いま世界はあなたの写真を求めている ストックフォトで写真のベストセラーを目指そう! ゲッティイメージズ「iStock」の始め方

GANREFでは、ストックフォトサイト「iStock」を運営するゲッティイメージズと「iStock」のコントリビューター(写真提供者)に協力いただき、インタビュー形式でストックフォトの基礎知識や売れる写真のコツを伺いましたのでレポートします。いまストックフォトでは一般の方が撮影した「自然な写真」「身近な写真」が求められています。ぜひこの記事を参考にして、幅広く写真を楽しんでいくことにお役立てください。

取材・執筆:関根慎一
取材写真撮影:加藤丈博

フォトコンテストや写真投稿サイトとは違う
「ストックフォト」という発表の場がある

 デジタルカメラやスマートフォンが広く普及したことで、誰もが気軽に写真を撮影し、日々の記録やSNS上での交流などに活用するのも、今や当たり前になりました。当サイト「GANREF」も、投稿した写真作品を通してユーザー同士が交流できる場のひとつです。

 写真には、フォトコンテストなどのように作品表現を競い切磋琢磨するものや、写真を通して人同士の交流を生み出す写真投稿サイトなどでの使われ方があります。これは“写真”が持つ特性の一側面ですが、同時に、広告や記事を制作する上で欠かせない“ビジュアル素材”という側面もあります。

 素材としての写真は「ストックフォト」と呼ばれており、広告や報道、雑誌、Webサイトなど、写真素材を必要とする、あらゆる分野で利用されています。

 フォトコンテストや写真投稿サイトでは、投稿した写真は「作品」として選者もしくはほかのメンバーから評価やコメント付けがされますが、ストックフォトにおける写真は、「素材」としての使いやすさが問われます。その結果として、ストックフォトの特徴でもある「自分の写真作品が売れる」ことで作者に評価が返ってきます。

 ストックフォトの販売プラットフォームを提供する業者は複数存在しますが、今回はその中のひとつ「iStock」(アイストック)を運営するゲッティイメージズジャパンとコントリビューターにお話を聞くことができました。

 本記事の前半ではストックフォトサービスの概要と、どのような写真が売れるのかを中心にお聞きしつつ、後半では実際にストックフォトで収入を得ているコントリビューターの方に、収益をあげるための取り組みや、撮影時のエピソードなどについて掘り下げていきます。

ストックフォトサイト「iStock」についてお話いただいた方々
ゲッティイメージズジャパン
北澤道夫さん

2002年ゲッティイメージズジャパン入社。セールス部門を経て、2016年にクリエイティブコンテンツ部門シニアマネージャーに就任。
iStockコントリビューター
川瀬 智さん

普段はエンジニアとして勤務するかたわら、GettyImagesおよびiStock専属コントリビューターとしても活動する兼業フォトグラファー。撮影会やイベントなどへ積極的に参加するほか、SNSへの写真投稿なども行う。

写真を買ったことも売ったこともないけど
「ストックフォト」ってどういうもの?

 今回お話をうかがったのは、ゲッティイメージズジャパンのクリエイティブコンテンツ部門シニアマネージャーである北澤道夫さん。北澤さんによれば、デジタルカメラとネットの登場によって、かつて「レンタルポジ」と呼ばれたストックフォトの在り様は、大きく変遷したといいます。

北澤さん ゲッティイメージズが日本でサービスを開始したのは2002年のことですが、当時はまだレンタルポジの時代で、お客様がカタログを見て電話で問い合わせをしたり、ときにはポジを直接見に行ったりしていました。その後十数年を経て、今ではWebサービスを利用される方がほとんどです。Webベースに移行したことで、お客様にとっても我々にとっても、そして写真を提供する方にとっても非常に便利になりました。
iStockでは、写真を提供する方を「コントリビューター」と呼びます。基本的には写真を撮っている方であれば、どなたでもコントリビューターになるための審査を受けることができます。コントリビューターがアップロードした写真は、iStockによって審査され、販売基準を満たしていればサイトに公開されます。

 ではコントリビューターとして参加している層は、どのような人々なのでしょうか?

