「浜辺」
外国人のご婦人ふたりが浜辺でほほ笑んでいます。愉快な表情を自然体でとらえています。どことなくユーモラスで、コミカルな内容がとても印象的です。この作品はシャッターチャンスをうまく活かしたフレーミングと、レタッチ表現が相乗効果となり、作品としての質を高めています。雑多な背景をモノトーンにして、必要な部分はカラーで演出することでねらいが明確になりました。まるで海外の浜辺で撮影された光景に見えますが、じつは日本で撮影されたそうです。欧米風の落ち着いた色調に仕上げたことが成功しました。
「戦士達」
タイトルがいいですね。その意図どおり果敢な戦士たちを真正面からとらえています。望遠レンズの選択もうまく、ほどよい圧縮効果が選手を重ね、レースの緊張感を引き出しています。また画面の隅々まで無駄がなく、空間を盛り込んだ画面構成も群を抜いた絵作りのうまさを感じます。わずかなチャンスで、これだけ完成度の高い撮影ができるのは、作者のキャリアに裏づけされた、たしかな腕があるからでしょう。
「森の主」
広角レンズで見上げた巨樹はまさに森の主です。太い幹からさらに上へと伸びる太い枝は、重厚感があり迫力すら感じます。また、この樹と向き合った角度がすばらしく、ほぼ幹にもたれたポジションから仰いでいます。こうした撮影では上部がおろそかになりがちですが、枝ぶりを考えてバランスのよい構図を得ています。
「タープのある光景」
獲物をねらうクモをクローズアップでとらえています。クモというどちらかといえば敬遠されがちな被写体を主役に迎え、クモの巣をキャンプ用品のタープに見立て、背景に花色を添えるというとてもファンタジックで明るい作品に仕上げています。周囲の環境を上手に活用して作品にした意気込みがすばらしい。
「記憶色」
どこか懐かしくてどこか新鮮。そんな印象をもつこの作品は、独特の色調が特徴です。ソフトな描写のなかに見られる彩度の高い彩りこそが作者の「記憶色」なのでしょう。独創的で個性的な描写が不思議な光景を演出しています。そして、3足の靴と点景にしたふたりとの距離感にも物語を感じます。
「花宿り」
黄色いナノハナにタンポポの種がそっと乗っています。クローズアップでとらえたこの作品は、少し傾いたタンポポの繊細な存在感が、ソフトにぼける黄緑色の背景から浮かび上がります。また、画面構成もバックの濃淡や形に注意が注がれて無駄がなく、バランスのよい構成で完成度の高さを誇っています。
「トワイライト・タイム」
なんと美しい夕焼けでしょうか。パステル調のマゼンタ色がやさしい静かな時間を演出しています。夕暮れのヨットハーバーにまもなく夜がやってくる曖昧模糊な時間帯ですが、無理に強調していない色使いがこの作品のよいところです。惜しいのはヨットとボートが画面で二分された点です。
「光」
タイトルの「光」は、背景からモデルに届く光でしょう。バックに見えるハイライトゾーンからモデルに届く光の道筋が、傾けた壁を伝って向かってくるようです。計算された画面構成と独創的な色調が効果的にモデルを演出しています。また、モデルのまなざしと尖った口元もチャーミングで印象的です。
「浮遊」
ハスの花びらが浮かんでいます。よく見ると決して美しい水面ではありません。しかし、その水に浮かんでいるからこそ花びらの美しさが伝わってきます。背景に目を向ければ、朽ちた花びらも散在しています。それを受け止めるように青々した葉が……。煮詰めた構図が印象的です。
「夕輝」
ススキをポイントにオレンジ色の夕日を全面で受け止めた意欲作です。ここまで強烈に光をとらえると、ハレーションやゴーストといった弊害が些細なことに感じられてしまいます。完全逆光に近い条件のなかで階調も失うことなく美しく再現されています。欲をいえば、ススキの並びやとらえるサイズにもうひと工夫欲しいところです。
「甲羅干し」
背中を焼くサーファーでしょうか。バックにはサーフボードが置いてあります。砂浜でうつぶせになっている若者をなにげにとらえたシンプルな作品ですが、じわじわ照りつける日差しがひしひしと伝わってきます。若者の側には靴と水筒、ブルーの水着と色のアクセントも決まっています。見方を変えれば品のある作品です。
「かっちょええ!!」
左からのサイドライトに浮かぶ女性。ハイライトを活かした露出設定に周囲が暗く沈んでいます。薄暗い雰囲気と彼女のツンとしたクールな表情、足に組んだ手のしぐさがこの場にマッチしており、異色のポートレートに仕上がっています。それだけにタイトルは一考してほしかったです。
「橋の上」
川の中州に落とした影は橋の上から見下ろす作者自身です。自作自演の作品は一見簡単に撮れそうですが、じつはなかなかむずかしいものです。そのひとつが背景と影とのバランスです。ここでは中州という特徴を活かしながら川の流れを影より控えめに配置した主題構成がよかったです。
「風をよむ瞬(とき)」
