「風雪の高原」
厳しい冬の美ヶ原高原。至近距離から見る雪紋は川の流れのように美しい模様を奏でています。奥には風に舞う雪煙と山々を望みます。前景から遠景にかけて、すべてに無駄のない構図で変化に富んだ一体感のある構成はみごとです。とくに画面右の雪が被る低木は、つい前景にもってきたくなる素材ですが、アクセントにとどめるなど、絵作りのコンセプトが明確に意図されている証です。また、雪面の陰影から空の彩りに至る階調豊かな質感は、撮影からレタッチワークまでの一貫したレベルの高さが感じられる秀逸な作品といえるでしょう。
「ワンシーン」
海を望む歩道をひとりの男性が歩いています。空は夕焼けに染まり、色鮮やかさを誇っていますが、建物のなかからねらうシルエット構成に徹したところがこの作品を生み出しました。そして、この作品の要は男性の動きのあるポーズです。一瞬のことですが、なかなかねらえないほど決まったシャッターチャンスです。闇と彩り、さらに人物。すべてが調和したすばらしい作品です。
「連なる」
闇を照らすライトの群れと浮かび上がるマシン。薄暗く雨の降る悪天候のレースとのことですが、そのハンデから生まれた作品です。晴れた好条件ならば、だれでも撮影できますが、人が撮りづらい条件だからこそ日ごろの腕が試されます。また、傑作が生まれるチャンスも多いでしょう。ローキー調の独創的な作品で見方を変えれば闇から現れる不気味さも存在します。迫力よりもドラマ性の高い内容を評価しました。
「明日にむかって」
板を張り合わせた床や壁などのデザインを活かしてカップルを点景としてねらった画面構成がみごとです。ブルー調の色彩の広がりが美しく、異空間な雰囲気を漂わせています。目立つ箇所を細かいレタッチで補正しており、絵作りへのこだわりを感じます。ふたりの足の運びや彼氏が横を向いたタイミングでとらえるなど、スキの少ない作品です。
「新築の我が家」
海に捨てられた空き缶のなかからミジンベニハゼのペアが顔を出しています。おどおどしているのか、警戒しているのか、表情がかわいいです。広い海のなかで、こんなに小さな世界を見つける作者の視点に感心しました。比較的新しい缶ですが、いったいだれが捨てるのでしょう。写真のインパクトが環境問題をアピールする作品です。
「落ち葉のクリスマスツリー」
シュロの木にモミジの落ち葉が引っかかり即席の彩りを見せています。露出を明るめに設定したことで暖かさを感じさせるユニークな作品です。バックの彩りがイメージ効果を見せていますが、ほどよい取り入れ方で、よい構図のまとめ方です。タイトルの「落ち葉のクリスマスツリー」も絵柄にとてもマッチしています。
「Memories of Moonring」
月に浮かぶ夜の海岸です。岸壁を両サイドに配置して奥に浜辺を見せる、とてもよい構図です。月の周りには月傘が出ていますが、この環の存在が画面を引き立てています。左の岸壁にはクルマのライトが当たったそうですが、ほどよい光線で景色に立体感が生まれました。岸壁、浜辺、夜空と3つの要素がケンカすることなく、まとまりのよい風光を見せています。
「空蝉」
太い枝に残されたセミの抜け殻の透明感が美しい作品です。季節感をモノクロで描くことはむずかしい表現です。どうしても被写体や素材に頼らなくてはならないからです。その点、この作品は背景を空気感として太い枝と小さくとらえたセミの抜け殻の対比が印象的です。目立つ要素をさりげなく見せている絵作りのうまさを感じます。
「クレーン」
夕焼けをバックに並んだクレーンのシルエット。作者はキリンに見立てたそうですが、私は不ぞろいに並んだイスに見えました。殺風景な景色も作者のイマジネーションしだいで作品に結びつくいい手本です。また、太陽が雲に隠れるタイミングをねらったことも内容を深めています。
「落陽」
大きな太陽が雲と海原に挟まれて四角い太陽になりました。落陽をねらったことが成功のカギでした。300mmに2倍のテレコンバーターを使用して合成焦点距離を600mmに、さらにトリミングすることで印象的な太陽をバランスのよい構図で作品化しています。
「未踏地の紅葉」
幾重にも重なるブナの木々が、しっとりと魅惑的な色気を放っています。紅葉がよくなかったとコメントされていますが、そんな紅葉よりも幹の存在感が活きています。その魅力をねらうには最適な天候だったかもしれません。ハイライトをもう少し明るくすれば、さらによくなります。
「青梅街道」
タンポポの蜜を吸うシジミチョウをねらったファンタスティックな作品です。美しいぼけ味は、ピンク色をはじめ、さまざまな色が混ざり合うことで華やいでいます。ぼけ味を主体にして極端に右に配置した花とチョウは、その存在感が活かされて、独創的な構図を生み出しています。
「静かな夜」
月夜に撮影された風景ですが、どこか孤独感が伝わってきます。構図に無駄がなく、木々の配列も美しい。そして奥には岸辺のラインが整った池が広がっています。空に目を向ければ輝く月。まさに静寂に佇む沈黙の風景です。
「2008年『夏』」