北澤さん iStockの場合は趣味で写真を撮っている方が多いですね。例えば、定年退職後に新しい趣味として始めた方や、子どもを撮影してるうちに、写真そのものに興味を持つようになった主婦の方もいます。もちろんプロのカメラマンも登録していますが、最近は一般の方が、ちょっとした空き時間に撮影した写真を提供するケースが増えています。

 かつてプロカメラマンだけのものだったストックフォトへの写真の提供ですが、現在は趣味でカメラを使う人々にも裾野が広がっており、参加のための敷居も下がっている点で、大きな変化が起きています。Webの普及によって、ストックフォトの用途には変化はあったのでしょうか。

北澤さん 最終的な使われ方はそれほど変わっていませんが、Webで使われる機会は確実に増えていますね。広告のビジュアルはもちろん、企業のWebサイトでイメージ画像として使われていたり、記事でも使われていたりします。近年、変わった点としては、スマホで撮った写真でも販売できるようになりました。解像度的に紙媒体で使うのは難しいかもしれませんが、Webなら問題なく利用できるためです。

iStockでダウンロード数の多かった写真作品 月間ベスト5(2017年4月)
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1位
515065466, jakkapan21

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2位
526490847, RelaxFoto.de

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3位
496261146, MarioGuti

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4位
471052708, SoumenNath

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5位
636900410, Pavliha

ストックフォトではどんな写真が評価される?
写真の使われ方が売れ筋を左右する

 写真を作品としてみるか、素材として捉えるかによって、写真を評価するポイントは変わるはずです。ストックフォトとしての「良い写真」は、具体的に、どういった基準で評価されるのでしょうか。

北澤さん ストックフォトは広告などの制作物に組み込むことが多いので、素材としての使いやすさが重視されます。例えば、写真にコピーを入れる余白があるかどうかは、場合によってはお客様が写真を選ぶ際のポイントになります。また、人物の写真であっても、顔がはっきりと写っていない写真は、主張が少ない分汎用性を持ち、より多くのお客様に選ばれる可能性があります。

 売れる写真の特徴としてはこのほか、「キーワードが付けやすい」ことも重要だといいます。例えば風船であれば「飛躍」や「上昇」といったキーワード(タグ)を付けることができます。

北澤さん たくさんキーワードが付けられる写真は、それだけ検索にヒットしやすくなるので、より多くのお客様の目に触れることになります。

 フォトコンテストでは選者が写真を評価し、写真投稿サイトでは写真仲間がお互いに写真を評価したりコメントを付けたりします。被写体としては風景や花が好まれる傾向があり、いわゆるカメラ雑誌で発表されてきたような作品が主流になる傾向がありますが、ストックフォトの場合は、どのような写真が売れているのでしょうか?

北澤さん 実は売れ筋のテーマというのは昔から変わっておらず、『ビジネス』『家族』『愛』をテーマとした写真は人気があります。ただ、好まれる写真のテイストに関しては変化が出てきました。以前は、モデルを使い、きっちりライティングした、いかにもストックフォト的な写真が主流でした。

 北澤さんによると、近年では、同じテーマであっても、より自然な雰囲気のビジュアルが好まれるようになったといいます。被写体もプロのモデルではなく、撮影者の身近な人、例えば友人や家族をモデルとすることも多いとか。

北澤さん 自然な表情、自然な光の写真は、世界的なトレンドと言えるでしょう。使われる写真のテイストは、企業、商品、サービスがどう見られたいのか、を反映したものですので、今は『よりあなたの身近にいる企業・商品・サービス』であることを訴求したい傾向が世界的に強いことがうかがえます。

iStockでダウンロード数の多かった「日本」の写真作品 月間ベスト5(2017年4月)
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1位
117595619, deeepblue

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2位
496035405, nicholashan

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3位
154329525, violet-blue

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4位
168626742, Mlenny

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5位
517154541, kitchakron

売れるための明確なアドバイスが面白い
イベントやレビューの機会を活用するのが○

 ここからは、iStockのコントリビューターとして登録されている川瀬智さんにもお話をお聞きします。普段はエンジニアとして勤務するかたわら、iStockのコントリビューターとして活動。学生時代にカメラを手にした当初は、友人や風景などを撮影してきたといいます。ストックフォトを始めたのは2013年からとのこと。川瀬さんがストックフォトを始めたきっかけは、どういったものなのでしょうか。

川瀬さん 写真投稿サイトのFlickrに写真をアップしていたころ、ゲッティイメージズから『ストックフォトを始めてみませんか』というお誘いがあったのです。同時期に「iStockalypse」(アイストッカリプス)というイベントの招待もきていたので、イベントにも参加してみたのがきっかけです。

 iStockalypseは、写真家やアートディレクターを講師として、座学から撮影実習、講評などを実施するセミナー&ワークショップ。写真家によるポートフォリオレビューも実施しており、川瀬さんはこのレビューで写真家からの具体的なアドバイスを受けて、コントリビューターとしての活動を考えるようになったといいます。

川瀬さん 参加してみると内容も充実していて楽しかったし、モデルさんを撮るのって面白いな、と思うようになったのもこのときでした。特に、アドバイスに具体性があることがすごく励みになりましたね。他人から見てどこがどう良くないから、どう直したらいいかがよくわかるので、次のアクションに移しやすい。それは、Flickrで『この色きれいだね』と褒められるのとは違っていて、売れるかどうかという明確な視点でアドバイスがもらえるのがとても面白く感じたものです。

 その後もイベントに何度か参加しているうちに「自分でも写真を売ってみたい」と考えるようになり、iStockのコントリビューターとして活動を開始。また、自分でも撮影を企画するようになったそうです。

 権利関係をクリアにするのはストックフォトとして必須条件であるとお聞きしました。コントリビューターとして行動するうえでの注意点はありますか?

