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無情の山

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投稿日:2017/12/12

三浦 佐久子著「足尾万華鏡_銅山町を彩った暮らしと文化」を読んだ。
この本を手にとった理由は公害問題だけではなく足尾で生活していた人々の文化やエピソードが垣間見られると思ったのと、そのタイトルから銅山への賛辞を微妙に感じたから。
早速中を読み進んでいくと足尾銅山という日本初の公害問題を発生させた街を舞台に元鉱夫で陶工になった男の苦悩とその人生、花街で孤独に生きた芸者、古河の賄いシェフなど、最盛期には38000人もの人々が暮らした鉱山城下町の知られざるエピソードの数々は興味深く大変読み応えがあり、長年に渡る現地への取材により書き溜めた内容は資料としてとても内容が濃いものだった。とりわけ著者が時代を越えて惚れた男とまで言った銅山の創業者「古河市兵衛」への崇拝が凄い・・・。それまで休鉱山と化していた足尾の山を買取り、身銭を切りつつ新たなる鉱脈を探し当てたサクセスストーリーは英雄とでも言いたいのだろうか。終始律儀で実直だという人物像で描かれているのだ。しかし別の側面から見れば突如として肥沃な耕地を鉱毒に汚され先祖から受け継いできた大切な土地を奪われた旧松木村や谷中村の人々へスポットライトを当てることは最後までなかった。

本を読み終えて何かモヤモヤした気持ちのまま足尾に向かった。光と闇の光の部分は果たして本当に光だったのかを確かめたくて向かった先は華族や政府要人を招待し古河の迎賓館と呼ばれた掛水倶楽部。内部は撮影禁止のため写真は撮れなかったが国内初の私設電話や国産初のビリヤード台、豪華な調度品や美術品などが展示されていて当時の先端技術、富と名声、栄華を欲しいままにしていた事が伺える。
空虚なる洋館

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カメラ:
キヤノン EOS 5D Mark II
レンズ:
キヤノン EF50mm F1.4 USM
焦点距離:
50.0 mm
フラッシュ:
Off Did not fire
撮影モード:
Manual
シャッタースピード:
1/640秒
絞り数値:
F3.2
ISO感度:
200
ホワイトバランス:
Daylight


【足尾:旧鉱業所事務所跡】
火災により焼失した後はテニスコートとして使われていたが今では草ボーボーとなっている。
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カメラ:
キヤノン EOS 5D Mark II
焦点距離:
50.0 mm
フラッシュ:
Off Did not fire
撮影モード:
Manual
シャッタースピード:
1/640秒
絞り数値:
F3.2
ISO感度:
200
ホワイトバランス:
Daylight


【田元:銅山幹部住宅】
完全に廃墟と化した二軒長屋、これでも鉱夫ではなく技術者や役職者の住む少し高級な役宅だったようだ。
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カメラ:
キヤノン EOS 5D Mark II
焦点距離:
50.0 mm
フラッシュ:
Off Did not fire
撮影モード:
Manual
シャッタースピード:
1/250秒
絞り数値:
F6.3
ISO感度:
400
ホワイトバランス:
Daylight



ネタバレかもしれないがこの本の中で一番ショックをうけた部分がある。それはあとがきの中で、足尾の学校で社会の授業中にひとりの子供が田中正造が嫌いだと言ったエピソードが紹介されていた。何故田中正造が嫌いかというと「あの人は自分たちの郷土である足尾が公害の原点だと日本中に言いふらしたから嫌いだ」と。それを聞いた先生は何も答えられなかったという。まだ狭い世界で生きている子供の意見はわかる。しかしこれに答えられない先生って・・・。「かわいそうに子供達も地元に誇りが持てず小さな胸を痛めていたのね?」と書く筆者って・・・。 片方の立場からではわからないし語ってはいけない事もあると思っていたが「古河もまた時代に翻弄された犠牲者なのだ~~」的に仕上がった本の内容を思い出し、とても同調できるものではないと思った。

【通洞:選鉱場跡と鉄索塔】
樹々が枯れ、根を失って禿山と化した有越山の地表は無残に崩れ落ち、緑を回復しても尚、陽のあたるはずの無い鉱道を晒している。
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カメラ:
キヤノン EOS Kiss X5
焦点距離:
50.0 mm
フラッシュ:
Off Did not fire
撮影モード:
Manual
シャッタースピード:
1/400秒
絞り数値:
F5.6
ISO感度:
400
ホワイトバランス:
Daylight