ハグロトンボが向かい風に向かって飛び立つ瞬間をとらえた作品です。羽の向きが前方へ繰り出された一瞬をキャッチしました。この動作がトンボに動感を与えています。羽を閉じて静止しているトンボと大きく違う点です。見慣れないポーズは絵柄も新鮮です。
「あ~眠い」
昼寝をするライオンのクローズアップです。「なに撮ってんだ!」といわんばかりの半開きのまなざしが印象的です。本当に眠そうな表情です。横位置で画面いっぱいに横顔をねらった意欲的な作品ですが、シャープネスとコントラストの不足を感じます。この2点を補正すれば、よりインパクトが向上します。
「僕にも、私にも頂戴」
大きく口を開き、エサをねだるツバメのヒナたち。カメラでねらわれているなど眼中にありません。この時期のツバメは頻繁にエサを運びます。羽がぶれていることからホバーリングで給餌していることがわかります。動きが速く簡単に撮れそうで撮れないシーンをみごとに仕留めました。
「静寂の中で」
闇に乱舞するホタルの群れ。その光跡は長いものもあれば点光もあり、変化に富んだ光跡をバランスよくとらえています。また、奥行きも感じます。チャンスに恵まれたよいシーンだけに、背景が暗すぎる点が残念です。暗いなかにもある程度、背景が浮かび上がるレタッチが欲しかったところです。
「つきぬける空」
魚眼コンバーターを使い、ビルの谷間から見上げた空です。円周構図は、ポイントやアクセントの配置にも迷います。そんな画面構成を難なくクリアして、街並みが空に吸い込まれていくような楽しめる作品に仕上げています。
「光のシャワー」
森に広がる光のシャワーがもやに浮かび上がりました。もやが移動すれば見えなくなるこの現象ですが、太陽を小枝で隠し露出差を減少させて背景の緑も見せています。コントラストの高い条件で発生する不利益を補う工夫が活かされています。左下隅の枝を外せば完成度がさらにアップしました。
「風に吹かれて」
白い花の背後からそっと近づいて撮影したようなさりげなさが伝わってきます。背景を白く飛ばし、白い花を浮き立たせる。ハイキー調のむずかしいシチュエーションですが、葉の緑のあしらい方もそつなく全体にバランスよくまとめています。やさしさのなかに品を感じさせる作品です。
「パープルシャワー」
咲き誇るピンク系のフジを真下から見上げています。超広角を活かしたアングルが新鮮で、花びらが降り注ぐ様子は、たしかにシャワーを浴びているようです。絞りを開けぎみにしたことで背景がぼけて、イメージ効果を見せていますが、もう一段絞り込んだほうがシャワー効果が増したのではないでしょうか。
「モニュメントバレーの荷車」
台形の岩山に広がる平原。そこに置かれた荷車。まるで西部の開拓時代にタイムスリップしたかのような光景です。手前の赤土には水たまりがあり空を映しています。露出が最適でしっとり落ち着いた描写が印象的です。さらに前景から背景に至るまで無駄なく構図が決まっています。
「インチキすいか割り」
スイカ割りのスナップですが、とても楽しい雰囲気が伝わってきます。タイトルの「インチキ」とは目隠しをしていないスイカ割りという意味です。笑顔で振り下ろすタイミングのよい瞬間をとらえています。また、背景をぼかすなどの主題を引き立てるレタッチも効果的です。
「独演」
広げた美しい羽に目を向けず、クジャクと向き合った構図が印象的な作品です。コバルトブルーの羽毛とグリーンの尾羽の色柄の対比は、コントラストのあるストレートな美しさを感じます。ピントの位置が顔より後ピンぎみな点が悔やまれます。
「朝靄に映える」
色濃いツツジを前景にして棚田を望んでいます。このツツジと田んぼに佇む木立の組み合わせがよい対比になっています。遠景には住宅がありますが、朝もやが住宅を包み隠しています。見え隠れしていても画面構成が明確なので目立ちません。もやを活かし、よい構図を選んでいます。
「Mist」
熱帯のジャングルで撮影されたような湿度を感じさせる作品です。背後から押し寄せてくるような霧の存在を前景の林との対比で見せています。この林には花が咲き、シダが茂っていますが、その存在をアクセントとして見せられたら、さらに臨場感が高まったでしょう。
「新緑ゆれる」
大きく揺れる枝の奥に勇壮な滝が見えています。一般的に滝を眺めると、つい滝の姿をねらいがちですが、作者はあえてそれを避けています。垣間見える滝が清涼感を醸し出し作品に引き込まれます。ぶれを積極的に活かした意欲作ですが、わずかにぶれすぎの感じも否めません。
「気象予報士」
葉っぱの間からのぞいたアマガエルです。この日は雨降りなのでしょうか。活き活きとしたカエルの表情がいいですね。足場になった幹の形と、濡れた葉っぱの添えぐあいが、現場の雰囲気をよく醸し出しています。カエルに対して周囲のあしらい方がうまく、画面構成に優れた作品です。
「紫海のマンタ」
ラベンダー畑を紫海、チョウをマンタにたとえています。たしかにチョウの羽ばたいている姿は、マンタを連想させます。チョウがラベンダー畑を乗り越えていく動きが、優雅な泳ぎをイメージさせています。ピントもばっちりで、よいチャンスを的確にものにしました。