急な坂の向こうに見えるのは広い海原。それを望む横断歩道に日傘を持つ女性がなにげに佇んでいます。現実にはありそうもない、どこか不思議な絵柄です。彼女が両足をそろえて、顔を上げているしぐさは次のシーンにつながる映画のワンシーンのようです。
「冬近し」
びっしりと敷き詰められた落ち葉の絨毯(じゅうたん)です。その持ち主の幹を画面上部にそっと据えて晩秋の一幕を見せています。シンプルな構図ですが、よく見ると落ち葉の一枚一枚がサイズや形、そして向きを変えて模様を描いています。光線選びもよく、立体感のある光景になりました。
「盛夏」
空を背景にトンボをとらえた何気ないシーンですが、青空と雲のバランスが絶妙で、シンプルな植物とのマッチングが最適でした。そのためトンボの存在に押しつけがなく素直に表現されています。植物の赤い花もいいアクセントになりました。夏休みの絵日記のような作品です。
「落葉絨毯」
落ち葉の絨毯(じゅうたん)を広角レンズで接写しています。角度が変われば、こんなにも世界が変わるという見本です。この角度は虫の眺める視線です。遠くに入れた立木との距離感も隔たりを感じます。絞りの選択と落ち葉を入れる割合を制限した立木のあしらい方もうまく、印象的な作品にまとめられています。
「異星人」
超ローアングルから広角で接写されたカニです。背景に伸びるカニの影がユニークで両手を下げて立ち上がるお化けのようです。遠くにいくほど狭くなる遠近法を巧みに利用した構図ですが、画面左上部の白飛びが気になります。
「驚異の習性」
ヌーの川渡りのひとコマです。次々と崖を下り、川を渡る様は、どのヌーも危険と隣り合わせで壮絶な迫力が伝わります。そのチャンスをみごとにとらえています。縦構図の選択はよかったのですが、シャッターを切るタイミングがわずかに早かったため、群れが上下に寸断されてしまいました。ヌーが飛んでいる場面をとらえていたらと少し悔やまれます。
「孔雀」
掛川花鳥園のクジャクは、その羽の美しさから人気が高く、応募作品もたくさん見かけます。この作品は、その羽の美しさをクローズアップすることで独自の視点を見せています。絞りの選択もほどよく、シャープで美しい羽色を見せています。ただし、いちばん見せたい箇所をセンターに位置したことが惜しかったです。
「夢の中の会話」
美しくライトアップされた噴水を前にふたりが歓談しています。噴水の後ろにはクリスマスツリーが点灯されていますが、これが空から光が降っているようにも見えます。とてもメルヘンチックな絵柄で好印象です。ただし、人がぶれてしまったことが残念です。
「石ヤ塔」
断崖絶壁に点在する紅葉風景。それを湧き立つ雲が包み込むように忍び寄っています。縦構図を選んだことは迫力ある姿に最適で、険しい自然風景をみごとに伝えています。惜しいのは主要なポイントが画面中心に位置したことです。画面下をカットして雲の変化が大きい上部を入れたかったです。
「走り去る生徒」
廊下を駆けて友達の待つ教室へと向かっているのでしょうか。生徒は後ろ姿ですが、とても動きを感じます。遠景にいるふたりの男子生徒は白く飛んだ教室のなかでこちらを向き佇んでいます。この間合いと距離感が動感描写に効果的に活かされています。
「雪桜咲く」
広角レンズを巧みに使い、初々しい樹氷をとらえています。クマザサへ接近した距離感がよく、そこから空に抜いたアングルも成功しました。その結果、勢いのある光景をキャッチしています。色鮮やかでコントラストのある描写が、この絵柄にマッチしています。
「名古屋の夜景HDRI」
色を反転させたようなブルー調の色彩効果が印象的で、SF映画に見るような未来都市を彷彿(ほうふつ)とさせます。なかなか手の込んだレタッチを駆使して、自分のイメージを描き出しています。とくにビル群に対して透明感のある描写は、オリジナリティがあり独特です。
「まだかな……」
プラットホームから身を乗り出し、やってくる電車を待っているのでしょうか。この男性のポーズには存在感があり、コミカルなユニークさを醸し出しています。背景には雑多な部分も見られますが、それをも超えたシーンをうまく切り取った力を評価しました。
「晩秋」
広角の使い方がとても上手な作品です。メインは渦巻く枯れ葉ですが、シャッター速度の選択も最適で渦の中心は静止しています。その表現効果は滝が生み出す流れとなって再現されています。周囲の取り込み方も流れを脅かすこともなく静かな風景として活かされています。
「天女降臨」
優雅に舞い降りるシラサギの姿を連続撮影して、一枚の作品としてパノラマ合成しています。形のよい姿を撮影するだけでもむずかしいことなのに、どれも顔にピントが合い、フォルムの美しい瞬間をとらえています。華麗に舞い降りるシラサギの姿が美しく展開されています。
「閉ざされた秋」
薄氷に閉ざされた落ち葉の数々。彩り豊かにさまざまなモミジを見ることができます。とても美しい作品で落ち葉の点在もバランスよく、主役と脇役のすみわけもあり、ねらいどころが明快です。また、背後から入った光も落ち葉を鮮やかに引き立てています。
「花嫁」
