GANREF特別企画 夏の星空撮影テクニック&おすすめアイテム
~ニコン編~
野鳥観察やスポーツ観戦などでおなじみの双眼鏡。ご存じのとおり双眼鏡は遠くのものを大きく見せてくれるが、もうひとつ大きな能力がある。それは、肉眼よりもはるかに多くの光を集めて暗い対象を明るく見せてくれる点だ。
星空のきれいな所に双眼鏡を持って出かけ、星空にレンズを向けてみよう。カメラで星を撮るばかりでなく、ぜひ自分の目で星空を眺めてみてもらいたい。もしも天の川が見えるような所なら、双眼鏡の丸い視野には一面に数えきれないほどの星々が広がって見えるだろう。そこには写真とはまったく違う透明感のある輝きや瞬きがあって、光を目で直接見ることの醍醐味を感じさせてくれる。星の色も肉眼で見るよりよくわかるはずだ。
双眼鏡は星景写真の撮影でも地上風景の確認などにも便利に使え、また長時間の露出中には星空散策と、ぜひカメラと一緒に持って出かけてもらいたい。星を撮る楽しさがいっそう大きくなること間違いない。
天の川の中には、星間ガスが輝く星雲や小さな星が密集した星団、背景の星を隠す暗黒星雲など、見どころが実にたくさんある。これはいて座あたりの天の川を中望遠レンズでクローズアップしたところだ。星の地図「星図」や天体ガイドブックを片手にそのような空の宝石を探し出していくのは「宝探し」そのもののおもしろさだ(双眼鏡を使用して撮影した写真ではありません)。
肉眼で星を楽しむには、何よりも空の条件が大切だ。街から離れ海や山などの、光害の影響の少ない、空の暗い所に出かけよう。もちろん大気の透明度が高い方がいいので、標高が高い方が星がきれいに見えることが多い。また星空のどこにどんな天体があるのか知るための星図(せいず:星の地図)やガイドブック、星空アプリなどがあると、宝探しのような天体観察の楽しさ、おもしろさが何倍にもふくらむので、そのような資料も用意しておくといい。星空を巡ることは、知らない所に出かける旅行と同じようなものだ。
星を見る上では、双眼鏡の視野の明るさが重要だ。対物レンズ口径がなるべく大きく、倍率が低いものを選ぶと良い。口径40~50mmで7~10倍程度の機種が、手持ちで星を見るには最適だろう。もっと口径が大きく倍率の高い機種だとその分、迫力があり、暗い天体の細部まで楽しめるようになるが、手持ちではぶれて見にくいので、三脚に固定して使用したい。また、星空はレンズの収差が普通の景色よりはるかに目立つので、視野周辺までシャープに見える光学性能の高さも求められる。さらに、淡い星雲や彗星のような天体でもクッキリと見えるような像のコントラストも必要だ。レンズコーティングや内面反射の処理までしっかりとされた、ゴーストが少なくコントラストの良い高品質な双眼鏡を選ぼう。
双眼鏡に記された「7×50」「8×56」などの数字は、その双眼鏡の倍率と対物レンズの口径を表している。それぞれ「7倍・対物レンズ口径50mm」「8倍・対物レンズ口径56mm」という意味だ。接眼レンズをのぞいたときの視野の広さである「見かけ視界」の大きなワイドタイプ双眼鏡は、自分が宇宙空間に飛び出したような迫力も感じられる。
左は肉眼でも見つけられる「アンドロメダ銀河」を最高の空の条件の下、同口径で倍率の異なる双眼鏡で見た雰囲気を模式的に再現したものだ(実際のアンドロメダ銀河の見え方は全体にずっと淡くした感じで、周辺の恒星はもっと少ない)。アンドロメダ銀河はわれわれの銀河系の隣(とはいえ230万光年の距離)にある銀河で、満月を6個ほど並べた大きさに見える。双眼鏡は同じ口径のとき、倍率の低い方が観察対象が明るく見える。それだけ暗い所でもハッキリと確認できることになる。一方で高倍率機は、視野が暗くなるものの対象の細部まで確認しやすくなる。ボディの大きさも含め、性格の違う双眼鏡を使い分けられれば理想的だ。
メーカー希望小売価格:
MONARCH 5 8×56:64,800円(税込)
MONARCH 5 20×56:75,600円(税込)
ニコン双眼鏡の歴史は、実は1917年の日本光学工業の設立まで遡る。ニコンの原点は双眼鏡にあるのだ。MONARCHシリーズは、現在の数あるニコン双眼鏡ラインアップの中で「充実した機能を搭載し手ごろな価格を実現した双眼鏡」というポジションにある。