「GO!」
低速コーナーを攻めるマシンをノートリミングでとらえています。的確なピント位置と流し撮りによるぶれが動感を生んでいます。コーナーとマシンの位置関係など、構図もうまくまとめられています。もう一段シャッター速度を落とせば、動感が増し、さらに迫力が出たでしょう。
「静寂の渓谷」
苔むした岩の間を静かに下る川の流れ。3段の落差を下るため実際には大きな音が谷に響いていることでしょう。スローシャッターで動感を見せています。白濁がイメージ化して静寂という言葉がぴったりの作品です。下流には緑の映り込みもあり、奥行きが感じられます。
「杭時を経て」
杭の存在感がクローズアップされたシンプルな構図です。さらに特筆すべきは油絵のような濃厚な色再現です。こってりした彩度とコントラストにより浮かび上がる杭の存在。「杭時を経て」の意図がみごとに表現されています。
「気合を入れて」
ライトに浮かぶ大相撲の塩まきシーンです。ロサンゼルス巡業で撮影されたそうですが、タイミングがみごとです。この作品は背中越しにねらったところが意外性を引き出しています。もし正面ならば関取の表情に注目してしまい平凡な作品になったでしょう。
「森の妖精達」
清楚で美しいミズバショウの群生です。背景には林を入れていますが、上部を切り詰めて群落を手前に広げたほうが群生美は強調されました。
「W rainbow」
内虹と外虹の2本の虹がくっきり現れた、スケールを感じさせる作品です。とくに内虹の内側と外側では明るさが違います。よほど空気が澄んでいないと現れない現象です。本人が影絵として写り込んでいますが、これもまたよいアクセントになっています。
「身軽なナナホシテントウ」
細いサヤエンドウの先にちょこんと止まるテントウ虫は、まるで軽業師のようです。タイミングのいいチャンスでした。緑のバックに浮かぶテントウ虫の色の抜けと、シャープネスの高さに驚きました。構図とレタッチの上手さに確かな実力を感じました。
「本日の飛距離」
距離看板とホオジロの組み合わせは、画題とともになかなかユニークです。背景も明るくカラフルでいいホオジロに出合いました。この光景は人によっては見過ごしやすく、撮影時にイメージが湧かなければ、これだけうまくまとまりません。作者のカメラアイの鋭さが伝わってきました。
「蒼の溜まり」
コバルトブルーの絵の具を流し込んだような美しい水景色です。遠景にグリーンの湖面があることから、この彩りは池のすべてで見られるわけではないことがわかります。撮影ポジションの選択がよく、水色の対比と枯木の組み合わせを上手に構成しています。
「ある日の我が家」
何気ない現実を玄関に見つけた作者のカメラアイに驚かされました。スポット光に浮かぶ大小さまざまな靴の群れは、いったいなにを意味するのでしょうか。生々しい現実を見るような錯覚すら抱きます。
「路地裏にて」
路地を抜け、さてどこへ行こうかとネコが悩んでいるようです。縦構図を選び、画面の左右に壁を入れたことで路地の狭さや高さを上手に表現しています。そして、なにより路地の光景に戸惑うような自然なネコの表情やしぐさが決まっています。
「天空の祭典」
柏崎市で開かれる世界最大規模の壮大な花火大会を、フィッシュアイレンズを使って観客まで取り込んで的確に収めました。観客席の中央やや右の白いパラソルが、花火の光を受けてアクセントになっています。肝心な花火があまりの明るさに白飛びしてしまったのは残念ですが、とくに作品の本質を損なうものではなく、そのぶん、手前の観客たちが浮き上がり、細かいしぐさまで見てとれるようになっています。また、たとえ人ごみのなかであろうと、関係なさそうにふたりの世界に入る右手前のカップルもユニークですが、頭部が切れてしまったのが残念です。
「RISA」
神社の境内へと続く階段でしょうか? 浴衣を着た若い女性が緑のアーケードのなかをくぐるように階段を登りながら、後ろを振り向いたところをスナップしています。その若さと美貌ゆえか、ちょっと小悪魔的に見える容姿は、それだけでも十分魅力的ですし、軽々しく踏み入ってはいけないような底知れない魅惑の世界へ誘われている雰囲気もあります。作者との関係はわかりませんが、悪いことはいいませんから、このまま引き返したほうがいいですよ(笑)、とアドバイスしたい気にもなります。もちろん余計なお節介ですけどね。
「バーニー滝」
アメリカのマッカーサー・バーニー・フォールズ州立記念公園にある落差39mのバーニー滝です。カリフォルニアでもっとも美しいといわれている滝ですが、実際にはそれほど大きなものではありません。しかし、スローシャッターにより水の流れを強調したこの作品からは、美しさだけでなく、その何倍ものスケールを感じます。ただし、全容を入れるために左上の落口から入れ込んでいますが、そのぶん、下段の横に広がる部分のスケール感がやや損なわれてしまいました。たぶん撮影していると思われる横位置作品と比較してみてください。