式を待つ花嫁をねらった作品です。ほのかに浮かび上がる白無垢(しろむく)の装いと角隠し、花嫁の表情には幸せそうな笑みも浮かんでいます。暖色系の光線状態を活かして角隠し中心にねらった大胆な構図がよかったです。惜しいのはわずかに目元が隠れた点です。
「秋彩(あきいろ)」
鮮やかな紅葉が目白押しのなか、作者は垂れ下がる細い枝先に着目しています。画面の左は色鮮やかな部分をぼけとして扱い、奥には太い幹をのぞかせています。それぞれの素材の扱い方が最適で画面構成の基本をしっかり押さえた構図です。
「光と影の中で……」
黒ネコをとらえた作品ですが、影の存在を上手に画面に反映させています。日の当たるハイライトと影の中間、さらにはネコのシャドウとモノトーンの濃度を使い分けた構成がいいです。ただ単にネコがいたから撮影したのではなく、周囲の状況を活かした作品作りがみごとです。
「秋輝」
クローズアップされた枝先のモミジです。背景の光を上手に重ねて透過する色浅い朱色をキャッチしています。この作品は背景の選択がみごとで、やわらかな光の存在が決め手となりました。同時にピント位置が的確で雑多な部分をうまく隠しています。
「ツングースカの再来」
殺伐として厳しい冬の日の出に見えるこの光景は、深夜のスノーマシンの明かりだそうです。光の広がる様子を上手にとらえています。日の出といっても疑わないでしょう。それほど露出差のある条件ですが、木々の傾きが左に向いていることが気になります。少し右に傾けることで光との組み合わせも収まりがよくなったでしょう。
「極悪トンボ」
トンボは昆虫のなかでも人気の被写体のひとつです。この作品は右の羽をカットして大きくクローズアップすることでトンボの表情をとらえています。美しい緑の背景と、羽に反射したハイライトが印象的な作品です。中間トーンを気持ち明るめに再現すれば、より美しさが際立ったでしょう。
「追憶の断片」
ふたりのサーファーがトンネルの通路を歩いています。極端なぶれ効果とソフト描写を組み合わせて、何気ない光景を独創的な作品に仕立てています。また、クルマの乗り入れ防止柵を前景のポイントとして活用することで、黄色い通路を引き立てています。絵作りの上手な作品です。
「葦原幻想」
風景写真のメッカのひとつ、渡良瀬遊水地の朝景です。朝霧がピンク色に染まり、とてもファンタジックな光景です。見え隠れする遠景に対して、ピントは前景の草むらに合わせています。この対比によって幻想的な効果を強調しています。ただし、もう少し画面下を入れたほうが安定感が増したでしょう。
「うろこ雲」
広角レンズでオスジカに接近して、きょとんとした表情をとらえています。シカの目にキャッチライトが不足していることが残念ですが、丘の向こうにはウロコ雲の美しい夕焼け空が栄えています。この写真は、シカの位置と大きさの画面配分が最適で、風景との割合が絶妙な作品といえます。
「落葉」
傾斜する古びた岩にちりばめられたモミジ。背景には同じ紅葉とおぼしき川面に映るモミジ。現実とイメージが不思議と交錯する光景です。背景にはシャドウ部もあり、モミジ色に頼ることのない画面構成から静かに余韻の残る和の風情を凝縮しています。
「柔らかな2つの空気」
ハワイで撮影されたスナップです。白髪の老人がベンチに腰掛けて読書しています。柱の反対側には子ネコが外を向いています。ともすれば見過ごされがちな光景ですが、ハイコントラストな仕上げに粗粒子タッチの荒れた描写を加えて印象強く作品化しています。
「イルカの海へ……」
毎回、美しい海とイルカの作品を寄せてくれるくらりっぱさん。今回もすばらしい作品が届きました。印象的なマリンブルーのなかで、親子のイルカとふたりの人間が穏やかに、そして楽しそうにいっしょに泳いでいます。東京都である御蔵島は、東京から約200km南下した三宅島の少し南に位置しており、野生のイルカと触れ合える場所として知られています。酸素ボンベを使ったダイビングは禁止するなどの厳しい自主ルールを設けることで、イルカと人間の良好な関係を築いてきました。このようにいうと、いかにも前から知っていたように聞こえますが、私自身、以前くらりっぱさんの作品で知って、あとから調べた内容です。写真の力は無限大。これからも自然の象徴である「イルカと人間の共生」というすばらしい作品を通して、自然の美しさを広めていただきたいと思います。
「手鏡」
京都にある南禅寺で行われた撮影会でのひとコマ。しっかり化粧をした美しい舞妓さんが手鏡に映し出されています。所属するクラブの撮影会だそうですから、やらせ感があり、この手の表現としては定番です。しかし、そこは人物表現に優れたカメラアイをもつ山田さん。髪に手をかけようとするしぐさがよく、前ぼけとして取り入れた後ろ姿にもしっかり気を使っているのがよくわかります。なによりも、目鼻立ちの整った美しい舞妓さんの雰囲気がよく、私もころりと騙されてしまいました。山田さんにとっては息子くらいの年齢の私、まだまだ修業が足りませんね。
「おもち」
