写真家・並木隆が教えるキヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック

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写真家・並木隆が教えるキヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック

執筆・撮影:並木隆/協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」のおもな仕様
画角(水平・垂直・対角線) 74°~29°・53°~19°30'・84°~34°
レンズ構成 12群15枚
絞り羽根枚数 9枚
最小絞り 22
最短撮影距離 0.38m、マクロ切り替え時0.2m
最大撮影倍率 0.21倍(70mm時)、0.7倍(マクロ切り替え時)
フィルター径 77mm
最大径×長さ φ83.4mm×93mm
質量 約600g
»製品情報(キヤノンマーケティングジャパンのページを開きます)
並木 隆並木 隆(なみき たかし)

1971年東京生まれ。高校生時代『月刊カメラマン』を通じて丸林正則氏と出会い、以降写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。花や自然をモチーフに各種雑誌誌面での作品発表。キヤノンEOS学園講師。日本写真家協会、日本自然科学写真協会会員。

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EF 90 million EFレンズは累計生産本数9000万本を達成(2013年5月現在)

軽量でコンパクトでありながら、ズーム全域、画面全域で高画質を実現した標準ズームレンズとして注目のキヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」。作品作りの強力な味方になってくれそうなこのレンズについて、写真家・並木隆が多数の作例とともにプロの使いこなしテクニックを伝授します。

これを使いこなせれば表現が広がる!!
写真の基礎を覚えられるズームレンズ

ズーム全域F4の使いやすい標準ズーム
撮影風景 開放F値・F4通しで広角から標準・中望遠までカバーするLレンズ。光学系に非球面レンズ2枚とUDレンズ2枚を採用。全ズーム域・画面全域での高画質化を実現している。
ハイブリッドIS搭載でマクロモードも対応
撮影風景 角度ブレ補正とシフトブレ補正に対応した手ブレ補正機構「ハイブリッドIS」を搭載。また、切り替えレバーの操作で最短撮影距離0.2mのマクロ撮影モードに移行できる。

 キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」は、開放F値をF4とすることで小型・軽量を実現した標準系のズームレンズです。フィルター径が77mmと大口径なため、外観からはヘビー級の重さをイメージしてしまいますが、手に取ると予想以上の軽量さに驚かされます。また、ズーミングしても荷重バランスにほとんど変化がないので、どの焦点距離域で撮影してもホールディングバランスが崩れず、手持ち撮影時のフィーリングは抜群です。

 また、最大撮影倍率0.7倍のマクロ機構は倍率だけでなく写りも本格的で、最短撮影距離付近の解像感の高さに加え、非常に滑らかで美しいボケ味を得られます。最大撮影倍率時はワーキングディスタンスが3cmとやや短いですが、それを除けば十分満足できるレベルに仕上がっています。このマクロ機構に合わせて通常の手ブレ補正機構に加え、高倍率撮影時の手ブレ補正に効果を発揮するシフト方向のブレ補正を加えた、「EF100mm F2.8 L マクロ IS USM」でおなじみのハイブリッドISを搭載。手持ちでの撮影領域がさらに広がっています。

 小型・軽量・手ブレ補正機構付きという機能からすると、手持ちで気軽に撮影したいユーザー向きのレンズといえるでしょう。本格的なマクロ機構もプラスされているので、遠くを切り取るといった長い焦点距離を必要とする被写体以外はほとんどこなせるオールマイティなレンズです。

 APS-Cサイズセンサー搭載のカメラにも装着できますが、開放からでも安定した画質を得られるレンズなので、ぜひフルサイズセンサー搭載のEOS 5D Mark IIIやより軽量なEOS 6Dとの組み合わせで使ってもらいたいですね。

 「EF24-70mm F4L IS USM」は広角から中望遠までカバーするズームレンズです。中でも、広角域の24mmは、超広角を使いこなすための練習に最適な焦点距離。これで遠近感が出せるようにならなければ、超広角の特徴を活かすことはできません。また、望遠域の70mmはボケ味をコントロールしてこそ持ち味が出せる焦点距離。このレンズのカバーする焦点距離域で共通していることは、自分の足で描写を変えなければ写真が変わらない、写真の基礎を覚えることのできるズームレンズなんですね。0.38mの最短撮影距離などスペックアップしている部分や本格的なマクロ機構、それに対応したハイブリッドISの搭載により、被写体はもちろん、手持ちで撮影できる領域だけでなく、表現方法まで広げてくれたレンズといえるでしょう。