「木洩れ日」
深く、幽玄な森に結婚式のライスシャワーのように射す太陽の光が印象的な作品です。輻射点(ふくしゃてん)となる太陽の位置、そこから発する光線の入れ方など構図もしっかりしていて、シルエットとなった右の太い幹をもつ木にも生命の躍動感が感じられます。逆光でとらえているため、葉っぱの輪郭もはっきりしました。太陽光線を美しく浮き立たせているのは朝もやかと思っていたら、じつは野焼きの煙だとか。
「Black Swan」
毎回、女性ポートレートで楽しませてくれるアズマさんの作品。今回は九州への出張ついでにあちらへ転居してしまったなじみのモデルさんを撮影したそうです。気心の知れたモデルさんなら、撮影は快調そのものだったことでしょう。この作品は光が美しく、逆光により長く伸びた影がポイントで、最後まで白いドレスの「White Dance」とどちらにしようか迷いました。残念なのは、モデルの頭部が柱と重なってしまったこと。もう少し、右でポーズをとってもらえばよかったのにと悔やまれます。
「高処の見物」
投稿者は、鎌倉の光明寺で、サクラの木に登り、辺りを見渡している一匹のネコを見つけました。人になれているのか、花見を自分なりに楽しんでいるようなネコをフィッシュアイならではの至近距離で撮影しています。威風堂々とした(?)ネコが大きく写っていてたいへん迫力があり、なんとなく花見で浮ついている人間たちを見下ろしているようです。残念なのは前号でも書きましたが、月例は多少季節モノを大事にするということ。この作品も4月号か5月号用に送られてきていたら、もっと上位をねらえたかもしれません。
「暮時」
ベルギー・アントワープでの夕暮れ時、橋の上の通行人をモデルにした雰囲気のある作品で、シルエットに配した街灯、彫刻そしてカップルとのリズムが絶妙です。ただし、カップルの表情がぎりぎり読み取れる明るさに表現されていて、そのぶん、バックの空が明るくなって、せっかくの夕焼けの赤みが色あせてしまったのが残念です。もう少しバックの色みを残したまま、シャドウ部を持ち上げるレタッチのほうがいいと思います。ちなみにベルギーのアントワープには美しい大聖堂があり、世界遺産にも登録されていますが、日本人にはアニメ『フランダースの犬』で有名なルーベンスの絵画「キリストの降架」のある大聖堂として人気があり、私も15年ほど前に訪れた懐かしい街です。
「夏の瓢軽者」
埼玉県行田市にある古代蓮の里で撮影された作品です。今年はとくにここの作品をよく見ました。といっても鈴木さんの作品はその流行の古代ハスではなく、小雨が降るなか、ハス池で赤く変色した葉に寄りかかる、小さなカエルが主人公。赤い葉にのったたくさんの水滴がとても美しく、それを見つめるカエルの表情になんともいえない愛くるしさを感じますね。
「流鏑馬」
疾走する馬上から鏑矢(かぶらや)を射る流鏑馬(やぶさめ)。語源は馬を馳せながら矢を射るため、「矢馳せ馬(やばせうま)」と呼ばれたことからと伝えられています。最近、この流鏑馬の撮影は人気なのでしょうか? テイストは違いますが、前月にも入賞作品がありました。さてこの作品も、相当なスピードで走る馬の姿をむずかしい縦位置によくまとめ、ピントも馬上の射人、馬の顔ともにバッチリで、なにより躍動感が感じられます。
「暑い日」
またまた福井さんの舞妓さんシリーズです。今回は、このシリーズ以外の作品にも気になるものが数点ありました。最後まで迷いましたが、やはりおもしろさからいってこちらのほうが上かなと判断しました。この作品は初夏、舞妓デビューの店出しの日に、そのあまりの暑さに付添い人が舞妓さんの後ろからうちわで風を送っているところです。よほど暑い日だったのでしょう。通い詰めている福井さんですら初めて見た光景だそうです。それを写真を通して見せてもらえるというのも幸せです。
「シルエット」
アジサイの花の下でシルエットとして浮かび上がるアリ。シンプルですが、それだけにインパクトのある作品です。前作のバッタもそうでしたが、こういう作品を撮るには、漠然としたものでも、目的をもってそれなりに足でチャンスを稼がなくてはなりません。昭和記念公園で見つけた美しいアジサイの花の周りを、なにかおもしろい虫がいないかなと探し回っている柴田さんの姿を想像してしまいそうです。
「花園」
ネイチャー系の作品が比較的弱いなか、なかなかの秀作です。シルエットに配した数本の木立の奥には黄色のユリ畑、そして手前にはピンクのユリ畑が効果的に配置されています。もちろん、ここは所沢のゆり園での作品ですから、その管理などに人の手が加えられているのでしょうが、深い森のなかで人知れず繰り広げられている輪廻を描いたような、そんな雰囲気が見てとれます。
「雨の中の激走」