近代国家に向かう時代の流れの世の中で金属政策は最優先の国策だった。しかし権力者が判断を誤ると犠牲になるのは誰か・・・。
善悪とかいう生易しい事ではない。この問題を看過できないのは今は遥かに破壊力を持った「原発」を抱えているという現実があるからだ。2017年3月毎日新聞の世論調査で反対55%賛成26%という結果にも関わらず政府は原発再稼働に突き進んでいる。川内原発、伊方原発と立て続けに再稼働。高浜原発は福井県知事が了承?そして柏崎刈羽原発が安全審査で合格?どうなっているの???

足尾を知ることはこれからの日本を知る事。福島の事故はまるで無かったかのような振舞いをするのは何故だ! 過去の過ちに学べない人間は本当に愚かだ。



【龍蔵寺:旧松木村の無縁石塔】
この背景にある精錬所の巨大煙突から出た煙害で砂礫の原と化した村の人々は先祖から受け継いだこの地を離れざるを得なかった。
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カメラ:
キヤノン EOS Kiss X5
焦点距離:
17.0 mm
フラッシュ:
Off Did not fire
撮影モード:
Manual
シャッタースピード:
1/400秒
絞り数値:
F5.6
ISO感度:
200
ホワイトバランス:
Daylight


【渡良瀬遊水地:旧谷中村遺跡共同墓地】
田中正造が村人とともに鉱毒の問題と戦った中心地。秋になるとその大地を悲しみの赤色に染めあげる。
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カメラ:
キヤノン EOS 5D Mark II
レンズ:
キヤノン EF16-35mm F4L IS USM
焦点距離:
16.0 mm
フラッシュ:
Off Did not fire
撮影モード:
Manual
シャッタースピード:
1/50秒
絞り数値:
F4.0
ISO感度:
3200
ホワイトバランス:
Daylight

コメント(1,000文字以内)

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seinin
幸龍号さん駄文を読んでいただいてありがとうございます。

明治政府は鉱毒の反対運動を起こすと被害にあった家はおろか村ごとぶっ壊しちゃったんですね。
震災のあと暫くの間は原発ゼロでも賄えていたのにそれでも老朽化したものまで強引に再稼働するのはいったい誰が儲かるからなんでしょうか。

2017年12月28日 12:26

幸龍号
やはり原発と相通じますね。足尾も原発も貧すれば鈍すると言うフレーズが身にしみます。福島の相双地域は貧しかったのです。何故原発は都心ではいけないのか?需要地に近いほうがローコストなのに。危ないからに他なりませんね。とても深い撮影記でした。

2017年12月28日 11:09

seinin
Fallen-Rosesさんありがとうございます。
この本については、ああいった書き方をしましたが別の視点を取り入れたうえでの再確認ができた事と、綿密な取材により足尾で生きた人々の一面がリアルに知る事ができたのでとても良かったと思っています。仰る通りこの問題キチンと向き合っていませんよね。こんなに無関心で良いのでしょうか、とても不安です。

2017年12月13日 10:05

Fallen-Roses
足尾万華鏡〜 私は知らなかったのでseininサンのくだりでの判断ですが、ちょっとショッキングですね…

時代背景や銅山のお陰で今日の繁栄があるのは否定しませんし、古河一族の偉業も否定しませんが、現代にも続く大きな傷跡を残したのも事実。 今でも足尾の紹介なども、公式では鉱毒問題はサラッと紹介されるに過ぎず、きちんと向き合っていない気がします。

日本人は”被”統治性が異常に高い民族と言われますが、それは現代社会でも変わらない様ですね?

2017年12月13日 08:46

seinin
とーせんさんありがとうございます。
原発はトイレの無いマンションと聞いたことがありますが、処理なんてできもしないのに何故やめないのですかね。何かあった時の破壊力が足尾の比ではないのは明白なので今の政府が日本の歴史上で最悪だという事になりますね。

2017年12月12日 11:40

とーせん
いつもながら、seininさんの真実に向き合おうとする真摯な姿勢と深い考察力に感服です。足尾、奥が深いですね...。原発政策はほんとわけがわかりません。後生にツケを回す結果になるのは目に見えているのに...。

2017年12月12日 10:39

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