デジカメエキスパート 虎の巻

テクニックを知る ― 写真撮影の基本的な考え方やよりよい写真を撮るためのテクニック

動きを表現する

流れ、躍動、時間の経過などを表現したいとき、シャッタースピードを操ると画面に「動感」を盛り込むことができる。写真の基本「絞り」と「シャッタースピード」のうち、前項では「絞り」について学んだが、ここではシャッタースピードとその効果を知ろう。

シャッタースピードを変えて動感を出す

写真では、人間の視覚では意識できないシーンを写し止めることができる。とくにデジタル一眼レフカメラでは、1/4,000秒や1/8,000秒といった超高速シャッターが切れる機種も存在する。まるで時間を封じ込めたかのような表現や、決定的な瞬間を写真に残すことができるのである。
ただし、単純に速いシャッタースピードで被写体を止めてしまうことが正解とはいえない。高速シャッターを選択して被写体を止めて写すか、それとも意図的に遅いシャッタースピードを選択してぶれによって被写体の動きを見せるように撮影するかといった撮影者の表現が問われることになる。
下の作例のようにチョウを撮影する場合にも、はばたく羽根の動きを止めて瞬間をシャープに描写するのと、そのはばたきを表現するために羽をぶれさせるといった手法とがある。
重要なポイントは、同じ被写体でもシャッタースピードを変えて撮影するとイメージが大きく変化することだ。このことを考慮して、動きのある被写体は、シャッタースピードを変化させて自分の撮影意図に合った表現を追求してみるとよい。

シャッタースピード1/160秒 静止画である写真で被写体の動きを表現する方法は、ケース・バイ・ケースで多種多様だ。作例では、シャッタースピードは1/160秒だが、蜜を吸っているチョウは羽を動かしていないので写真から動きを感じられないものになっている

シャッタースピード1/40秒 こちらの作例は、1/40秒。チョウの羽が少しぶれているので、動きを感じる。まさに飛びたとうとした瞬間のようなイメージになる。写真で動きを表現するには、動きを完全に止めることで強調する場合と、ぶれによってそれを表現できる場合があることを理解しておこう

シャッタースピード:1/30秒 シャッタースピード:1/30秒

シャッタースピード:1/500秒 シャッタースピード:1/500秒

シャッタースピード:1/2,500秒 シャッタースピード:1/2,500秒

作例は公園の水飲み場の蛇口から吹きあがる水流をとらえたものだ。シャッタースピード1/30秒で撮影した作例は、われわれが肉眼で見ている感じに近い。これをシャッタースピード1/500秒で撮影すると、写真では多少のぶれがあるものの、水の吹きあがる形がとらえられた。
さらにシャッタースピード1/2,500秒で撮影した写真になると、吹きあがる水の形をはっきりとらえている。同じように海の波の飛沫や滝の流れ、岩に砕け散る水なども、シャッタースピードを変化させると違った表情を見せてくれる。それを頭に入れて撮影したい。

シャッタースピード:1秒 シャッタースピード:1秒
滝を撮影する場合には、その流れを止めて撮影する場合と水の流れを強調して撮影する場合がある。作例では岩肌を滑るように流れる滝を表現したかったので、スローシャッターを選択して水の動きを強調して撮影した

シャッタースピード:1/125秒 シャッタースピード:1/125秒
渓谷で撮影をしていると、突然夕立が降りはじめた。大粒の雨が渓谷を流れる川の水面を叩き、飛沫をあげていた。水面から跳ねあがる雨水のリズムがおもしろく見えたので、その印象に近いシャッタースピード1/125秒で撮影した

シャッタースピード:1/250秒 シャッタースピード:1/250秒
国旗をリズムに合わせて空高く放りあげ、落下してくる旗をつかみとるスイスの伝統行事。速いシャッタースピードを選択して空中で旗を静止させた。動きを止めることによって動感が強調されているのがわかるだろう

シャッタースピード:1/500秒 シャッタースピード:1/500秒
スイスで登山電車のなかからマッターホルンを眺めていると、下から雲がわきあがってきた。動き続ける電車とわきあがってくる雲、もうすぐこの山は雲に覆われるのだろうか? 不安な動感を感じながら撮影した。この動感を表現するのに高速シャッターを選択したが、その効果を感じられるだろうか

POINT 被写体の動きを表現するポイント

  1. シャッター速度優先AEモードを選択して、シャッタースピードを変化させて撮影する
  2. ISO感度の設定を変更して、撮影意図を反映できるシャッタースピードに調整する
  3. 意図的にぶらす場合にも必要な部分には確実にピントを合わせる
  4. スローシャッターで被写体ぶれを表現する場合は、三脚やレリーズを使って手ぶれを防ぐ