 では、このレンズについて特徴的なシーンごとに作例を交えて使いこなしテクニックを学んでいきましょう。

キヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック
広角域の使いこなし編

広角24mmのパースペクティブを操る

 広角域は広い画角が特徴の焦点距離域ですが、単にレンズを向けただけでは被写体やその周囲といった広い範囲が写るだけで、面白みに欠けた作品になってしまいます。高さのあるものはより高く、奥行きのあるものはより奥行きがあるように、遠近感を強調することが広角レンズの特徴を最大限に活かすポイントになります。

 遠近感とは、手前の被写体が大きく、遠くの被写体が小さく写ることで強調されます。単にレンズを向けただけでは手前の被写体の入り具合が少ないから遠近感が強調されないんですね。

 手前というと目の前にある被写体をイメージすると思いますが違います。室内であれば撮影ポジションを基準に天井や床、両脇の壁など撮影位置の真上や真下、真横にあるものをできるだけ取り込むということです。 

 その方法は、真横の壁をできるだけ入れるなら張りつくくらい壁に近づく、天井を入れるならできるだけローアングルに、床を入れるならできるだけハイアングルにというように、撮影者自身が極端なアングルでカメラを構えることで初めて実現するのです。遠近感の強調はアングルの大きな変化がなければ生まれない表現方法なので、ぜひ実践してみましょう。

 また、広角域のもうひとつの特徴は背景の写る範囲が広いこと。背景が広く写ることで被写体の印象だけでなく、周囲の状況や雰囲気も取り込むことができます。焦点距離が長くなるほど背景の写る範囲は狭くなってしまうので、広角レンズならではの効果といえます。しかし、広角レンズでは被写体が小さくしか写らないから主題を明確にできない、周囲を写そうとすると平凡な写真になってしまう……と思っていませんか? それは、被写体の大きさをズーミングで調整しているからですね。被写体の大きさはズーミングによる焦点距離の変化で変えるものではなく、撮影者が被写体に近づいて大きくしたり、離れて小さくしたりするものなのです。この基本動作ができるようになると、背景をたくさん取り込みつつ、被写体を大きく捉えた、広角レンズならではの作品ができあがりますし、遠近感の強調にも繋がります。

 「EF24-70mm F4L IS USM」は最短撮影距離が0.38mと単焦点レンズほどではありませんが、ズームとしてはかなり被写体に近づいて撮影することが可能です。広角域は広い画角だけではなく、この最短撮影距離の短さが遠近感を左右する大きなポイントなのです。

 また、広角レンズは被写界深度が深い、画面全体にピントが合うというイメージが定着していると思いますが、開放絞りで最短撮影距離まで近づくと、広角レンズでも主題の被写体が浮かび上がる程度のボケ味を得ることができるのです。レンズというとカバーする焦点距離域ばかり気になってしまうところですが、最短撮影距離も重要です。最短撮影距離が短いことで撮影できる作品のバリエーションは大きく広がるんですよ。

キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」実写画像

画像をクリックすると等倍サイズの画像(9~16.6MB)を開きます。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(24mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F11/シャッタースピード:1/30秒/露出補正:-0.7EV/ISO感度:3200/WB:太陽光/RAW

プロの技1
手ブレ補正とライブビューで自由なアングル
ローアングルで下からレンズを向け、広角レンズならではの広い画角を活かすことで社の迫力を演出。手ブレ補正のおかげで必要最低限のISO感度アップで手持ち撮影が行えました。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(24mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F5.6/シャッタースピード:1/80秒/露出補正:+1.3EV/ISO感度:100/WB:太陽光/RAW

プロの技2
周辺光量を意識しよう
被写体に注目を集めるための効果として周辺光量を意識しましょう。「Digital Photo Professional」でRAW現像時にレンズ収差補正から周辺光量を選べば明るくしたり暗くしたりと細かく調整することもできます。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(26mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/40秒/露出補正:±0EV/ISO感度:320/WB:太陽光/RAW

プロの技3
24mm広角を使い切る!
井戸の桶を吊しているロープに沿って真上にレンズを向け、下のロープを太く、上に行くほど細く見せることで、見た目以上に高さを演出しました。広角レンズだからこそ生まれた遠近感ですね。

キヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック
標準域の使いこなし編

絞り値と撮影距離を意識してボケを操る

 標準域は広角域で得られるような極端な遠近感はありませんし、望遠域で得られる圧縮感もあまり感じられません。しかし、広角域にも望遠域にもない、肉眼で見る像に近い距離感を得られるのが特徴です。

 また、絞り値による被写界深度の変化、描写の変化が大きな焦点距離域なので、画面の一部分以外をぼかしたければ開放絞りに、画面全体に合わせたければ最小絞りにすることで、同じ被写体でも全く違う雰囲気の作品に仕上げることができる万能レンズなのです。

 しかし、単焦点レンズのように明るい開放F値があるわけではないので、大きなボケ味を得るには開放絞り値以外にひと工夫必要になります。被写界深度が浅くなることで大きなボケ味を得られますが、その効果は絞り値を開放にする以外に、最短撮影距離付近ほど、被写体に近づいてピントを合わせるほど大きくなります。つまり、広角域の使いこなしでも述べた被写体に近づく動きをすることで、より大きなボケ味を得ることができるんですね。

 大きなボケ味は被写体を浮かび上がらせることができますが、必ずしもそれが最良というわけではありません。ボケすぎた背景は周囲の状況や雰囲気を消してしまいます。もう少しボケ味を小さくして雰囲気を演出したいと思ったら、絞り込んでみましょう。このとき、どのくらい絞り込めばいいかはボケ味の好みで変わってくるので、答えを教えてもらうのではなく、ご自身で1段ずつでも2段ずつでも変えてみながら複数撮影し、ボケ味の変化を確認しましょう。ときにはF16なんて数値を使うこともありますが、最短撮影距離付近でピントを合わせたのなら、背景まで被写界深度が深くなるようなことはありません。失敗を恐れずにダメもとで絞り値を変えることで、ボケ味のコントロールをマスターすることができますよ。

 逆に被写体からやや離れてピント合わせを行うと被写界深度が深くなるので、絞り込んで画面全体にピントをしっかり合わせることで、広角レンズのような遠近感のある描写ではなく、見た目に近い距離感の描写が可能になります。

キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」実写画像

画像をクリックすると等倍サイズの画像(9.2~13.4MB)を開きます。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(50mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F8/シャッタースピード:1/50秒/露出補正:-0.3EV/ISO感度:500/WB:太陽光/RAW

プロの技4
絞りにこだわってボケを探求
飾り窓の模様と、そこから見える白い建物のコントラストがとても美しく感じました。開放では飾り窓の模様がボケすぎて見えなかったので、絞り値を1段ずつ変えながら好みのボケ味を探っていきました。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(50mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/80秒/露出補正:+0.7EV/ISO感度:100/WB:太陽光/RAW

プロの技5
映り込みや透明感を意識
古いバスのリアガラスをのぞき込むと、木々とくもり空の映り込みでタイムスリップしたような錯覚に。そのままでは映り込みだけになってしまうので、わざとカメラを映り込ませてバスの中をちょっとだけ入れてみました。

キヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック
望遠域の使いこなし編

望遠70mmはフットワークを活かして操る

 望遠域といっても70mmという焦点距離では一部分を切り取ることが難しいと、物足りなさを感じていませんか? 確かに近づくことのできない被写体を切り取りたい場合はそう感じてしまうかもしれませんが、広角域や標準域での使いこなしにあるように、被写体に近づいたり離れたりといった動作ができる被写体であれば、一部分を切り取ることなんて撮影者が動けばいいだけですから、全く問題にはなりません。また、標準域&最短撮影距離で被写体に近づいたけれどもう少し大きなボケ味を得たいと思ったときや、人物のように被写体が大きい場合は被写体から離れないと画面の中に収めることができないので大きなボケ味を得られにくいですが、数字上はたった20mmと少ない変化でも標準域よりは確実に大きなボケ味を得ることができます。

 逆に望遠域の不得意とする部分は画面全体にピントを合わせること。壁面を切り取るというような距離差のない被写体や、画面の中にある被写体がすべて遠くにある被写体だけで構成している遠景であれば可能ですが、広角域で遠近感を出すような手前から奥まで取り込むと、絞り込んでも画面全体にピントが合わず中途半端なボケ味が生まれ逆にごちゃごちゃした印象になってしまいます。このような場合には、全体にピントを合わせようとはしないことがポイントです。

