エプソンPX-5Vとアート紙が実現する 人に見せたくなるプリント作品作り

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エプソンPX-5Vとアート紙が実現する 人に見せたくなるプリント作品作り

デジタルカメラが普及し、撮影を楽しんでいる人がどんどん増えている。しかし、撮影した写真をプリントして楽しんでいる人はまだまだ少ないのが現状だ。せっかくすばらしい写真を撮ったのであれば、作品に仕上げてプリントまでこだわりたい。
そんなときに使いたい顔料インク搭載のインクジェットプリンターと、さまざまな特徴を持ったアート紙をご紹介しよう。

吉田 繁執筆・撮影:吉田 繁 (よしだ しげる)
1958年、東京生まれ。日本大学経済学部卒。広告・PR 誌・雑誌など撮影をするかたわら1990年頃から巨樹を中心に自然の写真を撮り続けている。近刊に「日本遺産 神宿る巨樹」(講談社刊)。その他の著書に「地球遺産・最後の巨樹」「地球遺産・巨樹バオバブ」「一眼デジカメ虎の巻」(共に講談社刊)。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。

長く見続けられる作品作りに欠かせないプリンターと用紙へのこだわり

インクジェットプリンターはいろいろな用紙に出力できるのが特徴。プリントする作品に合わせて、用紙にもこだわりたい
 写真をプリントすることを考えるとき、光沢紙に出力することをイメージする人が多いのではないかと思う。しかし、それが本当にプリントの王道と言っていいのだろうか。美術館に所蔵されている写真作品は、光沢紙に出力したものは多くない。せいぜい、半光沢紙だし、昨今のアート市場では、アート紙といわれるコットンベースの用紙に出力したものも決して少なくない。

 また、撮影した画像を、SNSにあげて楽しむというのも今風だと思う。「いいね」がたくさん付いたり、コメントをもらうことで、撮影する楽しみが増える。しかし、光沢紙に出力するだけでは、画面で見たときとの印象の差がほとんどないのではないだろうか。

 インクジェットプリンターの特徴は、いろいろな種類のメディアに出力ができるということだ。用紙の面白さと写真の表現をマッチさせることは、プリントにしかできない。これをやり遂げることで、SNSでは決してできない世界を見せることができる。じっくりと眺める世界と言ってもいいかもしれない。人に長く見てもらいたい世界だ。もちろん、人に見せるだけでなく、自分自身で見続けることで、自分自身の表現を模索することもできる。こうした、長く見続けられる作品を作るという点においては、作品の保存性の面で、染料系より、顔料系のインクを使うプリンターに軍配が上がる。
 SNSで瞬間的に「いいね」が付くだけでなく、人に長く見てもらえる作品を作りたいと思うならば、撮影する機材だけでなく、プリンターや用紙にまでこだわってほしい。

エプソン「PX-5V」
PX-5V モノクロだけでなくカラーでも豊かな階調表現を可能にする3種類の濃度のブラックインクが特長の8色インク顔料モデルの「PX-5V」。さまざまな用紙に対応できるところも、作品づくりを追求するユーザーにはうれしいところ。
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エプソン「Velvet Fine Art Paper」
Velvet Fine Art Paper 表面に上質なテクスチャーを施したエプソン純正のファインアート紙「Velvet Fine Art Paper」。「PX-5V」で使用する顔料インクとの組み合わせで、ハイコントラストや高彩度の出力にも対応します。
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プリント情報満載のエプソンのフォトポータルサイト
http://www.epson.jp/photo/

アート紙を使いこなすには、その特徴を知ることが必須

用紙ごとに異なる紙色。並べてみるとその違いがよくわかる
 アート紙にプリントしようと考えるときには、いくつか注意しなくてはならない点がある。まずは、紙色が挙げられる。用紙の色は、すべて「白い」としか認識がない人も多いと思うが、用紙の白は実はまちまち。並べてみるとわかるのだが、青いような白もあれば、暖色系の白もある。
 インクジェットプリンターの出力において、画像データのもっとも白いところ(RGBの数値でR:255、G:255、B:255)にはインクをうたない。したがって、この部分は紙の色がダイレクトに見えることになる。撮影したときにこの部分に色をつけるという感覚はないはずだ。しかし、アート紙の中には紙色がかなり暖色系のものもあり、これらはハイライトは暖色になることを意識しておかなくてはならない。利用する用紙によっては紙白を意識することが大切だ。
 2つめは、面質だ。コットン系のアート紙は表面には凹凸がある。この凹凸を利用することも、アート紙を利用する上で大切なポイントになる。例えば、雪のある風景をインクジェットプリンターでプリントすると、明るくなるほどにインクをうたなくなるので、当然、面質の凹凸感が目立つようになる。この凹凸感を逆に利用するなどという発想も生まれる。しかし、ポートレイトなどで、顔の部分を明るくしているような場合は、ここにも面質が出てしまうので、この場合は強い凹凸のある用紙は選びにくいかもしれない。

 また、この面質は明るいところにのみ影響を与えるということではない。暗部のベタ面にもはっきりと見えてくる。撮影するときに暗部のベタ面の面質感を意識する人はいないので、出力してみなければわからないこれらの点には注意を要する。

