流れ、躍動、時間の経過などを表現したいとき、シャッタースピードを操ると画面に「動感」を盛り込むことができる。写真の基本「絞り」と「シャッタースピード」のうち、前項では「絞り」について学んだが、ここではシャッタースピードとその効果を知ろう。
写真では、人間の視覚では意識できないシーンを写し止めることができる。とくにデジタル一眼レフカメラでは、1/4,000秒や1/8,000秒といった超高速シャッターが切れる機種も存在する。まるで時間を封じ込めたかのような表現や、決定的な瞬間を写真に残すことができるのである。
ただし、単純に速いシャッタースピードで被写体を止めてしまうことが正解とはいえない。高速シャッターを選択して被写体を止めて写すか、それとも意図的に遅いシャッタースピードを選択してぶれによって被写体の動きを見せるように撮影するかといった撮影者の表現が問われることになる。
下の作例のようにチョウを撮影する場合にも、はばたく羽根の動きを止めて瞬間をシャープに描写するのと、そのはばたきを表現するために羽をぶれさせるといった手法とがある。
重要なポイントは、同じ被写体でもシャッタースピードを変えて撮影するとイメージが大きく変化することだ。このことを考慮して、動きのある被写体は、シャッタースピードを変化させて自分の撮影意図に合った表現を追求してみるとよい。
作例は公園の水飲み場の蛇口から吹きあがる水流をとらえたものだ。シャッタースピード1/30秒で撮影した作例は、われわれが肉眼で見ている感じに近い。これをシャッタースピード1/500秒で撮影すると、写真では多少のぶれがあるものの、水の吹きあがる形がとらえられた。
さらにシャッタースピード1/2,500秒で撮影した写真になると、吹きあがる水の形をはっきりとらえている。同じように海の波の飛沫や滝の流れ、岩に砕け散る水なども、シャッタースピードを変化させると違った表情を見せてくれる。それを頭に入れて撮影したい。