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公開日2010年01月29日
バンクーバー冬季五輪を控えた2009年末、キヤノンの新しいデジタル一眼レフカメラのフラッグシップ機「EOS-1D Mark IV」がデビューした。今回のモデルチェンジでは、伝統のAPS-Hサイズのイメージセンサーサイズは堅持しながらも画素数は1,610万画素に強化したほか、AFシステムの大幅な改善と、EOS-1Dシリーズとしては初のフルHD動画撮影機能が追加されたことなどが主な改善点となる。注目すべき点の多い、この「EOS-1D Mark IV」の実写レビューをお送りする。
「EOS-1D Mark IV」を初めて手にすると、外観は「EOS-1D Mark III」をほぼ踏襲しているため、それほど新鮮味は覚えない。しかし、つぶさに観察するとプロの道具としての完成度の高さ、細部にわたるまでプロ機独特の機能美や高級感、品格といったものを感じることができる。プロ機では複数台のカメラを使い分ける際に操作の共通性が求められるため、モデルチェンジごとの大きな変化は望まれないが、その点でもともと完成度の高い「EOS-1D Mark III」をあえていじることはせず、操作体系についても新機能以外は「EOS-1D Mark III」とほぼ同じとしたのは当然のこととも受け取れる。
イメージセンサーは、伝統のAPS-Hサイズ(27.9×18.6mm、画角はフルサイズ機比で約1.3倍の焦点距離相当)を踏襲しており、画素数は1,610万画素と「EOS-1D Mark III」(1,010万画素)の約1.6倍となった。画素ピッチを計算すると約5.7μmで、「EOS-1D Mark III」の約7.2μmよりもだいぶ狭くなっているが、オンチップマイクロレンズのギャップレス化とフォトダイオードとの距離の短縮、さらなる微細化プロセスの導入による画素構造の最適化、カラーフィルターの透過率の向上、そして「DIGIC4」によるノイズ除去技術の向上などにより、「EOS-1D Mark III」よりも2段分も高感度となるISO 12800を常用化している。これにより、通常設定でISO 100~12800という広範囲な感度設定が可能になったほか、拡張設定では低感度側でL(ISO 50相当)、高感度側でH1(ISO 25600相当)、H2(ISO 51200相当)、H3(ISO 102400相当)の超高感度設定を可能にしている。実写結果によると、1,610万画素の解像感はさすがに高精細であり、A3以上の大判プリントでは1,000万画素クラスのカメラとの違いを実感できるだろう。また注目のISO 12800での描写も、感度を感じさせない優秀な描写が得られていた。高感度側の拡張設定ではさすがにノイズ感が目立つようになるが、極端に暗い場所での動画撮影などでは威力を発揮するだろう。
今回のモデルチェンジではAF機能についても大幅な見直しが行われた。AFフレームのレイアウトは伝統の45点エリアAF方式を踏襲しているが、選択可能なAFフレームが変更されている。「EOS-1D Mark III」ではクロス測距の可能な19点に絞って残りの26点はアシストに回していたのに対し、「EOS-1D Mark IV」では全45点を選択可能に戻したのに加え、39点をクロス測距(縦線検出F2.8対応、横線検出F5.6対応)の可能なAFフレームとした。また、各クロスAFフレームでは縦線検出は基本的にF2.8対応であるが、「EF24-105mm F4L IS USM」などの一部レンズでは、F4でのクロス測距を可能にしている。
さらにAF機能ではAIサーボAFのアルゴリズムを見直して「AIサーボAF II」を採用したのをはじめ、「EOS 7D」でも採用されたAFフレームの測距視野を通常の約1/2にするスポットAF機能や、AFフレームの領域拡大機能に「45点全領域を利用」を追加したほか、AFフレームの選択を縦位置と横位置で別々に設定できるようにするなど、AFの機能面でも大幅に強化している。