 望遠域はボケ味を活かして撮影することをメインにし、絞り値の設定はボケ味のコントロールに徹しましょう。また、壁面のように距離差のない被写体でも凹凸があるような場合には、中途半端なボケ味を作らないようF11くらいまで絞り込んで、画面全体にしっかりピントを合わせるメリハリが作品の出来を大きく左右します。

キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」実写画像

画像をクリックすると等倍サイズの画像(9.4~11.5MB)を開きます。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(70mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/60秒/露出補正:-0.7EV/ISO感度:100/WB:太陽光/RAW

プロの技6
望遠もアングルにこだわろう
水たまりの中に映り込んだ日本家屋。この世界は地面スレスレのアングルでなければ見ることができません。開放絞りで前後を大きくぼかすことで水たまりの雰囲気を感じさせないようにしました。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(70mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/80秒/露出補正:+1.0EV/ISO感度:640/WB:太陽光/RAW

プロの技7
自分だけのフレーミングを探そう
整然と並んでいる日本酒のビンを逆光で見たら、こんなに美しい透明感に出会うことができました。あえてラベルと先端を切り取ることで、緩やかなラインとビンの持つ透明感だけを強調しました。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(70mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/80秒/露出補正:±0EV/ISO感度:640/WB:太陽光/RAW

プロの技8
前ボケを使って雰囲気を演出
格子の隙間からちょっとのぞき見……という雰囲気です。人はいませんが、生活感が感じられるよう格子の間からお茶のセットが見える位置で、それ以外の部分が格子の前ボケで隠れるように格子に寄りながら撮影しました。

キヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック
マクロモードの使いこなし編

最大倍率0.7倍のマクロはAFで操る

 レンズ脇にあるマクロ切り替えレバーをスライドしながら、70mm以上の望遠域に焦点距離を動かすようにさらにズームリングを回すと、オレンジ色のラインが表示してあるマクロモードに入り、最大撮影倍率0.7倍というマクロレンズに迫る高倍率撮影が可能になります。

 しかし、最大撮影倍率での最短撮影距離は0.2m、ワーキングディスタンス(レンズの前面から被写体までの距離)が3cmと短いため、フードを装着した状態で撮影すると被写体がフードの中に入って影になってしまうので、マクロモード時はフードを外して撮影しましょう。また、テーブルの上に置いた小さい小物などは、近づいてピントを合わせる前にテーブルにレンズの先端が当たってしまうことがあるので注意しましょう。そのような場合はマクロモードにせず、70mm側の最短撮影距離で撮影した方がワーキングディスタンスが稼げるので、アングルの自由度が高くなります。

 マクロレンズのピントリングは通常のレンズと同じようにピントを合わせる以外に、撮影倍率を変えるために回し、ピントの微調整を身体の前後移動で行うという撮影方法を行うことが多いのですが、このレンズのマクロモードはズームリングの回転によって撮影倍率を変え、ピントリングでピントを調整するふたつの動作が必要になるので、ピント合わせはAFを基本にしてカメラに任せ、ズームリングを回して被写体の大きさを変えるのが一番楽な撮影方法です。もちろん、最大撮影倍率0.7倍を実現するなら、ズームリングを目一杯右側に回し、MFで最短撮影距離にしてピントが合うまでカメラを被写体に近づけていきましょう。

 なお、レンズの距離目盛に表記されている黄色い線は、マクロモード撮影のときに画質劣化が少ないフォーカス範囲の目安です。この黄色い線の範囲内でピントを合わせることで、このレンズの高い描写性能を引き出して撮影できるので覚えておいてください。

 マクロモードではワーキングディスタンスが短いだけでなく、一般のレンズにエクステンションチューブを装着したように、ピントの合う範囲が無限遠には合わず最短撮影距離付近に制限されてしまうため、手前の被写体を大きくぼかすような前ボケを使った撮影はなかなかできません。できたとしてもレンズの前面に前ボケにする花がくっついて黒く汚いボケになってしまいます。そんなときはマクロモードではなく70mm側で撮影しましょう。

キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」実写画像

画像をクリックすると等倍サイズの画像(10.2~13.7MB)を開きます。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(70mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/60秒/露出補正:+1.0EV/ISO感度:12800/WB:太陽光/RAW

