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公開日2010年03月11日
キヤノンからエントリー向けデジタル一眼レフの新製品「EOS Kiss X4」が発売された。EOS Kiss シリーズではデジタル化された2003年9月発売の初代EOS Kiss Digitalから数えて早くも本機で7機目、「EOS Kiss X3」以来約1年ぶりのモデルチェンジとなる。上位機種のEOS 7Dと同じ1,790万画素のイメージセンサーを搭載して画質面では同等としながら、撮影機能は簡略化して小型軽量化する従来からのEOS Kissシリーズの基本路線は継承しているほか、新たにフルHD動画撮影に対応するなど動画撮影を充実させてきた。今回は画質面ではエントリーの域を超えたといえる「EOS Kiss X4」をレポートする。
「EOS Kiss X4」の大きな特長としては、まずイメージセンサーに登場間もない「EOS 7D」と同様の1,790万画素のCMOSイメージセンサーを採用してきたことだろう。「EOS 7D」との違いはイメージセンサーからの読み出しのチャンネル数とEOS 7Dでは2基搭載する「DIGIC 4」が1基となる部分だが、連続撮影速度では約2倍の差があるものの、画質的にはほぼ同等の性能を持つと考えてよい。ISO感度は、いつものようにISO 100始まりの使いやすい感度設定を継承していて、通常設定での最高感度は「EOS Kiss X3」のISO 3200から1段伸びてISO 6400となった。また、拡張設定ではISO 12800相当まで設定することも可能だ。これにより多画素化を図りながらも高感度化するという両立させるのが難しい課題を、「EOS 7D」同様にイメージセンサーのマイクロレンズのギャップレス化、フォトダイオードとマイクロレンズ間の距離の圧縮、微細化プロセスの導入などにより集光効率を改善するという最新技術によってクリアしている。
パフォーマンスについては、「EOS Kiss X3」が1,510万画素で最高約3.4コマ/秒、連続撮影可能枚数がJPEG/L/Fineで約170枚、RAWで約9枚というスペックであったのに対し、「EOS Kiss X4」では1,790万画素と画素数をアップさせながら、コマ速は約3.7コマ/秒とより高速化を実現している。しかし連続撮影可能枚数はJPEG/L/Fineで約34枚、RAWで約6枚とかなり少なくなっている。おそらく同じエンジンとバッファメモリーで、画素数とコマ速がアップしたのだから連続撮影枚数が減るのは致し方ないところだ。もっともこのクラスではJPEGモードでの撮影が中心になるので、連写を行う場合も実質的には影響はないと思う。しかしRAWモードで連写を多用するような使い方をすると、ややもどかしさを感じる場合があるかもしれない。ちなみに筆者の場合はさらにヘビーなRAW+JPEG/L/Fineを常用するが、筆者の撮影ペースではまったく不足を感じなかった。
さて、撮影機能面についても見てみよう。まずスチール撮影の機能面では、AFシステムをはじめとする多くの機能を「EOS Kiss X3」から継承しているが、露出関連では測光センサーが63分割化され、より詳細な露出決定が行えるようになったほか、特筆しておきたいのは露出補正の補正幅がこれまでの±2段から±5段へと大幅に強化されたことだ。これまでは明暗比の大きな被写体などでも露出補正幅が±2段までしかなく、これを超える補正を行いたい場合はマニュアル露出に切り替えるしかなかった。しかし、露出補正幅が±5段になったことで露出補正の幅に不足を感じることはまずなくなるだろう。
一方で、動画撮影機能も大幅に強化されている。「EOS Kiss X3」でも動画撮影は可能であったが1,920×1,080のフルHD画質では20fps、1,280×720のHD画質以下で30fpsのスペックであったのに対し、「EOS Kiss X4」では1,920×1,080のフルHD画質では30fps、1,280×720のHD画質以下で60fpsと上位機種と同じ動画撮影機能を実現した。また、640×480のSD画質では新たにクロップ640×480モードを追加し、通常撮影時の約7倍の望遠撮影を実現している。これは通常の動画撮影ではイメージセンサーの全域を使って撮影するが、クロップ撮影時はイメージセンサーの中央部の680×480画素部分を等倍で読み出すもので、例えば100mmのレンズを使用した場合約700mmのレンズを使用したのと同じ望遠効果が得られる。特別な望遠レンズを必要としないで動画の望遠撮影を楽しめるので非常に便利な機能だ。
デザインについては、ボディサイズは「EOS Kiss X3」とまったく同様であるが、コーナー部分がやや丸みを帯びたり、ボタン類が大型化されたりと、より洗練されたフォルムを採用している。また、背面液晶モニターはアスペクト比3:2の3型を採用し、画素数も104万ドットとなり、ライブビュー時の上下の余黒がなくなったのが目新しい。操作面ではモニター右にクイック設定ボタンが新設され通常撮影時もライブビュー撮影時も主な撮影設定項目がワンボタンで呼び出せるようになり便利になったほか、ライブビュー撮影、動画撮影ボタンが独立し、操作がわかりやすくなっている。
EOS Kissシリーズは言うまでもなく、フィルムカメラ時代から続くエントリー向け一眼レフカメラのベストセラーブランドだが、その基本コンセプトは「上位機種と同じ画質」「機能は必要にして十分」「小型軽量」というもので、低価格機ながらその時代の最先端の技術を注ぎ込み、常にクラス最高性能を目指してきた。しかし、歴代のEOS Kissのなかでも今回の「EOS Kiss X4」は、モデルチェンジごとに熟成を重ねた撮影の基本機能は初級機としてはほぼ完成の域に達しているし、とりわけ画質面や動画撮影機能の面で上位機種の「EOS 7D」とまったく遜色ない性能が与えられていたのが印象的であった。また細かな操作性の面でも露出補正幅が±5段になったり、クイック設定ボタンを追加したりと従来以上に使いやすく、わかりやすくなり熟成も進んだ。もちろんコマ速をはじめとした連写機能、AF機能や、ファインダー性能、ボディ剛性など、パフォーマンスや堅牢性の面では上位機種との差はあるが、これらの機能はボディの大きさや重さとトレードオフになる部分も多く、特に必要と感じなければ小型軽量な「EOS Kiss X4」を選択した方が賢明であろう。そして何よりリーズナブルな価格設定は、このカメラを売り上げランクの上位に押し上げることになるのはまず間違いない。今EOS DIGITALシリーズでいちばんリーズナブルで旬な機種はどれかと聞かれれば、筆者は躊躇なく「EOS Kiss X4」を真っ先に挙げるだろう。
「EOS Kiss X4」では、上位機種と同様の1,920×1,080・30pでのフルHD動画撮影が可能になったが、これに加えて中央部の640×480画素部分を等倍でクロップ読み出しし、約7倍の望遠効果が得られる動画クロップ撮影機能(640×480、SD画質、60p)が追加された。実際に撮影してみるとクロップ動画モードでは使用レンズの望遠端が55mmの場合でも385mm(35mm判換算で616mm)の超望遠効果を楽しむことができる。ちなみに望遠端の焦点距離が135mmの場合で945mm(同1,512mm)、250mmなら1,750mm(同2,800mm)にもなる。イメージセンサーの等倍部分を切り取るので使用レンズの性能が画質に大きく影響し、通常時よりも画質は多少落ちるが、運動会でわが子のアップを撮りたい場合など、いざというときに威力を発揮するだろう。
クロップ撮影
通常撮影
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