お正月用のお餅でしょうか? 作者の娘さんと思われる少女が祖父母についていっしょにお餅を伸ばしています。いつも家族を題材に、ほほ笑ましい作品を多く寄せてくれるぐんじさんですが、今回も何気ない実家でのひとコマを、うまく作品に仕上げています。作業する土間へ差し込む光線状態がとてもよく、「晩鐘」や「落穂拾い」など、農村での生活を描いた作品で日本でも人気のあるフランスの画家ミレーの作品を思い出しました。もちろん、その作品の時代背景などは知るよしもありませんが、身近な人、物を題材にすることでは共通しています。
「挙式前」
窓から差し込む光を受けて、浮かび上がる挙式前の新郎新婦。付き人が化粧をなおす新婦の穏やかな表情からも、幸せいっぱい感が伝わってきます。まるで結婚式場の宣伝用に撮影した作品のようで、実際の結婚式での作品とは思えないくらい完成度の高い作品です。この場所にいることは、花嶋さんも参列者のひとりだと思われますが、いいシーンに巡り合えましたね。ありきたりでないこのような作品を写してもらえた新郎新婦も、すごく喜んでいるのではないでしょうか。
「乙女の肖像」
以前、講評で「プリントには余計な枠(フレーム)は不要では」とコメントしたことがありましたが、「それならば」とこの作者は、青春を強調するへそ出し女子高生を本物の枠のなかに閉じ込め、枠そのものを取り込んで作品にしてしまいました。まるでナンちゃって女子高生のような、ちょっとセーラー服が似合わないほど大人びた雰囲気のモデルに対して、枠の持ち手役を担う清純そうな女子学生はうつむいて、この時期ならではのメランコリックな雰囲気を醸し出しています。毎回、海外や女子高生など不思議な作品を寄せてくれる“細川君だよ”さんは、なかなか個性的で、ひと目で作者がわかる作品ばかりでした。今後の創作にも期待します。
「月夜の鳥」
月明かりを受けて、月柱のように妖しく光る海にシルエットとして浮かんだ岩。その上に1羽の海鳥が羽を休めています。偶然出合ったシャッターチャンスにワクワクしながらも、いくどとなく通い詰めたそれまでの経験から、ISO 400、絞りは開放、露出時間は3分という撮影設定をはじき出して、あとは「鳥が動きませんように」とまさに祈るような気持ちで撮影されたのでしょう。静かな海を前にして、たったひとりでじっと見守る吉田さんの息遣いまでもが聞こえてきそうです。
「Heart Break Kiss」
印象的な女性ポートレートを送ってくれるアズマさん。アズマさんの作品には、美しいモデルの見かけだけにとらわれない、内面までをも写し出そうとする作者の意識が見え隠れして、撮る側と撮られる側の一体感を感じます。ほとんどがネイチャー作品である私からすると、まったく違うジャンルの作品ですが、私と年齢も近く、写真に対する真摯(しんし)な姿勢がうかがえて毎回楽しみな作家のひとりでした。今回応募された作品も、どれも優劣をつけがたいものでしたが、いつの時代も心に火を灯すような、熱いキスをする女性のアップ作品に決めました。
「マンション街の縁日」
スナップに独特のセンスを見せる四方さん。祭囃子に誘われてベランダに出ると、雨上がりのなかマンション街で夏祭りが行われていたそうです。急いでカメラを持ち出して、ISO 3200の高感度とVRレンズ(手ぶれ補正機構付き)の最強コンビで、夜の祭りを俯瞰(ふかん)撮影しています。もはや一戸建ての家よりもマンションのほうが多いような気がする東京での縁日。そんな現代の情景さえも、最新のデジタルカメラでうまく取り込んで仕上げています。とくに右下に入れた、手をつないだ親子とその影が絶妙です。
「あ~ん!」
イメージは、「巣のなかで餌を運んでくる親を待つ小鳥」という感じでしょうか? まさに「あ~ん」と口を開けて、餌をねだっているようですね。これはハスの花が枯れかけのときに、望遠マクロで撮影した作品だそうです。見ていると、マイクに向かって合唱団で歌う姿など、いろいろなイメージが膨らんできて、見飽きません。マクロの世界はとても奥深く、ただ単に拡大するだけではなくて、さまざま表現手法がありますが、このようになにかを想像させるというのがもっとも楽しいような気がします。
「幻流」
その題名どおり、幻想的な滝の作品です。ここは三重県の赤目四十八滝です。最初に作品を見たときは、月明かりで長時間露光しているのかと思いましたが、データを見ると実際にはND400という減光フィルターを使っていますので、日中に撮影していると思われます。月明かりを思わせる青白い色も、WBを[蛍光灯]に設定して表現したのだとか。賛否両論はあるかと思いますが、まさにデジタル世代のネイチャー作品です。
「供養の日」
日本髪を結った、着物姿の人形がオレンジの炎に包まれています。まだ人形本体には飛び火していませんが、勝山さんは的確なフレーミングでこのシーンを冷静に切り取っています。作者は人形の哀れさを思って撮影したそうですが、人形のお焚(た)き上げは人間でいう火葬にあたり、人形の御霊(みたま)を極楽浄土へ導くもの。いろいろな思いが詰まった人形には魂が宿っていると考えるからこその供養ですから、哀れというよりも、むしろそこまで愛してもらって幸せな人形といえるのではないでしょうか?