プロの技9
最高の前ボケをズームで作る
たくさんあるボタンの雰囲気を出したかったので、1列目のボタンを前ボケにしました。最大撮影倍率では前ボケが作りにくいので、ズームリングで倍率を調整しながら撮影しています。

作例 カメラ:キヤノンEOS 6D/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(70mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F4/シャッタースピード:1/60秒/露出補正:+0.7EV/ISO感度:2500/WB:太陽光/RAW

プロの技10
明暗差を意識していますか?
ピントを合わせた花心部分は、ズームのマクロ機構とは思えないほどの解像感。柔らかな印象に仕上がったのは明暗差の少ない日陰で撮影したのと、ボケ味の滑らかさのおかげ。

キヤノンEF24-70mm F4L IS USM “プロはこう使う! ” 活用テクニック
逆光・低照度の使いこなし編

ハイブリッドISはマクロ以外のシーンでも有効

 このレンズには、通常の上下左右光軸方向の回転ブレを補正する手ブレ補正機構に加え、マクロ領域で手ブレ補正効果の高い水平垂直方向も補正するハイブリッドISが搭載されています。マクロモード時はもちろん、特に手ブレしやすい望遠域でも手ブレすることなく撮影が可能ですし、望遠域でも1/8秒やそれ以下のスローシャッターによる動感撮影を手持ちで行うことが可能です。ただし、手ブレに関しては個人差がありますし、同一人物でも構え方によって差が生まれます。必ず手ブレが防げるわけではないので、壁などに肘をついたり身体をあずけたりしてできるだけ支点を増やし、安定した構えを作った上で撮影しましょう。また、手ブレしてしまったからと落ち込むのではなく、撮影する度に背面液晶で撮影した画像を確認し、手ブレのない撮影ができるまで何度も撮影することが大切です。もちろん、三脚を使えば手ブレの問題は解決できますが、手持ち撮影をすれば、手軽さだけでなく、ライブビューと併用してアングルの自由度を増やすことで、これまで以上に作品のバリエーションが広がりますよ。

キヤノン「EF24-70mm F4L IS USM」実写画像

画像をクリックすると等倍サイズの画像(13.3~13.3MB)を開きます。

作例 カメラ:キヤノンEOS 5D Mark III/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(24mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F11/シャッタースピード:1/40秒/露出補正:+1.0EV/ISO感度:2500/WB:太陽光/RAW

プロの技11
厳しい条件でも表現にこだわる
ローアングルで天井をたくさん取り込むことで遠近感を最大限に出しています。光の少ない条件ながら全体にピントを合わせたかったので絞り込みましたが、必要最低限のISO感度アップと手ブレ補正のおかげで手ブレすることなく撮影できました。

作例 カメラ:キヤノンEOS 6D/レンズ:キヤノンEF24-70mm F4L IS USM(24mmで使用)/露出モード:絞り優先AE/絞り:F16/シャッタースピード:1/400秒/露出補正:+1.0EV/ISO感度:100/WB:太陽光/RAW

プロの技12
太陽を入れるときは広角で絞ってみる
太陽を直接入れるなら、広角側で絞り込んで撮影してみよう。太陽の周囲に光条ができ、ダイヤモンドのように輝く。この輝きをより強調したいときは、露出をアンダー目にして周囲を暗くするのもひとつのテクニックです。

まとめ 寄れる常用ズーム「EF24-70mm F4L IS USM」で表現を広げよう

撮影風景 本格的なマクロモードも搭載した標準域ズームレンズの出番はかなり多く、常用レンズの1本になっている

 筆者はこれまで、標準系ズームレンズがカバーする焦点距離域は単焦点レンズを使うことがほとんどでした。一番の理由は、ズームレンズは最短撮影距離が長く、もっと寄りたいなというときに寄れないからです。キヤノンには「EF24-70mm F4L IS USM」のほかに、開放F値以外ほぼ同スペックの「EF24-70mm F2.8L II USM」がありますが、こちらは手ブレ補正がなく比較的重いので三脚使用で腰を据えて撮影したくなるタイプ。しかし、「EF24-70mm F4L IS USM」の登場で、作品撮影はもちろん、旅行や日常のスナップなど様々なシチュエーションで使うようになり、今ではマクロレンズに並んですっかり常用レンズとなっています。皆さんにも、レンズで広がる新しい表現の世界をぜひ体感してもらえればと思います。

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