激しい雨のなかを疾走するフォーミュラカー。相当なスピードで走る姿を望遠レンズでここまでアップでとらえるにはそれなりにテクニックが必要ですが、なによりもたいへんなのはこの雨対策だったのでは? どのジャンルでもそうですが、写真も自分がねらう被写体が本当に好きでないと務まらないなあとつくづく思う世界ですね。モータースポーツが大好き、という感じが伝わってきます。
「MEI」
美しい女性の素直なポートレートです。モデルがいいですから、変に作らず、ストレートに写したのが成功しています。モデルのよさが重要だと思われがちなポートレートですが、モデルを照らす光の使い方や自然な表情を引き出すテクニックなど撮影者に求められることは多々あります。このモデルのMEIさんと撮影者のさちさんは同年代。それがモデルの自然な存在感へとつながっています。
「かくれんぼ」
木版画や水墨画のようなアート的な描写であり、マット系のペーパーにしっとりとプリントしたことで作品性が引き上げられました。立ち並ぶ建物がシルエットで直線的な形であるのに対して、天を漂うおぼろげな雲と太陽は、なだらかな曲線とグラデーションを描いています。中間調のトーンを美しく描き出すことで、空を深く印象づけました。日常のなかの非日常を感じさせる「一日」です。
「子狐たち」
子ギツネたちは宙を舞っているかのように見え、まるでおとぎ話の世界に紛れ込んだような不思議な作品です。背景には現実感がありますが、トーンを落としてソフトフォーカスをかけることで、夢うつつのようなあいまいさを表現できました。また、絹のような衣装の質感もたいへん印象的です。画像処理により過度に印象を誇張すると、あざとい作品になりがちですが、この場合はたいへん効果的な処理といえます。それはとりもなおさず写されている状況そのものが強いからです。
「ハクモクレン」
ハクモクレンは満開とともにすぐに大開きとなり、花びらが茶色になります。撮影タイミングとしては満開、または直前がベストです。この作品では、この日のうちに満開となったのかもしれません。花の団子が開花するといったイメージですね。前景に大きく花を配置し、青空を背景にモノトーンの美しさを引き出しています。花のハイライト部分の質感をもう少し出せればベストでした。
「建屋の後ろ側」
1階の屋根の上に物干し台があり、かつてよく見かけた日本的家屋ですが、いまは懐かしい感じがします。さまざまな思いで暮らす生活の匂いがする作品となっており、高コントラストと強いシャープネスをかけた画像処理がその印象を深いものにしました。
「痕跡」
赤瀬川原平氏の路上観察学を思い起こさせる作品で、住処(すみか)の痕跡を写しています。都会では、建物と建物とが密着しそうに建てられたりして、「どのように外壁を作ったのだろう」と思われる建物もあります。片方がなくなってみるとその痕跡が残され、現代アートが出現しました。強い日差しで電線の影が無造作に入っているところも都会を象徴しています。
「西日の頃」
祭りの日、それは特別な日なのでしょう。子どもたちは屋根に登り、お父さんたちは土間の外にビーチパラソルを開いて酒盛りです。昔ながらのたたずまいとのミスマッチがなんともこっけいでかわいいですね。現実のおもしろさをずばり真正面からとらえたところに味が出ました。
「聳え立つ」
超高層のビルと日傘をさした女性の後ろ姿が、「夏」を十二分に感じさせています。直線を基調としたきりっとした構成要素のなかに浮かぶ雲が、なんとも穏やかでいいですね。また、広角ズームにありがちな湾曲収差もなく、単焦点レンズ並みの描写も気持ちがいいです。
「紫陽花」
アジサイは梅雨時の花で、しっとりとした趣が日本的情緒を感じさせます。それを粒状感のあるモノトーンで写し出すことによって、作者の想いを伝えられたのではないでしょうか。少し気になるのは被写界深度が浅すぎてピントの芯があいまいになったことです。
「只今撮影中」
サクラ咲くころ、みんなそろって境内からカメラを同じ方向に向けています。それも一列に並ぶように構え、服装もまちまちです。なんとも淡々とした光景が、とてもお祭りのひとコマとは思えないところがおもしろいですね。
「エントツの有る風景」
今回の作品ではスナップ的な要素と風景的な要素を絡ませ、時の流れを感じさせています。旧陸軍時代に建てられた巨大な煙突と平和な時代に暮らす穏やかな光景とが絶妙にオーバーラップしています。ドーム部分の質感がもう少し出るとベストです。
「走る」
松井さんはこれまでスナップ作品を応募されていましたが、今回はカーレースを流し撮りです。みごとに側面をリアルにとらえることができました。これだけシャープにとらえるには、カメラワークがぴたりとクルマのスピードに合わなくてはなりません。さらに、周辺の焼き込みを行うことでボディの質感を引き出すことができました。
「大地の顔」
踏切のレールにカメラを置いての構成が斬新です。斜めになった水平線から作者の心理描写が読み取れます。レールの隙間からは松ぼっくりが見えますが、これを少し覆い焼きすると効果的です。
「YaA!」