「千葉家」
岩手県中部に位置する遠野は、昔ながらの田園風景が広がり、ゆっくりと時を刻んでいるような印象があります。井上さんが撮影した千葉家は、いまだ現役のお宅。厳しい風雪に耐えてきた家は、古いながらもしっかり受け継がれており、なんとなく風格さえも感じます。庭先から撮影していますが、窓に映った裏山の上空の雲がとても印象的です。残念なのは、縁側や外などに生活感がないこと。ここに収穫されたばかりの野菜でもあれば、イメージが完結したのですが、惜しいです。
「日の出を待つカメラマン」
ガスのなか、1本の大きな木から射す光芒。高橋さんはたくさんのカメラマンもいっしょに写し込んでいます。この日、兵庫県朝来市の竹田城跡では、雲海の写真を写そうと早朝から大勢のカメラマンが集結していたそうです。しかしガスが出てしまい、一般的なネイチャーねらいではいまひとつ条件が整わなかったようで、写っているカメラマンたちには「ただいま撮影中」という緊迫感がありません。そんな雰囲気までもすべて取り込んで、おもしろい作品に仕上がりました。
「冒険の日」
片手に水筒を持つ子どもの背中に、まるで貼り付けたような葉っぱの数々。ここは公園だそうですが、いったいなにをしたらこんなに落ち葉が体にまとわりつくのでしょう? いつの時代も子どもは小さな冒険家ともいえる存在で、大人の考えの及ばない行動をとるものですが、なんとも興味をそそります。たまたま出合ったワンシーンになにかを感じて速写する。そういった目のつけどころがすべてである、まさにスナップの王道をいくような作品ですね。
「街角」
横山さんは今年度、2回目の優秀賞です。おめでとうございます。繁華街に立つ初老のお坊さんの腕はやけに筋骨隆々としており、厳しい荒行をくぐり抜けてきた証なのか、それとも……。道行く人々は無関心に通り過ぎていき、日々過ぎていく日常の時間や、不況にさらされた日本の行く末を暗示しているような重たい空気感など、いろいろなことを想像させられます。たくさんの要素を含んだ作品です。撮影方法については、広角レンズで被写体に近づき、背景とのバランスをとりながら力強く描写しています。画像処理においても、覆い焼き、焼き込みを駆使して階調を引き出しています。今年度最後の優秀賞を飾るにふさわしい作品となりました。
「樹」
クスノキの大木のもと、時代劇に出てくるような衣装を身にまとった人々がそこかしこにいます。なんとも奇妙に見える光景ですが、樹を大きく取り入れることで、その存在感が主体となって、クスノキに歴史を語らせるようなイメージを作り出せました。また、焼き込みなどを駆使して樹の重量感や立体感を引き出すことで、作品に力強さが生まれて、時代を見つめてきた精霊が宿っているかのような神々しい雰囲気が生まれています。四方さんのスナップはじつに明快で、単写真としても、組写真としても説得力があります。かなりの量を毎月撮られているのでしょう。これからも自信をもって、「いま」という時代を撮り続けてください。
「冬支度」
遠野の農家の片隅に見られた風景です。土壁は崩れており、かなり古い建物であることが容易に想像できます。おそらく昔からこの場所で大根干しを行ってきたのでしょう。時代をこえた先祖伝来の味がここから生まれるのだと思います。そんな素朴な暮らしぶりが、粗粒子効果を与えたモノトーンのなかににじみ出ている作品ですね。井上さんは粗粒子にこだわりをもっておられるようですが、単に荒々しいというわけではなく、哀愁や温もりをその表現方法で伝えています。これからもその感性を大切にして、心を解き放して自由な作品作りに取り組んでください。
「ガリバーの気分」
「ガリバーの気分」というタイトルがいいですね。少年がガラス越しにジオラマを見据える姿は大男が別世界を見るようなイメージを作り出しており、また、まなざしやガラスに添えた手からは少年の純真な好奇心が見え隠れしています。Nozawaさんは風景イメージから人物の心理描写まで、幅広く表現できる才能をもっておられるので、今後もさらに期待しています。
「少年」
祭りでの出番を待つ少年の心理を写し取ったスナップショットです。おそらく、お化粧から着付けまで、たくさんの時間を費やして迎えた本番でしょう。緊張と不安な気持ちを、少年の目線をとらえることで表現しています。これまで応募されてきた人物スナップの雰囲気とは少し違った心理描写が心に残りますが、ムラカミさんは、一貫して人物に迫りながらその持ち味を引き出そうとしています。これからもこの大胆なアプローチに磨きをかけて作品を作ってください。
「岩の門」
日本の大地とは成り立ち方が違うのでしょう。浸食によってできた岩の造形は、硬質で鮮鋭な印象とは異なり、丸みをおびた穏やかな造形美となっています。やわらかな光の陰影が、さらに地層の美しさを引き出しています。モノクロならではの階調表現に優れており、魅惑的な作品です。このような被写体は、これまで大判カメラで撮られていましたが、いまやデジタルでもその質感を表現できる時代になってきたことを感じます。
「出番前」
お祭りの本番からは迫力や熱気が伝わり、写真的な要素がたくさんありますが、この作品のように、祭りの本番前も、撮影者ならではの視点を見つけ出せるチャンスです。西日がリラックスした踊り子たちの姿に長い影をつけて彼女たちをライトアップしています。これから始まる本番を前に、ワクワクした少女らの気持ちがよく伝わってくる作品になりました。山田さんはスナップを中心に、人のいる風景からサギなどの野鳥まで幅広く撮っておられますが、ヒューマニズムを感ずる撮影スタンスが持ち味であると思います。