明るさを追求した対物レンズ口径56mmの機種には8倍、16倍、20倍の3機種がラインアップされている。EDレンズが採用されて色収差を低減、正立プリズムには高反射誘電体多層膜や位相差補正コーティングが施され、すべてのレンズ・プリズム面に採用された多層膜コーティングと相まって、明るく自然で鮮明な視界が得られている。「8×56」はひとみ径7mmの明るい視野が特徴、「20×56」は高倍率の迫力のある視界が魅力の機種。いずれも鏡体内には窒素ガスが充填された防水構造のため、夜露にぬれることも多い天体観察時にも安心だ。大口径の割に軽量で持ちやすいデザインも魅力である。
双眼鏡を明るい方に向けたときに接眼レンズに見える明るい円が「射出瞳」で、その直径が「ひとみ径」。この「ひとみ」から出た光が目に入ってくるのだが、ひとみ径が大きいほどたくさんの光が目に届き、視野が明るく見えることになる。ひとみ径は「口径÷倍率」で計算でき、20×56(上)では2.8mm、8×56(下)だと7mmとなる。人間の瞳は暗い場所で最大約7mmまで開くといわれているので、ひとみ径7mmの双眼鏡が最大限明るい視野の双眼鏡となるわけだ。
MONARCHシリーズの双眼鏡は、ピントリングが中心軸にあるセンターフォーカス(CF)式のピント合わせ。右目接眼レンズの基部にあるリングは、左右の目の視度(視力)差を調整する「視度調整リング」だ。双眼鏡を快適に使用するには、左右の接眼レンズの幅を自分の瞳間隔(眼幅)に合わせることと、両目の視度差を調整することが大切だ。まず鏡体を両手でつかんでゆっくり開閉し、左右の視野がひとつの円に重なるように調整。ついで左目だけでピントリングを使って焦点を合わせ、最後に右目だけで視度調整リングを回して両方の視野がハッキリと見えるようにする。いちど左右の視度差を合わせてしまえば、その後はセンターのピントリングだけで左右同時に焦点調節ができる。
メーカー希望小売価格:102,600円(税込)
7×50というスペックは、航海や漁業、監視、観察などの業務用途で最も多く使われている双眼鏡だ。ひとみ径が7.1mmと大きく、暗所でも視野が明るいことはもちろん、昼間でもひとみ径の大きさがもたらしてくれるのぞきやすさ、使いやすさが、現場のプロに買われているのだ。
ニコンのプロフェッショナル双眼鏡は口径50mmと70mmの機種がある(特殊な大型機を除く)。いずれもハードな使用条件に耐えられるような耐久性、防水性、機能性が重視されている、いわば双眼鏡の「プロ機」である。船上ではモロに海水の波をかぶることもあり、船員はそのまま水道の蛇口でジャブジャブ洗うそうである。
そのなかのSPシリーズは、焦点を平坦にするフィールドフラットナーレンズが採用されていて、像の平坦性に優れているのが大きな特徴だ。この機種で見る星空は、視野周辺まで針で突いたような星像でまさに絶品。「見え」にうるさい天文ファンにも定評のあるモデルだ。
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MONARCH 5 8×56 | MONARCH 5 20×56 | |
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倍率 | 8倍 | 20倍 |
対物レンズ 有効径 | 56mm | |
実視界 | 6.2゜ | 3.3゜ |
見掛視界 | 46.9゜(49.6゜) | 59.9゜(66゜) |
1000mにおける視界 | 108m | 58m |
ひとみ径 | 7mm | 2.8mm |
明るさ | 49 | 7.8 |
アイレリーフ | 20.5mm | 16.4mm |
最短合焦距離 | 7m | 5m |
質量 | 1,140g | 1,235g |
高さ | 199mm | |
幅 | 146mm | |
眼幅調整範囲 | 60~72mm |
倍率 | 7倍 |
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対物レンズ 有効径 | 50mm |
実視界 | 7.3゜ |
見掛視界 | 48.1゜(51.1゜) |
1000mにおける視界 | 128m |
ひとみ径 | 7.1mm |
明るさ | 50.4 |
アイレリーフ | 16.2mm |
最短合焦距離 | 12.4m |
質量 | 1,485g |
高さ | 217mm |
幅 | 210mm |
眼幅調整範囲 | 56~72mm |