG(L/画質 FINE)

F2.8大口径の標準ズームレンズで手ぶれ補正機構を内蔵したフルサイズ判用レンズは、このタムロン「SP 24-70mm」が“世界初”かつ“世界唯一”である。手ぶれ補正機構の恩恵はいまさらくどくど述べる必要もあるまいが、カメラが多画素化すればするほどその効果は顕著になる。高ISO感度と組み合わせれば「向かうところ敵なし」ですぞ。

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タムロン「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD」おもな仕様

モデル名 A007
焦点距離 24-70mm
明るさ F/2.8
画角 (対角画角) 84度4分~34度21分(35mm判フルサイズ一眼レフカメラ使用時 )
60度20分~22度33分(APS-Cサイズ相当デジタル一眼レフカメラ使用時)
レンズ構成 12群17枚
最短撮影距離 0.38m
最大撮影倍率 1:5(f=70mm時:最短撮影距離0.38m)
フィルター径 Φ82mm
長さ★1 108.5mm ※
全長★2 116.9mm ※
最大径 Φ88.2mm
質量 825g ※
絞り羽根 9枚(円形絞り)
最小絞り F/22
標準付属品 花型フード
対応マウント キヤノン用/ニコン用/ソニー用★3

※長さ・全長・質量は、ニコン用の数値です。

【★1】長さ レンズ先端からマウント面までの距離。

【★2】全長 レンズ先端から突出部分を含むレンズ後端部までの距離。

【★3】ソニー用はソニー製デジタル一眼レフカメラがボディ内に手ぶれ補正機能を搭載しているため、手ぶれ補正機構「VC」は搭載していません。ソニー用製品名はVC表記のない『SP24-70mm F/2.8 Di USD』となります。

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