「記念撮影」
香嵐渓にいたチンドン屋さんと観光客が記念撮影しているところを、その後ろから撮影したものです。真んなかの女性の後ろ姿が、とても印象的に写し出されています。また、まるで背後のカメラを意識したかのように持っている宣伝ポスターから、チンドン屋さんの計り知れないプロ根性を感じてしまったのは私だけでしょうか。日だまりのなかでのほのぼのとした後ろ姿に、平和な日本を感じますね。過去に2回次点に入っており、その際は惜しくも一歩及ばずのところでしたが、今回はドラマ性を強く感じる作品になっていると思います。
「路地のブテック前」
「大須大道町人まつり」のひとコマであるということですが、おおらかでユーモラスな街の雰囲気が感じられる作品です。とくに女性のたばこの吸いっぷりのよさが目をひきます。また、路地裏のやわらかな光も被写体の陰影を美しく出しています。新海さんはスナップの名手ですので、現代日本のさまざまな現象や文化をこれからもとらえていってください。
「晩秋ロード」
疑似的な赤外線写真のような仕上がりで高コントラストとなり、イチョウ並木が雪化粧をしたようなとても印象的な風景となりました。写真表現ではときとして肉眼で見た風景とは異質の処理を施すことで、自分の描いたイメージを作品化できます。浜中さんの作品はどれを見ても大胆な構成であり、つかみどころがよいと思います。今後はさらに発展させるとともに、階調表現の勉強をしてください。
「爽秋の候」
朝の公園の散歩風景とのことですが、スーツを着た中年(?)男性のふたり連れは、なんとも不思議な光景に見えてしまいます。ユージン・スミスの写真作品「楽園へのあゆみ」を思い起こさせるようなトンネル効果も有効的です。福村さんは過去にも風景のなかに点景のふたりを撮影した作品がありましたが、そのような写真で5枚ほどの組写真を作ってみてもおもしろいと思います。
「新宿の女」
ほんのわずかに見える看板や住所表示から、新宿の街であることが推察できるところが憎いですね。新宿の街頭ではこのようなコインロッカーをよく見かけますが、少女をモデルとして入れることで、その使われ方や意味合いをイメージできます。また、ストロボ光が冷ややかにダイレクト照射されていることも、無機質な夜の街をかもし出しています。細川さんの作品のなかでは、人物との対話を通したものに味わい深いものがあります。これからも積極的にアプローチしてください。
「眼光」
子どもは興味をもったものに、純粋な気持ちで集中力を発揮しますね。小さいながらもいろいろな工夫で成功を勝ち取ろうとしています。真剣なまなざしから、そのことがひしひしと感じられます。後藤さんは子どもたちの世界を子どもの目線でとらえていて、ほのぼのとさせられます。これからも愛情あふれる作品を作っていってください。
「光の射す方へ」
石井さんは、これまで一貫して風景写真を応募されてきていましたが、今回は街なかでの野良ネコのスナップです。階段に注がれた光がスポット光のようにネコの輪郭を写し出して、レンブラントライトになっています。また、体の傍らに生えた一本の草は野良ネコの生きる姿を象徴しているかのようです。プリントのイメージとしては、もう少し光の印象を強めるためにメリハリのある処理が必要でしょう。今後も、風景、スナップなどでのご活躍を期待しています。
「やんちゃ劇場」
お祭りの一場面、まるで寸劇のように3人の子どもがふざけています。組写真というよりは連続写真です。撮影位置もほぼ同じ。ビデオを回してもきっとおもしろかったでしょう。いやこのおもしろさの印象は写真のほうが強いかもしれません。背景が同じでも、3枚とも動きのバリエーションに重複がなく見ていて飽きず、1枚目と3枚目は、一枚の写真としても成り立っています。2枚目は一枚写真としてはちょっと中途半端。もう少し顔の表情がわかると一枚写真として成立するでしょう。ただこうやって3枚で組んでみると2枚目の未完成さが余韻をつくり、接着剤の役目をしています。なにより3枚目の写真がこの組写真を力強いものにしているのだと思います。こんな場面はめったにありません。紅白と、ビニールシートのブルーのシンプルな背景がこの写真を華やかなものにしています。
「ウォーキングー!」
人物のスナップです。正面からとらえず、真横からというのがおもしろい。この角度なら被写体に余計なプレッシャーを与えることもなく撮れます。僕もよくこの方法を使います。気に入った場所を見つけたら、これぞと思う人が通るのを待つ。田村さんもそうでしょう。5枚とも人物がなくても成り立つ場所ですね。日常の何気ない風景。これは撮り続ける価値があると思います。この方法で撮影していておもしろいのは、横切る人がカメラに気づくとすみませんとあやまること。写真とカメラの関係性を考えさせられます。
「シネマ食堂街」
優秀賞にしてもいいぐらい高い完成度です。負けたのはインパクト。この撮影方法は普遍的なやり方なので、四方さんにはずっと続けてほしいと思います。一度撮ったらおしまいではなく、気に入った場所は何度も通うことが大事です。数年後また撮ると、本物の写真(?)になるでしょう。写真はすごくうまいと思います。とくに2枚目の写真は秀逸です。今月のもうひとつの応募作品もよかったですが、モノクロデジタルプリントにもう少し工夫がほしいところです。
「カモメが飛んだ」
minminさんは1枚目と2枚目の違いを意識して撮れる人だと思います。1枚目は雰囲気があるし、雪のぼけぐあい、飛び立つカモメ、色調もよいでしょう。でもちょっと平凡。2枚目は吹雪の直後にできた雪の紋様によるカモメです。この連想はとてもおもしろい。誰が見てもカモメになります。写真は目の前の、美しさを記録するだけではなく、こういう発見こそが大切。ただ組写真として2枚を対比するにはちょっと弱いのです。2枚目のような発見がもっとあるとよいでしょう。