 アート紙は、種類によって性格がまるで違う。これらを使いこなしてアート紙ならではの楽しみを実現したい。

Velvet Fine Art Paperの面質Velvet Fine Art Paperの面質

フレスコジクレー Type Rの面質フレスコジクレー Type Rの面質

フレスコジクレー Type Sの面質フレスコジクレー Type Sの面質

用紙に合わせたレタッチで作品の完成度はもっと高まる

 光沢紙とアート紙では表現できる濃度域や色域が違う。したがって、それに合わせたデータづくりが大切になる。用紙に合わせた補正術を実例をいれてご紹介したい。

用紙によって異なる、濃度の表現

 エプソンの最高峰と言える写真用紙は「クリスピア」だろう。この用紙は、表現できる色域も広く、また、黒の締まりもいい。あらゆる画像データを表現できると言っても過言ではないだろう。見方を変えると、ユーザーはモニターを見ながら出力する画像の状態を決めている。モニターで見たときと同じような印象で出力できるのがクリスピアでの出力結果だとも言える。

 一方、アート紙、とりわけにじみ止めをしていない和紙などでは表現できる濃度域も狭く、また色域も狭い。したがって、モニターで見えている高いコントラスト、広い色域の画像データをそのまま出力することは不可能だ。モニターでは見えていたものが、実際に出力するとつぶれていて見えないということが起こる。特に暗部の階調では起こりやすい。

光沢紙とアート紙濃度域比較グラフアート紙(グラフ:赤)と光沢紙(グラフ:青)の濃度域を比較した例。この例では、光沢紙に比べてアート紙の表現できる濃度域が、特にシャドー部で狭いことがわかる

光沢紙とアート紙色域比較グラフアート紙と光沢紙の色域を比較した3Dグラフ。この例では、光沢紙に比べるとアート紙の表現できる色域が狭いことがわかる

用紙の特性に合わせたレタッチで仕上がりに違いが!

 実例を挙げてみよう。まず、この写真とヒストグラムを見てほしい。

写真 ヒストグラム

 この写真の主題は奥に配置されている白っぽい木なのだが、モニターでは木と周りの森の部分を見分けられるものの、ヒストグラムを見てもわかるように、階調がなくなっているということではなく、森の階調がかなりシャドウよりに片寄っている状態だ。このような画像データは、モニターではしっかりと見えるが、「Velvet Fine Art Paper」や「フレスコジクレー」などのアート紙でプリントするとシャドウがつぶれて階調がなくなってしまう。モニターで見ていたときの印象とはかなりかけ離れてしまう。

モニター上でアート紙にプリントした状態をシミュレーションしたもの モニター上でアート紙にプリントした状態をシミュレーションしたもの。
上がアート紙でのプリント、下がデータをそのまま見たもの

 そこで具体的な補正方法だが、最初に「トーンカーブ」を使って、シャドウ側を持ち上げる。全体の輝度幅の中で、つぶれる領域を利用しないようにするわけだ。

トーンカーブ 設定画面 ヒストグラム

 次に、シャドウ側のトーン変化がないとモニターでの見た目以上につぶれて見えるので、「覆い焼き」「焼き込み」を使って、シャドウ側に濃淡をつける作業をする。ここでは、木を中心に「覆い焼き」の補正をして部分的に明るくした。

写真

 主題となるものが最暗部の階調の中にあるときは、そこを明るくする。また、暗い階調の中にも濃淡をつけることで浮き上がらせるというのがこの作業の趣旨だ。

ここで紹介した例は、あくまで補正の参考例、考え方として見てもらいたい。

用紙の扱い方やプリンタードライバーの設定、プリントした作品の飾り方

話題の漆喰シート「フレスコジクレー」を試してみよう

フレスコジクレー アート紙といわれるジャンルの用紙は、いくつかにわけられる。もっともポピュラーなのは、コットンをベースに作られているアート紙だ。「Velvet Fine Art Paper」や「Ultra Smooth Fine Art Paper」などはこの分類に入る。欧米のアート市場ではもっとも多く利用されているといっていいだろう。
また、日本人になじみ深い用紙には和紙がある。こちらも、注目されているメディアと言っていい。日本画や墨絵を連想する人もいるかもしれないが、インクジェットプリンター用に改良されたものもあり、手軽にファインプリントが楽しめる。

さらに、ここ最近の注目としては「フレスコジクレー」が挙げられるだろう。フレスコと聞いて、フレスコ画をイメージする人も多いと思うが、フレスコ画と同様に漆喰を利用してインクジェットプリンターでプリントできるようにしたのが漆喰シートとよばれている「フレスコジクレー」だ。ベースとなる和紙の上に、未硬化の漆喰を塗布して、インクジェットの顔料を吹き付けられるように改良したものだ。プリント後、空気中の炭酸ガスと化学反応を起こし、硬化することで保存性の高いプリントができあがる。顔料系のプリンターは染料系に比べ保存性が高いのが特徴だが、フレスコジクレーに出力することで保存性はさらに増すのだ。
フレスコジクレーには面質の違いで2種類の製品がある。筆者は個人的には面質の粗いType Rの方が好きだ。スポットライトを当てたときの立体感が、Type Rの方がより大きいからだ。この立体的に見えてくる効果は、蛍光灯のような拡散された光源だとなかなかわかりづらいのだが、スポットライトだとより顕著に見えてくる。
また、この用紙の特徴として表面が硬化してどんどん変容するという効果も非常に面白いものだ。3時間ほどで安定するのだが、1年前にプリントしたものを今見るとやはり微妙に変化したことが伺え、まるでワインが熟成するように安定するその様子を楽しむことができる。

■対応プリンター
エプソン PX-5002、PX-5V、PX-7V、PX-5800、PX-5600、PX-5500、PX-G5300(2013年1月現在)

※各用紙に関するお問い合わせは、販売元にご連絡ください。
また、ご紹介する用紙を使用した際の正常な動作(プリントアウト)につきましては、セイコーエプソン株式会社・エプソン販売株式会社で保証するものではありません。