GANREF特別企画 夏の風景撮影術&おすすめアイテム
いよいよ本格的な暑い夏が到来! 皆さんにとって夏の色というとどのような色をイメージするでしょうか? 強い日差しに照らされて生き生きとしてくる被写体といえば、森、夏空、ヒマワリなどがありますね。そこで今回は、「緑」「青」「黄」という夏らしい“色”をキーワードに、思い描くイメージを自在に表現するための夏の風景撮影術について解説します。
夏の花畑といえば北海道の広大な花畑を思い浮かべる人も多いでしょう。花畑を広角レンズで撮影するときのコツは、手前に配置する部分が密集している場所を選ぶことです。一番目立つ部分なので、地面が見えていると密集感が感じられなくなるからです。
カメラ:ニコン D200/焦点距離:15mm/露出モード:絞り優先AE/絞り:F11/シャッタースピード:1/20秒/ISO感度:100/WB:晴天/三脚使用/撮影地:北海道空知郡中富良野町
三分割線
本題に入る前に、まずは風景写真における画面構成の基本から考えてみることにしましょう。風景写真の画面構成のなかで最もベーシックな考え方が三分割法です。画面の縦、横それぞれを3分割にする(画面を9分割にする)ようなラインを引いて、そのラインや交点を利用して画面構成をするという構図法です。
それでは具体的な作品を例に解説しましょう。右にある作品は、北海道の広大な花畑を撮影したものです。画面の左側は1/3を花畑、2/3を青空で配分しました。また三分割線に沿って花畑の斜面が入るよう画面構成をして、右端では花畑が2/3、青空が1/3の配分にしています。この結果、とても安定して見えるようになります。また、アクセントになるようなものがある場合は、縦横のラインが交わる部分(交点)に配置することを意識してみると良いでしょう。まずはコレが基本です。カメラのファインダーやライブビューに格子線や構図線を表示できる機種ならそれを目安にすると良いでしょう。もちろん相手は風景ですから、きっちり測ったように三分割線に合わせる必要はありません。
ほかにも対角線構図、シンメトリー構図、S字構図など、さまざまな構図法がありますが、まずはこの三分割法から始めてみると良いでしょう。
森の木々、滝の周囲に生い茂るシダや植物たち……夏の被写体では緑は欠かせない“色”のひとつです。夏らしい緑を表現するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
まずは森などに代表される緑について。森閑とした、深みのある濃い緑を表現するためには露出を切り詰めることがポイントです。撮影機材にもよりますが、おおむね-0.3~-1EVの露出補正を行うと深みが増してきます。特に湖沼の緑や奥深い森の中では効果的なので、コクが足りないと感じたらマイナス側の補正をしてみると良いでしょう。
一方、夏のキラメキや爽やかさを表現するための緑になると、露出の決め方が違ってきます。例えば透過光を利用して背景に玉ぼけをあしらうようなシーンです。このようなケースでは完全に逆光状態となり、プラス側に露出補正をしなくては、緑が黒々とした暗いシルエットになり、キラメキや爽やかさを表現できません。目安は+2EV程度。表現によってはもっと思い切ったプラス補正を考えても構いません。その際にカメラのダイナミックレンジ拡張機能を併用すると良いでしょう。
森の奥深くに眠る湖沼……そのようなイメージを描いて撮影したものです。コクのある深い緑を再現するため、-1EVの露出補正を行いました。また、上下のシンメトリー構図とすることで、インパクトを高めています。
カメラ:ニコン D7000/焦点距離:65mm/露出モード:絞り優先AE/絞り:F8/シャッタースピード:1/30秒/露出補正:-1EV/ISO感度:100/WB:晴天/撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 志賀高原・長池
夏空に湧き立つ白い雲。夏らしい爽快な風景ですね。青空の透明感を引き立たせ、爽快な夏空をイメージさせるためにはPLフィルターが効果的です。
PLフィルターは大気の反射を取り除き、コクのある青空に再現してくれます。コントラストが高まり、夏のくっきりとした爽快感を表現できるでしょう。しかし、湖沼など水面に映り込んだ青空については話が別です。PLフィルターを使うとせっかくの反射が失われてしまい、水底までが見えてしまうこともあります。青空とはいえども映り込みのようなシーンでは使わない方が良いでしょう。
一方、忘れてはならない夏の青に、夕暮れ時の青があります。少し薄暗く、青い夕暮れの風景はどこか寂寥感を感じるもの。いにしえの景観が残る宿場町や集落で、寂しさ、わびしさをイメージさせる絶好の色合いといえます。そのためには夕方遅く訪ねることはもちろんですが、ホワイトバランスは「オート」ではなく「晴天」を選ぶことがコツです。なお、夕暮れの青を表現できる時間は光量が少なくぶれやすいので、三脚を使うようにしましょう。
丘にたたずむ1本の木の背景にはいい形の雲が広がっていました。そこで青空をくっきりと表現したいと考え、PLフィルターを使ったものです。北海道らしい透明感あふれる青空を表現することができました。
カメラ:ニコン D200/焦点距離:19mm/露出モード:絞り優先AE/絞り:F8/シャッタースピード:1/60秒/露出補正:+1EV/ISO感度:100/WB:晴天/撮影地:北海道上川郡美瑛町 哲学の木
ヒマワリやニッコウキスゲは夏を彩る代表的な花。夏の花のイメージに黄色を挙げる人も少なくないでしょう。また、黄金色に染まる夕照も広い意味では「黄」といっていいかもしれません。そこで、ここではレンズワークで夏の「黄」を演出する手法について考えてみたいと思います。
望遠レンズの特徴には“ぼけ”があります。これを利用することで、ヒマワリを、よりいっそう華やかで、にぎやかなイメージに表現することができます。黄色は有彩色のなかで最も明るいため、ヒマワリを前ぼけや後ろぼけとして大きくぼかし黄色のトーンとして利用すれば、とても華やかなイメージが得られるというわけです。
一方、広角レンズの特徴は“広範囲を取り込める”ことです。例えば夕照が当たり黄金色に染まる麦畑の広さを表現したいときなどに使用するのはもちろんですが、花に近寄ってワイドマクロ表現を行えば、空などの周囲の環境をも取り込むことができ、夏らしさを演出することができます。
黄色いぼけのトーンで華やかさを演出するため、大口径望遠ズームレンズの開放F2.8を選択して手前のヒマワリを大きくぼかしたものです。このとき、最も効果的に奥のピント位置の花が引き立つよう、ぼけとなる花の位置と大きさは慎重に選んでいます。
カメラ:ニコン D700/焦点距離:185mm/露出モード:絞り優先AE/絞り:F2.8/シャッタースピード:1/800秒/ISO感度:200/WB:晴天/撮影地:群馬県富岡市