川瀬さん 人物写真をストックフォトに登録する場合は、モデルになってくださった方のモデルリリース(肖像権使用許諾書)が必要です。これには職業モデルも一般の方も関係ありません。モデルリリースのテンプレートはきちんと用意されており、初めての方でも難しくはありません。ただ、名前や連絡先などの個人情報が含まれるので取り扱いには気を付けています。

コントリビューター川瀬智さんの代表写真作品
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637890538, Satoshi-K

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611860998, Satoshi-K

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売れる写真はどうやって撮ればいい?
撮影はもちろん、テーマ設定や準備も大切

 川瀬さんはiStockでトップクラスの販売実績があるコントリビューターですが、売れる写真を撮るコツはいったい何なのでしょうか。川瀬さんに、作品を撮ってからストックフォトにアップするまでの流れを尋ねてみました。

川瀬さん 撮影に動く前に、まずは企画を立てます。この準備段階が一番大変かもしれませんね。例えば女性の写真を公園で撮るにしても、その日のテーマを決める必要があります。ビジネス向けのシーンなのか、恋人とデートをしているイメージなのか、あるいはショッピングの様子を撮るのか。どういうシーンの需要があるのかを考えます。この、テーマの設定が重要なんです。

 テーマを考えたら、モデルが何人必要なのか、かかる費用をどのように分散するのかなどを計算し、万全の体制で撮影に臨むといいます。

川瀬さん 撮影にかかった時間が2時間でしたら、だいたい枚数にして300~400枚くらい撮りますので、そのうち1割くらいを目標に選んで、後処理して、投稿します。それと、キーワード(タグ)付けも必要ですね。僕の場合はLightroomで読み込んだら、テーマに沿ったキーワードを付けます。例えば浴衣の女性を撮影した場合、どの写真にも『浴衣』や『女性』といったキーワードは付くはずですよね。カップルの写真なら、『20代』、『カップル』など共通のキーワードを付けます。あとは写真ごとに『全身』だとか『ウエストアップ』などの個別キーワードを付けて、一通りの手順は終わりです。

 レタッチはしますか?

川瀬さん 必要に応じてレタッチはしますね。ロゴは消さないといけないので必ず処理するし、ときには写り込んでしまった不要物を消したりもします。でも今のトレンドとして、自然な雰囲気を演出する意味で、背景に人が写っていた方がいいのであれば、そのまま残すことはあります。あとは、光の具合を変えることもあります。極端な例ですけど、あたかも人物に夕日が当たっているかのように演出したりとか。『よく、夕日がいい感じになるまで待つ』なんて話もありますが、撮影時間の制約などありますので、撮影した後に多少のデジタル処理によって、自分のイメージに仕上げることもあります。

 このほか、ストックフォトとして意識するポイントしては、素材として使ったときに文字の入る部分、いわゆる「コピースペース」を作る点を挙げました。文字の入るスペースということで、見やすくなるように背景の明暗を変えることもあるとのこと。でも、素材として販売するならば、そういった細かい調整は、販売した先のお客さんに任せてしまっていいのでは?

北澤さん たしかにお客様の方で調整することは可能ですが、そのままのイメージで制作物に使えた方が楽ですよね。なので、アップロードする前の段階である程度クオリティを上げておくことも大事です。お客様が写真を選ぶ段階で、商品として手に取っていただけないと元も子もないですから。

ロゴは画像処理などで消す
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ストックフォトの撮影機材はなんでもOK!
販売収入で機材をアップグレードできることも

 撮影機材は何をお使いなのでしょうか? これはGANREFユーザー的にも気になるポイントだと思います!

川瀬さん ボディはキヤノン EOS 5D Mark IVとキヤノン EOS 6Dの2台体制です。それまではEOS 6Dとキヤノン EOS 7D Mark IIを使っていましたが、ロイヤリティ(報酬)が貯まったので、思い切って購入してみました。支払っているモデル料を確実に超える収入があると、気兼ねなく買えていいですよね!