ノーファインダーでの撮影ですが、決まりましたね。ワンちゃんもなにやら殺気を感じとったのかもしれません。後ろ足を踏ん張ってカメラを不思議そうに見ており、なにか文句をいいたげです。お尻の毛が白飛びしていますが、ハイライトトーンを出したいところです。
「我慢」
観光遊覧の川船とのことですが、背景が遊覧とはいいがたいような風景で、しとしとと降る雨も相まって、まるで護送されているかのような重い空気が漂います。本来楽しいはずの情景が、このように変貌して見えるところが写真のおもしろさでもありますね。
「お父さん、頑張る!」
最初はわびしい単身赴任、もしくは年老いたひとり暮らしのドキュメンタリー写真だと思いました。そして「お父さん、頑張る!」のタイトルは一般的な「父親」に向けたものだと。でも、コメントを読んではじめてそらさんの本当のお父さんだと知りました。……いまも現役で働く70歳近い父。休日には買物に料理にと大活躍。そんな日々のため、さすがに疲れているようで、新聞を読みながら寝てしまうこともしばしばの父……。ここにはそらさんの父親に対する、愛情が写っています。僕はそれにころっとやられてしまいました。写真の技術じゃない。見せ方だって完全じゃない。そんなことより、自分の父親をこんなふうに、見つめている視線にぐっときました。写真は、なにかを伝えるために存在しているのです。目の前に見える現実の美しさ、すばらしさ、醜さ、残酷さなど……。父親のドキュメンタリーというより、それを写す人の、心持ちが写っていることがすごい。目で見えることを通して、撮影者の心が写る。この写真はそういう魅力があります。
「ピンクのステージ」
サクラの季節は過ぎたけど、ヤエザクラでしょうか、地面に散った濃いピンク色の花びらが印象に残ります。いやいやこの写真は、そんなに単純なものではありません。3枚の写真すべてにピンク色がキーワードとして韻を踏んでいます。看板のような絵に描かれたピンク色のバレエの衣装。2枚目の写真は遠くにピンク色の橋が見えます。最後に地面に散ったピンク色の上を疾走するピンク色の自転車。大柳さんはテクニシャン。カラー写真の撮り方を知っています。タイトルもいい。散ったサクラがキレイだというだけではなく、もうひと要素ピンク色を組み合わせたことで、音楽的なメッセージを感じました。
「アオサギ」
アオサギ四態。どの写真もクオリティが高くてすばらしい。組み方も文句ありません。このコンテストじゃなければグランプリだってとれるでしょう。ただ動物や、自然の写真はどんな風に撮ればよいのか、撮る人はそれぞれすぐにイメージできてしまうと思います。そのイメージからこの写真ははみ出していません。それが唯一の弱点です。でも、こういうテーマは、長く撮り続ければ本当の意味が出てきます。
「ひと休み」
公園で居眠りする飼い主と愛犬。愛犬は飼い主に似るといわれています。有名人の愛犬を特集したグラビアを見たことがあり、妙に納得させられました。さて、寝姿は? きっとよく似ているのでしょう。山田さんはこのテーマで撮り続けたら、そのうち本当におもしろい場面に遭遇するでしょう。ちょっと気になるのは、どれもアングルがいっしょで変化がないこと。上から下から、もっと引いたり、寄ったり変化をつけて撮るとおもしろいと思います。
「対パパラッチ」
ダンスパーティーでしょうか。場所はリトアニアということです。でも、観光写真とは違う、被写体との近さを感じます。ストロボ1灯ではなく、どれもライトが下から当たっています。きっとこの場所にこんな光源があるのでしょう。ストロボにしなかったことが成功しています。被写体との距離感がいろいろあるともっとよかったと思います。
「逃げる・追う」
丹羽さんお得意の、ネコのおっかけ写真。ネコと一体になってノーファインダー撮影。その撮影の様子を想像するだけで楽しくなります。偶然性にたよりがちですが、動感だけではなく、もっとドラマ性が出てくるともっと楽しい組写真になると思います。
「いにしえの街」
千葉県佐原の町は「小江戸佐原」として観光に力を入れているそうです。そんな町の、何気ない部分部分を切り取っています。全体を見せることなく、一部分を切り取ることで、その町の全体を想像することができます。この作品のように時間を選び、光と影を追いかけて撮ることで伝わることがあるのです。
「蜻蛉」
今月の優秀賞には、モノトーン調で、重々しい周囲の背景描写がまるで絵筆を使って描いているかのような幻想的な作品を選びました。渋くてなんとも言えない不思議な味わいが伝わってきます。ひっそりと咲く白く可憐なスイレンを心情的に捕らえ素晴らしい作品となりました。渋い色彩のトーンがグッと落ち着きを感じさせ、写真を引き締めてくれています。レンズの前に垂れ下がる木々の葉をぼかし入れ、うまく利用しています。ちなみにタイトルの「蜻蛉」は源氏物語の巻名のひとつということですが、タイトルは見る側のイメージを膨らませる言葉が理想です。ストレートに「源氏物語」と付けたほうが、多くの人にわかりやすい雅びなイメージになったと思います。
