デジカメエキスパート 虎の巻

テクニックを知る ― 写真撮影の基本的な考え方やよりよい写真を撮るためのテクニック

上級テクニック(2)光跡を操る

シャッタースピードや絞りの効果を使い分けることができるようになったら、もうワンステップ上の表現にも挑戦したい。日常的に使うものではないけれど、知っておくと写真表現にひねりが加えられるテクニックを学ぼう。

光跡をとらえる

繰り返しになるが、カメラは光を記録する道具であり、写真は光による表現である。
つまり、写真のなかで光をどのように見せるかが表現の差になり、工夫のしどころということだ。
太陽から注ぐ日差しのライン、木々の隙間から落ちる木漏れ日、水や葉の反射が見せるきらめき、スポーツなど人間の激しい動きが見せる残像、イルミネーションなどの人工光が残す色彩、写真ならではの見せ方ができる対象は、多種多様にある。ここでは、その数例を紹介していこう。

背景を流す 背景を流す
これは「流し撮り」という手法だ。主題はシャープにとらえられていても、背景は流れている。この流れた背景が、写真のスピード感につながっている。流し撮りは、スポーツ写真によく使われる手法だ。被写体の動きに合わせて、シャッターを切りながらカメラを振ることで、背景が流れる。被写体の動きの速さにもよるが、ある程度スローシャッターでないと、その効果はうまく現れない。いろいろなシーンでテスト撮影してみるとよい。カメラを振る練習や経験も必要だ

光のぼけを見せる 光のぼけを見せる
深い森のなか、一輪の野草をとらえた。ひそかに咲く可憐な雰囲気を表現するため、望遠レンズで背景を大きくぼかし、野草の背景に黒い部分がくるように撮影。野草は浮き立ち、背景の明るい部分のぼけによって、木漏れ日の印象が強くなった

露光間ズーミング 露光間ズーミング
これは曇天の昼間に、大木を撮影したもの。露光中にズームレンズを、望遠側から広角側へ回転させて撮った。画面の中心から外へ広がるような画面効果によって、画面に動きが出る。このような手法を「露光間ズーミング」といい、夜景などでよく使われる。昼間にこの露光間ズーミングが用いられにくいのは、ある程度の露光時間が必要だからだ。この場合もNDフィルターを使用している。表現意図に応じて、広角側から望遠側にズーミングして撮る場合もある

光の筋を見せる 光の筋を見せる
動いている被写体の光跡をとらえる場合、長時間露光になるので、三脚を使ってカメラをしっかり固定すること。被写体の動く方向をしっかり見極め、それに合った焦点距離のレンズを選び、フレーミングすること。撮影する前に、仕上がりのイメージをもって、状況の予測をしっかりしておかないと思うようにいかない。なお、長時間露光では、ノイズが発生することがあるので、ノイズリダクション機能を使うなどの対応が望ましい

先幕シンクロと後幕シンクロ

ストロボには、設定の切り替えによって、シャッターが開いてから発光する機能と、シャッターが閉じる前に発光する機能を備えているものがある。前者を「先幕シンクロ」、後者を「後幕シンクロ」という。
たとえば、2秒のシャッタースピードで先幕シンクロしたとすると、シャッターが開くと同時にストロボが発光するので、被写体が動いた方向に、つまり被写体の前方に像が流れて写る。後幕シンクロの場合は、逆に被写体の後方に像が流れるので、前進するという動きを表現するのに適した写真になる。デジタル一眼レフカメラでは、内蔵ストロボにもこの機能がついている機種が多い。

後幕シンクロで撮影

先幕シンクロで撮影

左は後幕シンクロ、右は先幕シンクロで撮影。光跡が被写体の後ろに流れる後幕シンクロのほうが、魚の動きが表せる

Note 長時間露光と「ノイズリダクション」

デジタルカメラによっては長時間露光時のノイズリダクション機能がついている。この機能は、長時間露光時に発生するスターノイズを低減する機能だ。一般的に、長時間露光時のノイズリダクションは撮影時の情報からノイズを減算処理するため、撮影時の露光時間と同じだけの時間がかかる。すなわち、長時間露光時のノイズリダクションをオンにして5分のシャッタースピードで撮影すると次の撮影までは10分の時間が必要になる。