川瀬さん 使うレンズはほとんど単焦点です。歩きながらカップルを撮るシーンだと35mm、ちょっと離れたところからなら85mm、屋内とか、被写体に接近して撮るときは20mmを使っています。ズームレンズも持ってはいるのですが、ほとんど使わなくなってしまいました。あ、でも家族旅行ではズームも比較的よく使います。被写界深度が浅くて一人だけピンぼけになってしまうと、色々と問題があるので(笑)

北澤さん 機材については、お好きなものを使っていただいて構いません。何を使って撮るかではなく、どんな写真を撮るかが重要なので、極端な話、スマートフォンでもいいんです。昨年、京都で開催したiStockalypseでも、メイン機材がコンデジの方もいらっしゃいました。

 ストックフォトを続けるには、高いクオリティの写真を継続して撮る必要があると思うのですが、継続して取り組むための心がけはありますか?

川瀬さん 『売れたらうれしい』というのは間違いなくありますけど、それがすべてというわけではないです。例えばイベントとかに行くと新しい出会いがありますし、僕とは違う撮り方をしている方もいらっしゃる。モデルさんによっても動きやリクエストが全然違うし、色んな『違い』が面白いんですよね。それに売れる写真だけを考えるのではなくて、モデルさんが欲しがっている写真が撮れると、喜んでくれる。そしてそれをSNSに載せると、また自分も撮ってほしいという方からお声がかかる。楽しくやっていく中で、人との繋がりが増えていく。僕の場合は、仲間がいるというのが大きいのかなと思います。

 これからストックフォトを始める方に対してのアドバイスはありますか?

川瀬さん 僕もストックフォトを始めたころはあまり売れない時期があって、新しい写真を追加しても、古い写真ばかり売れている状況に悩まされたりしました。新しい写真が売れ始めたのは2016年からなのですが、人物写真の場合、やはりモデルさんを自分で確保するのは大事かなと思います。モデルを手配したら、先ほど申し上げたように、テーマを考えて、きっちり段取りを整えていく。自分で撮りたいものが見えてきたら、細かいところまで自分でマネジメントした方がいいですけど、はじめはストックフォトの経験者を見つけて、同行させてもらう方が気軽でいいかなと思います。ストックフォトを始めることは、決して敷居の高いものではないです。

北澤さん 売れてる写真は別に人物だけではないですし、今ご自身がされていることの延長と捉えて気軽に始めてほしいですね。iStockは世界34カ国で展開しているので、写真が公開された瞬間に世界中のお客様に見ていただけるのも強みです。写真を撮る動機は人それぞれですが、『SNSにアップする』という出口のほかに、『販売する』という出口もあるということを知っていただければと思います。販売目的ゆえに留意すべき点はありますが、ご自身の写真の幅を広げるためにも始めてみてはいかがでしょうか。

 写真を作品ではなく、お客さんのための素材として捉えるのがストックフォトということですね。ここまで、ストックフォトに関わる方のお話しをお聞きしてきました。

 評価される軸はフォトコンテストやGANREFなどの写真投稿サイトとは違いますが、シンプルに個別の写真の価値だけで評価されるという意味では、非常に公平なフィールドとも言えます。ここでは川瀬さんの撮影フローを紹介しましたが、取り組むテーマや被写体によって、人それぞれのやり方があるはず。そこを突き詰めて、自分なりに研究し、文字通りの市場的にニーズのある写真を目指してみるのも面白いかもしれません。

 実際に販売サイトを見に行くと、掲載されている写真には、ストックフォトならでは独特の雰囲気が感じられるでしょう。もし興味が出たら、ワークショップなどのイベントに参加してみてはいかがでしょうか。

ストックフォトとは?iStockとは?

コントリビューターに応募!

iStock×GANREFコラボセミナーの参加者募集

写真のベストセラーを目指そう!
ストックフォトの基礎知識と「iStock」の始め方

日時
2017年7月1日(土) 10:00~13:00
場所
インプレス・セミナールーム(神保町)
参加費
無料
募集人数
50名 ※応募多数の場合は抽選
募集期間
2017年5月24日(水)~6月7日(水)12時
追加募集:2017年6月15日(木)~6月25日(日)
応募方法
GANREF特設ページの申込フォーム
概要
ゲッティイメージズのクリエイティブコンテンツ部門シニアアートディレクターの小林正明さん、シニアマネージャーの北澤道夫さんをお迎えし、ストックフォトの基礎知識、iStockの特徴と始め方、売れる写真のコツなどをテーマにセミナーを開催します。ストックフォトに興味がある方、始めてみたいと思っている方はぜひご参加ください。セミナーの後は質問タイムもあり、皆さんの疑問や質問にお答えします。また、後半は懇親会もご用意。ケータリングとドリンクを楽しみながら、写真のこと、撮影のこと、ストックフォトのことをワイワイ話しませんか?

応募受付は締め切りました。
多数のご応募有り難うございます。
参加が決定された方には、メールにて申し込みのお知らせをお送りします。