「息を合わせて1・2・ジャンプ」
2匹そろってみごとなジャンプ!! 訓練のたまものですね!! 呼吸がぴったりです。イルカたちがジャンプした瞬間、水飛沫が飛び散り、それを見上げる観客の歓声が聞こえてくるようです。イルカのブルーグレーのボディが艶やかで、質感がとてもよく出ています。そしてその色調が、バックの板壁や緩やかにカーブがかかった観客席の銀色の手すりのラインとうまくそろっていることで、空間の構成がピタリと決まり、画面に心地よい流れを作っています。また、前列の席に座っている、おそろいのピンクのタオルを持つ観客のひとりひとりの表情が、それぞれおもしろおかしく表現されています。偶然とはいえ、チャンスをうまくつかんだことと、タイミングのよさが抜群です。写真は偶然性をつかむことに価値があります。
「願い」
お江戸下町の「鳥越祭り」は活気のある大きなお祭りのひとつです。祭り好きの下町っ子は、神輿にかける意気込みがちがいます。鳥越神社の千貫神輿は、東京でも一・二を争う重さと大きさを誇っています。千貫とはおよそ4トンの重さで、担ぎ棒も太くて長く、たくさんの担ぎ手が必要になってきますが、1基しかない神輿の担ぎ棒に触るのは至難のワザらしいです。画面からあふれるように若い衆が千貫神輿を取り巻き、もんで練り歩く様子を俯瞰(ふかん)で撮影したことで、気迫と活気にあふれたものとなりました。神輿に携わる人々の人間模様は、見ていても楽しいものです。女性や外国人の担いでいる姿も見られますね。ベストな撮影ポジションを確保したことで迫力満点の作品になりました。
「まだ帰らないよ~」
ジャングルジムで無邪気に遊ぶ女の子を魚眼レンズ(フィッシュアイ)でデフォルメして撮影されました。女の子までの距離はほんの20~30cmと、迫ってねらった積極性とフットワークのよさで笑顔の表情をキャッチできました。ほっぺのエクボが魅力的で、元気はつらつなかわいいお嬢さんですね。カメラマンと親しい間柄のようで、自然で屈託のない笑顔を引き出すことに成功しています。毎日幼稚園の送迎をされているなんて、なんてステキなお父さん!! ジャングルジムの向こうに夕陽が当たり、そろそろおうちへ帰る時間かな? まだまだ遊びたりない様子でにっこりカメラにほほ笑みかけてくれました。
「花灯路にゃん」
京都東山・花灯路、趣と情緒がある催しですね。ライトアップされたばかりの五重塔や風でなびくのれん、暮れなずむ夕空、灯りのついたウィンドウ、店先で背中を丸めたネコなど、周囲の情景をバランスよく画面に収めた点を高く評価しました。黄昏時とはよくいったもので、いい時間を選んで撮影できました。自然光と人工光と、多種多様な光のハーモニーが画面のなかで活かされています。しかし、動くネコを夢中で追いかけるあまり、ほんの少しですが五重塔の屋根の先端や道端に置かれた灯籠が切れてしまいました。瞬間の確認作業を怠った結果です。フレーミングのあいまいさが今後の課題でしょう。
「夕暮れと綿毛のメルヘン」
逆光の夕陽を受けたタンポポの綿毛が淡く輝き、遠くに並ぶ木立が夕空のなかにシルエットとなって美しく映えています。タンポポの綿毛が季節感を出し、ムードを盛り上げてくれています。また、夕陽を受けて立ち並ぶ木々のシルエットは、小さいながらも強い存在感があります。カメラアングルを低い位置に決めて、逆光で輝く太陽が雲間に隠れたときをねらって撮影されていますが、露光差が大きかったため陰にあるタンポポの綿毛がアンダーぎみになっています。露出の決め方がむずかしい光景です。RAW現像からレタッチソフトを活用して画像処理をされているようですね。手前の綿毛の情景を、覆い焼きツールなどを使ってもう少し浮き上がらせてもよかったでしょう。
「僕にちょうだいー!」
黄色いくちばしを大きく開いて、親鳥がくわえるエサをねらう大きな幼鳥たち。ギャーギャーさえずる鳴き声が聞こえてくるようです。そろそろ巣立ちのころでしょうか? 生存競争たくましく、我先にと首を伸ばしてエサをねだる姿が必死でとてもかわいいです。快晴のため、虫をくわえた親鳥の顔が葉陰になった点がやや惜しかったですが、幼鳥の黄色いくちばしに日が当たってくっきりと仕上がり、写真にパワーを与えてくれました。ただ、どうも画質がよくありません。撮影は最高画質で行い、できればリサイズせずにデータを送ってください。画像の処理をするのであれば、覆い焼きツールで親鳥の表情を引き出すとよかったでしょう
「ストライプに惹かれて」
光と影を画面に入れ、奥行きのある構図と深みのある色調でまとめたすばらしい作品です。強い光の太陽を画面に受け入れ、その強い光に対して露出計が強く働いたことで、アンダーになった露出が画面を引き締めています。実際に目で見える光景と写真とは違っていることでしょうが、人間の目で見える光景を超え、カメラの目で魅せる写真に仕上がっています。ビニールハウスに夕陽が当たってストライプの陰影が強調されました。強烈な光の作り出した陰影と色調がインパクトのあるものとなりました。山あいの黒くつぶれたところをレタッチで引き出せたら、また写真に変化が期待できることでしょう。
