“新しい表現力”を手に入れよう! プロ写真家の作品テクニック
プリントのおもしろさは、パソコン内にある「画像データ」としての写真とはまったく違った楽しみ方ができることにある。プリントした写真は手に取って鑑賞できるし、額装して飾ることもできる。またアルバムに入れて写真集のようにして楽しむことも可能だ。人に見せるうえでも、環境によって色やサイズの見え方が異なるパソコンのディスプレイと違って、作者のイメージどおりの色、トーン、サイズで見せることができる。同時に誰の目から見ても同じイメージで観賞できる「物」になった瞬間に「写真」は「作品」になるのだ。
一方で、イメージどおりの作品としてプリントするには、そのためのテクニック、そしてテクニックを生かせるプリンターが必要だ。そこで今回はプロならではの、撮影からプリントまでのワークフロー、作品作りの要になるプリンター、そして用紙選びのポイントをご紹介しよう。
優秀賞の賞品は
フォトストレージビューアー P-7000
応募締め切りは2010年3月31日(水)必着です。ご応募はお早めに。
» この企画と連動するカラープリントコンテストの応募要項はこちら
撮影時のポイントとしては、まず色彩に関する設定が挙げられる。ニコン「D300S」ならば、色の濃さや色合い、コントラストなどをコントロールするための「ピクチャーコントロール」を活用することで、イメージに合わせた色みの写真を撮ることができる。彩度や色合いを微調整することもできるので、きめ細かな設定も可能だ。JPEGで撮影してレタッチもほとんど行わないのなら、この微調整機能を使って色彩を決めておきたい。レタッチすることが前提であれば、できるだけコントラストを下げて、階調を残しながらレタッチに使いやすいトーンで撮影すると良いだろう。筆者の場合はレタッチしやすい設定を「カスタムピクチャーコントロール」に登録しておいて使用するか、被写体によっては「ニュートラル」を使用する。また、輝度差の激しい被写体の白飛びや黒つぶれを軽減してくれる「アクティブD-ライティング」も搭載されているので、背面液晶モニターで撮影した画像のヒストグラムを確認しながら、これを積極的に使用して白飛びを避けるようにしたい。
使用するレンズは、主役と主役を引き立てる脇役を見極め、広角レンズで広く撮るか、望遠レンズで一部を切り取るかなどを決めていきたい。広角から望遠まで撮れるズームレンズのセットやマイクロレンズのほか、明るい単焦点レンズを持っておくと、何かと重宝する。
» ニッコールレンズ製品ページ(ニコンイメージングウェブサイト)
夕景などの写真は、撮影後のレタッチでより鮮やかな色に仕上げたくなる。しかし過度な調整を行うと、美しいグラデーションを描いていたはずの空の階調は失われ、絵の具でべったりと塗ったような不自然な色みになってしまう。イメージどおりの作品に仕上げるためには、細部まで画像を確認しながら慎重にレタッチを行うことを心がけたい。
この写真を拡大する 筆者は、本番のプリントをする前に多くのテストプリントをする。テストプリントをする理由は、プリント用紙の決定と写真の色やトーンを確認するためだ。筆者は、人物、風景、スナップをプリントすることが多い。この中では特に、朝夕の空や人肌の色には気を使うことが多いのだが、エプソンのプリンターに変更するまではいくらテストプリントをしてもなかなか思いどおりにいかなかった。たとえば右の作例のような日の出前や日没後の、深い青色や彩度が高めの絶妙なトーンの焼けた空は、今までのプリンターでは表現しきれない難しい色が多く、彩度の高いオレンジ、レッド、イエローの焼けている部分から、深い青に変わるグラデーションはトーンジャンプしやすい傾向にあった。しかしエプソンの「PX-5002」や「PX-5600」などはブラック、グレー、ライトグレーインク(K3インク)により階調や色精度が大幅に向上し、ビビッドマゼンタによって豊富な色と階調で表現できる。これにより微妙なトーンも思いどおりに再現できるようになり、仕上がりに大変満足している。またテストプリントをしながら微調整を繰り返すことで確実にイメージに近づいてくれるので、テストプリントそのものが楽しくなってくる。
筆者のテストプリント時の用紙サイズは、本番で使うサイズの半分のサイズを使うことが多い。最終的にA3ノビで印刷する予定であれば、テストプリントはA4といった感じだ。というのも、Lサイズや2LサイズのプリントとA3ノビのプリントでは見たときの印象が大きく異なる場合があるからだ。
テストプリントで納得の色が出たら、いよいよ本番のプリントとなるわけだが、ここでプリントするサイズも写真のイメージや楽しみ方に合わせて選ぶことができる。その点、A3ノビサイズやA2サイズ、半切サイズでプリントできる「PX-5002」は、より楽しみ方の幅を広げてくれる。用紙サイズはプリントした写真の用途によっても異なるだろうが、せっかくプリントするならばできるだけ大きくプリントした方が、見応えのある作品に仕上げやすい。