そしてもうひとつの大きな特徴が、ライブビュー機能の充実とフルハイビジョン動画撮影機能の追加であろう。ライブビュー機能はキヤノンのデジタル一眼レフカメラでは「EOS-1D Mark III」が先陣を切ったが、ピント合わせはMFのみという点など過渡的な部分もあった。しかし、「EOS-1D Mark IV」ではその後の機種と同様に、ライブモード、顔優先ライブモード(ともにコントラストAF)、クイックモード(位相差AF)の3種類のAFモードに対応したほか、機能設定画面を表示可能にするなど最新のライブビュー機能を搭載している。
EOSムービーについては、当然ながらフルHD規格の動画撮影に対応させた。動画記録サイズは1,920×1,080のフルHDではフレームレートは一般的な30fps(PAL方式では25fps)と映画と同じ24fpsが選択可能。1,280×720のHD画質と640×480のSD画質ではフレームレートが60fps(PAL方式では50fps)となり、より滑らかな動画撮影ができる。撮影は自動露出撮影のほかマニュアル露出にも対応し、ISO感度、絞り値、シャッタースピードを任意に設定できる。音声はリニア(非圧縮)PCM方式でサンプリング周波数48KHz、L/Rとも16bitで記録される。内蔵マイクはモノラルだが外部ステレオマイク端子を装備しており、録音レベルは自動調整される。
カメラを持った第一印象は「EOS-1D Mark III」とそれほど変わりないと感じたが、実際の撮影に投入してみるとAIサーボAFの能力が強化され、動体追従性がかなり向上している印象を受けた。
画質面では、画素数が1,610万画素に強化された効果は大きく、A3プリントが余裕でこなせるようになっている。また、高感度特性も予想以上の好結果で、個人的にはISO 12800域でも実用可能と思われた。ただ、シャープネスの設定については低感度域で不足気味に感じられ、特にハイライト部で輪郭がかなり太めなのがやや気になった。そのためISO 800以上の高感度域ではJPEG撮影で好結果が得られるが、風景撮影などで低感度域を使用する際はRAWデータから現像することをおすすめしたい。
総合的に見て、「EOS-1D Mark IV」はやはりスポーツ・報道のプロ向けに最適なチューニングが行われているといえるが、画素数が1,610万画素になったことで、風景撮影など多画素が要求される分野でも十分活用できる能力が与えられている。また、本格的なフルHD動画撮影にも対応し、従来以上にオールマイティな使い方ができるようになった。それゆえ「EOS-1D Mark IV」は、あらゆる分野のプロが求める高度な撮影機能を結集したプロのための究極のデジタル一眼レフカメラであると結論づけることができる。
連写とAFの追従性を見るため飛び回るカモメを撮影してみた。カモメはかなり動きが速いのでフレーム内に収めるだけでも難しいが、ピントは確実にとらえることができており、さすがに大幅に強化されたという「EOS-1D Mark IV」のAF能力は高いといえそうだ。ただ、このような用途では10コマ/秒でも羽の動きのバリエーションが不足がちでもう少しコマ速が欲しくなってしまう。
「EOS-1D Mark IV」では動画撮影時にマニュアル露出が可能で、ISO感度、シャッタースピード、絞り値を任意の値で固定できる。しかしシャッタースピードについてはフルHD画質時に30fps、HDとSD画質時は60fpsを維持するためそれぞれ1/30秒、1/60秒以下のシャッタースピードは設定できない。作例ではJR線の鉄橋を、フルHD画質、30fpsでISO 12800とH3(ISO 102400相当)の比較撮影をしてみた。ともに絞りはF4で撮影している。フレームレートの関係でシャッタースピードは1/30秒以下に設定できないのでISO 12800では当然露出アンダーとなるが、H3では目で見たよりも明るく描写できている。さすがにざらつきは目立つが、高感度を優先する撮影条件では十分活躍の機会があるだろう。また、マニュアルで露出を固定すれば、電車の照明に影響されず常に一定の露出で撮影できる点も大きなメリットだ。
ISO 12800による動画
H3(ISO 102400相当)による動画
■撮影データ
レンズ:EF24-105mm F4L IS USM/絞り:F4/シャッタースピード:1/30秒
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