「ダイヤをまとう貴婦人」
アイディアはおもしろいし、素直にきれいだと思います。これはもう思いつく限りのアイディアを出して、もっともっと撮ることです。東京タワーばかりじゃなくてもいいでしょう。テクニックを使いまくっても全然かまいません。ただ、あきれるぐらいたくさんの撮影のアイディアが欲しい。やってはいけないことなんてないのだから。
「おてつだい」
イヌやネコの目線のようなローアングル。見慣れた場所もちょっとアングルを変えると非日常になります。モップで掃除をしています、いや遊んでいるのかな? とても楽しそうですね。ただ家族の記念写真より、こういうイキイキした家族写真は大きくなったときに見ると、このときの気分をはっきりと思い出すことができるでしょう。
「愉快な人々」
顔に愉快な化粧をほどこして街を練り歩くこの祭りはなんという祭りなのでしょう。ふだんだったら顔のアップを撮らせてくれない人たちも、こんなときは自由に撮れます。これも一種の仮面なのでしょう。愉快な気持ちになるのは、こんな時代にはとてもたいせつだといえます。3枚目が少し距離感が違っていて、4枚組にするにはもう少し4枚の関連が欲しいところです。
「星空の下で」
露出をアンダーに決めてストロボを効果的に使って、幻想的な世界を作り出しています。撮影時間と露出を工夫するなど、テクニックを駆使して個性あふれる写真表現を追求された点を高く評価します。暗闇に残されたカキの実がなにか意図的なものを感じさせて、不思議な存在となっています。自宅の庭でこんな傑作ができるなんて、すばらしい技術力です。どこに行っても、自分の世界を作り出せるエネルギーをおもちの方ではないかと思います。この世界を自分のテーマのひとつとして、これからも作品を積み重ねていきましょう。一段一段ステップを乗り越えていく先に、なにか新しい世界を開かれることだろうと期待しています。
「朱色に染まって」
朝焼けで山並みが朱色に染まり、妖艶な風景です。朝もやが立ち込める山里の朝、まことに美しい光景です。しかし、山の稜線を入れたい気持ちはわかりますが、空の明るさが強いのが気になります。主役を朝もやに決めて、その状況を強く見せたいなら、朝もやよりも強く見えてしまう空の白い部分をすべてカットするか、山の稜線ギリギリまで空をカットして、トリミングされるとよいでしょう。
「獲った!」
水面近くにきた魚を待ち伏せしていたゴイサギが、魚を捕らえた瞬間を写し止めています。捕まった小魚は、目を見開いて大暴れしています。小魚がゴイサギをにらんでいる視線まで、しっかり写すことができました。魚をしっかりとくちばしに挟んで得意げなゴイサギの様子や泡立つ急流、ゴイサギの羽の質感描写や水しぶきが羽の上にコロコロと乗っている様子まで、よく描写されています。RAW現像から画像処理テクニックも的確ですばらしいです。
「自然の芸術」
枝から垂れる氷はよく見るのですが、このような状態で凍る現象は珍しいですね。自然の造形美とはこういったことをいうのでしょう。まるでこけしのようなコケの氷たちが並んで、とてもかわいらしいです。森のなかには、四季折々のさまざまな自然現象があって奥が深いですね。今回は内容がよかったので優秀賞をとるかどうかの最終選考まで残りましたが、やや露出がアンダーだったため、残念ながらこの珍しい情景のおもしろさが思ったようには伝わりません。この画像でしたら、撮影時に露出補正をしたり、もしくは撮影後でもレタッチで明るさの微調整を行えば、簡単に適切な露出が得られると思います。
「勝ったぞ~!」
いい表情で勝利を喜ぶ瞬間をとらえています。手を握りしめて歓声をあげる姿がかわいらしいです。後ろにいて顔が半分隠れてしまっているお嬢さんの表情を写真に加えることができていたら、優秀賞になれたのではないかと思うほどです。撮影ポジションを少し左にずらせば、ふたりの歓喜の瞬間を写しとることができたのではないでしょうか? 撮影しながら、背景処理をつねに心がけるとよいでしょう。写真は心技体、心で感じて、技術をこらして体を動かすことで瞬間をとらえるものです。撮影経験を重ねれば、必ず身についてくると思いますが、自分自身でいつも意識することが大切です。
「秋の陽光」
樹々の隙間から木漏れ日が差しこみ、光芒が放射線状に広がっています。季節感も画面に取り入れられたロマンチックですばらしい作品です。ストレートに見せたいものを画面に大きくしっかりとらえることができています。上部には秋の彩りをほんのりとのぞかせつつ、森のなかの木立をポイントにして、燦々とこぼれ落ちる陽光が生んだほんの一瞬の現象を的確に写し止めています。チャンスとは、状況を判断してその瞬間を写すことです。二度とない瞬間を写せるのが、写真のおもしろいところです。この作品は、そんな一瞬の出合いを自分のものにして、オリジナリティあふれる世界を作り上げました。トリミングをして、右に写り込んでいる人間をカットするとさらによかったでしょう。
「Synchronized fly away」
夜明けとともにハクチョウが目覚め、かん高い鳴き声をあげながら水面を蹴って飛び立とうとしている姿を力強くとらえました。水面を蹴る音、勢いよく羽ばたく音が聞こえるようです。大きく羽を広げた2羽のハクチョウが重なり合って、そのフォルムが可憐で優雅です。動物の撮影は根気のいるものですが、適切な露出で動きを止めて写すことができました。一方で、やや暗めの色調が重く感じます。もう少しハクチョウの明るく白い美しい容姿が出せたらもっとよかったでしょう。