筆者の場合プリントするサイズのなかで最も多いのがA3~A3ノビサイズのプリントだ。このサイズはアルバムの種類が多いので人に見せるための作品集を作りやすいと同時に、手に取って鑑賞すれば迫力を感じることができるサイズでもある。
ところで、以前グループ写真展に参加したときに、展示したい枚数とスペースの関係でA3サイズで展示を行ったことがある。自宅でプリント作業をしているときは大きく感じていたが、いざ会場で展示してみるとA3でも小さく感じられ、展示枚数を減らしてでもA2でプリントしておけば良かったと後悔した。このように、見せ方や展示するスペースによって写真自体の迫力は変わるので、用途に合わせてプリントするサイズを決めることは非常に重要なのだ。
光沢系向き
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マット系向き
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用紙選びには、サイズ以外にも、種類を選ぶおもしろさがある。用紙を変えるだけで、写真の雰囲気も変わるので、用紙選びはとても楽しい作業なのだ。
エプソンの写真用紙は、光沢感のある用紙からマット系のアート紙までさまざまなものがラインアップされている。筆者は、写真のテイストによって用紙を選択しているが、ヌケのよい青空、朝焼けや夕景、夜景、水の透明感などを表現したいときは、基本的に光沢感のある「写真用紙クリスピア〈高光沢〉」を選択する。特に黒の締まりは「写真用紙クリスピア〈高光沢〉」がイメージどおりに仕上がりやすい。また、スナップや人物などはマット系の用紙を選択することが多い。柔らかいトーンを表現するときには「Velvet Fine Art Paper」や「UltraSmooth Fine Art Paper」が適している。とはいえ、作品に対してどの用紙が向いているかは、撮影者の意図によって異なるので、さまざまな用紙でテストプリントをしてから決定するといいだろう。
さまざまな用紙を使ってみることで新しい発見をすることもある。最初は、光沢系でプリントする予定だったのにもかかわらず、テストでマット系を使ってみると想像以上に良い出来だったという経験は多い。用紙から得られる新たな表現もあるので、できるだけ多くの用紙にトライしていただきたい。
プリント作業は、撮影した写真の出来を左右する非常に重要な作業である。だからこそ満足するまではいくらでも試行錯誤するべきである。また、満足できるプリントを実現するには、色再現性や階調性などの高い要求に応えてくれるプリンターが必要だ。その点「PX-5002」や「PX-5600」のビビッドマゼンタインクやK3インク、LCCSの技術により実現している高度な色再現性や階調性は、LESSON 2にて解説している鮮やかな朝焼け、夕焼けの表現だけに止まらず、下にある作例のような鮮やかなブルーやグリーンを表現したい作品や、階調性を大事にしたい落ち着いたトーンの作品をイメージどおり仕上げるうえでも重要な役割を果たしてくれる。「PX-5002」や「PX-5600」を使用し、試行錯誤を重ねながらサイズの大きなプリント作品に仕上げれば、その迫力とプリント作品ならではの美しさを実感できるはずだ。
この写真を拡大する この写真を拡大する今回登場しているプリンター |
対応用紙サイズ:L判/KG/2L判/ハガキ/ハイビジョン/六切/A4/四切/A3/A3ノビ/半切/A2 メーカー希望小売価格:オープン |
対応用紙サイズ:L判/KG/2L判/ハガキ/ハイビジョン/六切/A4/四切/A3/A3ノビ メーカー希望小売価格:オープン |
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「PX-5002」や「PX-5600」は、ブラック、グレー、ライトグレーの3種類のブラックインクを採用したことにより、グレースケールの階調性・色精度が大幅に向上。カラーの安定性を支え、高度な色再現を実現する。また、ビビッドマゼンタインクを搭載したことにより、ブルーやバイオレットの色再現が豊かになっている。さらに、LCCS(Logical Color Conversion System)により階調性の向上、偏りのない色再現域、粒状性の改善、光源依存性の低減を考慮した最適なインクの組み合わせで安定した高画質なプリントを実現している。
エプソンの「PX-5002」「PX-5600」「PX-G5300」は、色精度の高さが特長。これは、工場出荷時に1台ずつテストチャートを出力、測定し、各色の濃度補正を行い機体間のバラツキを抑えているからである。