「水上ラグビー」
作者の心意気が伝わってきます。豪快に水しぶきをあげてひとつのボールを追う男たちの戦いは凄まじい世界です。怯(ひる)まずゴールをねらう姿は、大雨だからこそ迫力が出ました。決定的瞬間とまではいかなくても、グラウンドを動き回る選手をしっかり観察し、敵の動きを読んで駆け引きする鋭い視線をよくとらえました。3度目の入賞、おめでとうございます。動きのあるスポーツ写真は刺激的。きっとこの先、スポーツ写真にはまってしまわれそうですね。あるいは、もうどっぷりはまっているのかしら? ちなみに、雨で濡れた機材は、撮影後のケアが欠かせません。カビを防ぐため乾いたタオルでふいたあと、広げてしっかり乾かすことが大切です。カメラバッグに入れっぱなしなどは絶対にいけません。
「どんな味?」
おしゃれな感覚とオリジナルな発想でまとめています。この場合、スプーンに映り込んだ花がシャープであったため、視線がスプーンにいき、助けられています。前面に配置した花のぼけ味とバランス、パープルとグレーの配色もよかったので、インパクトのあるものになりました。ただ、前ぼけは、うまく画面に取り入れないと写真では強く目線を奪います。「もっと広角レンズで絞り込んでみたらどうだろうだろうか?」「背景のグレーの分量はこれでよいだろうか?」と、スプーンに映り込んだ花と植木鉢の花の両方にピントが合う撮影ポジションを考え、角度を変えて撮影するなど、まだまだ撮影に工夫の余地があると見受けられます。完成度の高いレベルで新しい発見を追求し、まとめてほしいです。
「夜空の下で」
ストロボを使ってスローシンクロ撮影をされています。露出ですが、スローと決めたシャッター値と絞り値のバランスがたいへんよかったです。流れる雲の描写が独特の世界を作り出していて、写真表現に対する作者のセンスが光ります。ご自宅のお庭で撮影されたそうで、すばらしい撮影環境でうらやましい限りです。被写体は身近にけっこうあるものです。この世界はご自分のテーマのひとつとして、もっと撮り続けていただきたいと思います。写真は「写ればいいや」ではなく、質感と描写がものをいいます。この作品の場合は、画質がよければ高い描写力が引き出せたかと思います。まだまだお若いので、いろいろな分野の写真にチャレンジして撮影経験を重ね、写真表現を追求してください。
「はじめてのブランコ」
ん~んかわいい!! 満面の笑みで、はじめてのブランコにのるお子さん。楽しそうな表情がよかったです。運動神経がいい子に育つかも? 薄晴れの日であったため、お肌などの質感がよく出ています。スカーフのようなおしゃれなよだれかけですね。我が子の写真は後世に残る家族の宝ものですから、写す際のファッションも大切です。真っ赤なブランコに黄色の服がとてもよく映えていますが、お父さんはそんなかわいい我が子の表情しか追ってないように思えます。お子さんが画面のなかにいて、俗にいう日の丸構図の写真に仕上がりました。切れた足先はカットするか足先まで画面に入れてはいかがでしょうか? まずはフレーミングをマスターして、記念写真から一歩進んで、芸術写真をめざしましょう!
「廃れいくままに」
妖怪の館とまではいきませんが、少し不気味で歴史を感じさせるレトロな洋館、青空に冬木立の枝先が季節感と寂しさを演出してくれています。アーチの出窓などがなかなかステキなデザインの洋館で、さびついた窓枠、壁面に流れ落ちるさび汁、長年雨風に耐えてできた傷跡は独特の雰囲気を感じさせます。少し不安定になってしまった気もしますが、画面のなかに建物を大胆に構成してまとめることができました。建物を見上げて撮影する際は、ファインダーをのぞいた状態でカメラを左右に振って、画面のなかで建物が安定する位置で撮影することが重要です。この作品では、もう少し左にカメラを振ってあげると安定したでしょう。
「笑う子猫」
ドラキュラのように鋭い牙、小さなお顔に大きなそり上がった耳元、まるで妖怪のようなすごいお顔の子ネコちゃん!! なにかを企んでいるような、小悪魔的笑みを浮かべ、なんとも不気味で恐ろしい、決定的瞬間となりました!! 「笑う小猫」というタイトルもなんとも不思議なタイトルとなり、写真を盛り立てています。被写体の小ネコの強烈な表情が印象的でしたので、他の作品を押さえて佳作になりました。上位までいけなかったのは、小ネコの顔にばかり注目して周囲まで注意が行き届かず、両足や体が中途半端に切れて構図の一番大事なところが中途半端に終わってしまったからです。構図は落ち着いて決めること、瞬間にフレームの四隅を確認することが大切です。カメラアングルを変えるなどフットワークを軽くして、もっと動いてベストな撮影ポジションを追求してください。