「はぐれ雀」
雪の朝は、雪が音を消してくれるため、シーンとしていてとても静かなものです。大雪が積もった庭のなか、スズメは休む場所を探して枝に乗ったものの、枝が揺れて落ち着かないため、ちょっとあわてているようです。チラチラと降る粉雪と広く空けた空間が、画面のなかでいいバランスとなっています。朝のやわらかい光を受けて、雪がいまにも上がりそうな空気感が伝わってきます。ホッとするひとときのドラマですね。自宅でこんなにいい場面と出合うなんて、なんともうらやましい限りです。
「もくもく」
片手に熊手を持ち、田んぼで野焼き作業に精を出す女性。風に乗ってゆっくり流れる煙に、逆光による作業着のラインライトが映えます。野焼きの作業風景と田んぼのバランスを考えた構図で、野焼きというなくなりつつある地道な作業を落ち着いた雰囲気でまとめたことで、ドラマのワンシーンのような素朴な印象に仕上がっています。風に乗って流れる煙の様子が、いかにも小春日和という感じがします。
「巨影」
和歌山県串本町にある橋杭岩に、いままさに太陽が顔を出そうとする厳粛な時間です。群青色の深く引き締まった空がたいへん美しいトーンで、光のときを奏でています。橋杭岩は、大小さまざまな岩が一列に並んだたいへん幻想的な場所で、神々が住むともいわれる不思議な空間です。ここは、潮の満ち引きで表情が大きく変わります。三脚を使っていないそうなのですが、自然の創り出した造形美を夜明け前の暗い時間に、それもISO 100という低感度でしっかりと撮影できました。撮影のために早起きするなど、陰の努力が光ります。
「渓谷渡り」
渓谷の山肌に赤、黄、緑と美しい彩りが映えており、秋の訪れを感じさせます。吊り橋を渡る団体の観光客たちが等間隔に並び、色とりどりの服装が添景として効果抜群です。近景はしっとりとした空気感で描写され、奥の山間には霧が立ち込めたことで、画面に変化がついていい感じで奥行き感が出ています。黄葉した木々を、画面の四隅までしっかりと見て配置することでバランスよくまとめることができました。
「ぅわぁ~(あんぐり)」
初冬の穏やかな森で、枯れ木に生えるキノコ。コメントに「荒毛木耳(アラゲキクラゲ)」と書かれていたのですが、はじめて見ました。これが荒毛木耳ですか? 荒毛木耳は、たしかキクラゲ科の食用キノコ。生えている際の形はずいぶんかわいいのですね。大きな口を開けてあくびをしているか、コーラスをしているようなイメージでユーモアにあふれており、ほのぼのと愛らしい作品になっています。質感描写がしっかりしている一方で、フレーミングがあいまいな点が少し気になりました。左のキノコを切るのか、入れるのかが中途半端です。できれば、画面にきっちり収めてほしかったところです。少し角度を変えるだけで、それは十分可能な気がします。
「燃ゆる街」
沈む夕日とともに、夕照が輝く海面、煙が上る工場の煙突などがインパクトのある光景です。きっと目に見える以上に美しい光景だったことでしょう。ストレートなねらいがよかったと思います。しかし、光の強い太陽が露出オーバーで白くなってしまった点が惜しいです。もう少し光をコントロールできなかったのだろうかと思います。強い太陽は、画面に入れて撮るほかにも、入れずに撮ったり、時間をかけて沈む直前まで待つなど、まだまだ工夫の余地があったはずです。また、撮影者には街がはっきり見えていると思いますが、できあがった写真からはあまり街の存在が伝わってきません。「燃ゆる街」というタイトルが少しひとり歩きしているような印象を受けます。
「夢紅葉」
レンズの望遠端で、背景をうまくぼかして雰囲気を出しています。手前のモミジと背景の紅葉の位置関係がよかったので、ぼけ味がよく出ました。よく考えて、画角と撮影ポジションを決めることができています。配置よく並んだモミジを木漏れ日がやさしく照らして、光の変化をうまく取り込めています。黄葉から紅葉へと変化するときの流れもうまく画面に取り込んで見せています。高倍率ズームは開放F値が暗く、望遠撮影時は手ぶれが心配なもの。しかし、手持ち撮影だと思われるこの写真は、ISO感度と露出補正を使って適切な露出でしっかり写せています。最近の高倍率ズームは手軽で便利で、描写力もなかなかのものです。
「家路」
見る側の心を揺さぶる心象的な作品です。黄昏の空のグラデーションのトーンがとても美しく、雲ひとつない空には三日月が寂しく浮かんでいます。物思うような青年がトボトボと橋の上を歩く姿がなんともいえず、寂しさというか、もの悲しさを覚えます。橋の形がよく、人物のシルエットとともに存在感が出ています。レタッチで画面下部のやや明るい空を少し焼き込むか、ハイライトの色調を少し抑えるかすれば、三日月の存在がグッと浮き出てくるでしょう。
「小さな滝」
流れのしぶきが岩肌をしっとりと濡らし、さらにその濡れた岩肌には枯れ葉がちりばめられていて、しっとりとした晩秋を感じさせます。渓流にある小さな滝をねらって、スローシャッターで流れを活かしてまとめられています。流れの表情はよく出ていますが、画面上にちょろちょろ見える緑の草はカットしたほうがよかったでしょう。シャッターを切る直前に、フレームの四隅をよく見てフレーミングを決めましょう。写真は瞬間が大切ですが、この場合、急ぐ被写体ではないので、被写体を観察する時間はたっぷりあったように思えます。
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