デジカメエキスパート 虎の巻

メカニズムを知る ― デジタルカメラやレンズのメカニズム、デジタル画像の知識を深める

カラースペース

デジタルカメラで撮影された写真は、機器によって再現される方法がそれぞれ異なるため、色がバラバラになってしまうことがある。これを回避するために使われるのが、基準の定義、カラースペース(色空間)だ。色空間を理解して、正しい発色の写真を手に入れよう。

カラースペースの概念

CIE XYZ図人間の目で認識できる色すべてを現在のデジタルカメラで記録することはできない。また、デジタルカメラやパソコンのディスプレイ、プリンターでの印刷など、使用する機器によって再現できる色域がすべて異なる。このため、色の基準を定義しないと、カメラやパソコンなど、使用する機器によって色がバラバラになってしまうのである。これを統一したものが「カラースペース(色空間)」である。
色空間は、目で見ることのできる色のうち、実際に使用する色域を定義している。デジタルカメラで撮影したデジタル画像は、すべて数値で色が表現され、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)という光の三原色を用いてすべての色を表現している。光が光に加えられて色を作るので、これを「加法混色」という。たとえば、RGBの数値が255.0.0ならば、数値上では完全な赤ということになる。ところが、この赤がどのような赤なのかは出力機器によって異なってしまう。つまり、このままでは最終的にどのような赤になるのかがわからないということなのだ。しかし、色空間をきちんと運用すれば、どの機器を使っても同じ赤が再現できる。ただし、厳密にはディスプレイやプリンターが正しい発色となるよう測色器や専用のソフトウェアを使ってキャリブレーションやカラーマッチングをする必要がある。これらを「カラーマネジメントシステム(CMS)」と呼び、機器を変えて色を確認する際には、その都度この作業を行う必要がある。また、「ICCプロファイル」というタグを画像データに付加することで、正確な色再現が可能となるのである。
右の図は「CIE XYZ図」と呼ばれるもので、色空間をわかりやすく表現するためのものだ。本来はXYZ軸からなる立体図をここでは平面的に表している。ここに表される色は人間の目で認識できる色を表し、緑の線内はICCプロファイルのAdobe RGB、赤の線内はsRGBのカラースペースを表している。なお、 Adobe RGBと sRGBについては、このあとの「sRGBとAdobe RGB」を参考にしてほしい。

sRGBとAdobe RGB

ほとんどのデジタル一眼レフカメラは、「sRGB」と「Adobe RGB」という2種類の色空間を選べるようになっている。sRGBは国際電気標準会議(IEC)が策定した色空間で、パソコンのディスプレイで再現できる色域を基準とし、デジタルカメラの基本となっている。パソコンでもそのまま表示でき、プリンターもsRGBが主流。これに対し、Adobe RGBはAdobe Systems社が提唱する色空間で、sRGBに比べエメラルドグリーンやシアンなどの色域が広い。最新のインクジェットプリンターは、Adobe RGBに対応するものも出てきている。また、商業印刷ではRGBからCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックのカラーモデル。これらのインキは混色する際特定の色を吸収して光を減らして着色するため、「減法混色」と呼ばれる)への変換時に色ずれが起きにくいことから、Adobe RGBでの撮影が望ましいとされている。Adobe RGBではパソコンのディスプレイで表示できない色もあるため、実際にAdobe RGBに対応したプリンターで印刷してみないと正確な色がわからない。撮影者の好みで使い分けているのが実情だ。

sRGB sRGB
パソコンのディスプレイに合わせた色域を持つsRGBは、現在もっとも一般的に使われているカラースペースだ。プリンターなど周辺機器との親和性にも優れている

Adobe RGB Adobe RGB
sRGBよりも広い色域を持つAdobe RGBは、エメラルドグリーンの海や、水中写真など特殊なシーンで真価を発揮する。ただし、専門的な知識も必要であり、上級者向けのカラースペースといえる

Note Wide Gamut RGB

色空間といえばsRGBとAdobe RGBの2種類が一般的だが、このほかにも複数の色空間が存在する。そのなかでも最近注目されているのが、「Wide Gamut RGB(ワイド ガマットRGB)と呼ばれるものだ。これはAdobe RGBよりもさらに広い色域で記録できるもので、キヤノンのRAW 現像ソフト「Digital Photo Professional(DPP)」など、RAWファイルからWide Gamut RGBの色空間を指定できるものも登場している。とはいえ、まだまだ一般的な色空間とはいえず、今後カメラ本体でWide Gamut RGBの色空間が指定できるようになるなどすれば、主流となる可能性もある。また、Wide Gamut RGBの色域を再現できるプリンターはまだ開発されておらず、現時点では将来的な展望を含めて策定された規格と考えればいいだろう。ただし、一部のプロ写真家は、より広い色空間であるWide Gamut RGBで現像し、Adobe RGBに変換するという方法を行っている。

 


↑ページの先頭へ