GANREF特別企画 アイソン彗星撮影術&おすすめアイテム
おすすめアイテムコレクション~キヤノンEFレンズ編~
天体・星景撮影ならEOS&EFといわれるほどに定評があるキヤノン一眼レフカメラシステム。それは圧倒的なラインアップを誇る高性能な交換レンズ群や高感度撮影での際立った画質の良さが認められてのことだ。光量が乏しい上にレンズに厳しい無限遠の点光源がメインの被写体となる星景写真は、レンズやカメラの基本的な性能が極限まで求められる厳しいジャンルなのだ。そのような星の世界で、キヤノンの一眼レフカメラシステムが広く天体ファンに使われているのには理由がある。
写真撮影のさまざまなジャンルの中でも、星の撮影は難易度が特に高く、高価なレンズや特別なカメラが必要になると思われてきた。しかし現在では、デジタルカメラの高感度性能が大変高くなり、しかも最新設計のレンズでは、ズームでもあまり絞り込む必要がなく、かなりきれいな星像を結んでくれるようになっているのだ。星空を撮影したいという者にとって、かつてなくうれしい状況である。誰でも星空の撮影が楽しめるようになってきているのだ。
点光源である星の撮影がレンズに非常に厳しいという事実は変わらないが、このようなカメラとレンズの進歩で、星空撮影のハードルはずいぶん低くなってきている。星空の撮影にチャレンジしたいという人がここ数年大幅に増えてきているという事実は、それを裏付けるものだろう。
光量の乏しい星の撮影だから、明るいレンズの方がより表現の幅が拡がることは確かではある。しかし、ノイズと一緒に小さな星が消えることがないきれいなノイズリダクションが特徴であるEOSの高感度耐性は、星空の撮影に適しているもので、レンズの明るさに縛られることも少なくなくなり、レンズの選択肢を大幅に広げてくれている。そのような中、表現方法に応じて60種類にも及ぶ幅広いレンズのラインナップから、撮影者が画角や個性でレンズを自由に選択できるのは、キヤノンEOSとEFレンズの大きな魅力といえるだろう。
この12月初旬、明け方の空に雄大な尾をなびかせた姿を見せてくれる(であろう)アイソン彗星の姿を写真に収める環境は整っている。まずはカメラを星空に向けてみよう。意外なほど簡単に星空が撮れることに驚くに違いない。
星空を撮影する際に大きな問題となるのは、レンズの収差と周辺光量の低下だ。どちらもカメラにとって避けられない問題である。
星は無限遠の点光源なので収差の様子が手に取るようにわかってしまう。星を撮るということは、非常に厳しいレンズテストをしているようなもの。さらに、強力なコントラスト調整をしなければならない星空の写真では、一般の撮影では問題にならない程度の周辺光量低下でも、非常に大きな問題となる。天の川や彗星のような淡い天体をクッキリと見せようとすると、画面周辺が真っ暗に落ちてしまうからだ。
そこで威力を発揮するのがデジタル一眼レフカメラ「EOS」シリーズに同梱されたRAW現像ソフト「Digital Photo Professional(以下「DPP」)」に搭載された「レンズ補正」と「デジタルレンズオプティマイザ(以下「DLO」)」である。DLOはEFレンズやEOSカメラごとに対応して、レンズやイメージセンサーの受光で光学的な原理に起因する画質低下を補正するというもの。星の撮影では、色収差やコマ収差の補正に効果がある。
DPPとDLOのレンズ補正撮影したままの画像では、コントラストが低くメリハリがない画像だ。これをそのまま星空に適したコントラストに調整すると、画面周辺が暗く落ち込んでしまう。そこでDPPで周辺光量を補正して画面内をフラットにする。さらにDLOを効かせて星像をシャープにした。DLOは微光星をよりクッキリと見せる効果もある。
カメラ:キヤノン EOS 6D/レンズ:キヤノン EF24-70mm F2.8L II USM(焦点距離:24mm)/露出モード:マニュアル/絞り:F2.8/シャッタースピード:80秒/ISO感度:3200/TP-2で追尾撮影
宇宙のはるか彼方からやってきた彗星が宇宙空間に浮かんだ様子をとらえるには、周辺の星空や地上風景を広くとらえた画面構成ができる広角レンズが最適。35mmフルサイズセンサーの「EOS 6D」なら、レンズのイメージサークルをフルに活用し、広角レンズ本来の画角で星空を撮ることができる上に高感度画質も優れるので、星を見た目どおりのイメージに写し止めたい星景撮影におすすめだ。
F1.4やF2の明るい大口径レンズは短時間の露出で済むことはもちろん、一眼レフのファインダーが明るく見えて構図が大変合わせやすいことも、光量の乏しい星空撮影では見逃すことのできない大きなメリットになる。
「秋の天の川とみなもの星」風もなく静まり返った高原の深夜。水面に映った星空を、大口径広角レンズの固定撮影でクッキリと切り取った。
カメラ:キヤノン EOS 6D/レンズ:キヤノン EF24mm F1.4L II USM(焦点距離:24mm)/露出モード:マニュアル/絞り:F2.2/シャッタースピード:30秒/ISO感度:3200/固定撮影
彗星そのものを克明に撮るときは望遠レンズの出番だ。星の日周運動を追尾する赤道儀を使用することによって、彗星の尾の様子までクッキリと撮ることができるだろう。太陽に近づいてくる時期から、宇宙の彼方へ遠ざかっていく時期まで、長い期間彗星の撮影を楽しむことができるレンズでもある。
もちろん彗星だけではなく、星空にたくさんある星雲や星団、天の川のクローズアップなど、望遠レンズで撮ってみたい星空の被写体は、それこそ星の数ほどある。そのような天体をとらえるには、望遠効果が優れたAPS-Cサイズセンサー搭載のキヤノン「EOS 70D」との組み合わせがおすすめ。
「アンドロメダ銀河 M31」230万光年の距離にある渦巻き銀河だ。われわれの住む銀河系などとともに、数十の銀河から構成される局部銀河群の中心的存在である。
カメラ:キヤノン EOS 70D/レンズ:キヤノン EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離:200mm)/露出モード:マニュアル/絞り:F2.8/シャッタースピード:3分/ISO感度:1600/TP-2で追尾撮影
高性能な標準ズームは、彗星をポイントにした広い星景から彗星自体のクローズアップまでこなしてくれるオールラウンダー。水平線に現れた彗星、こずえに輝く彗星、星座の中をゆく彗星などなど、さまざまなシチュエーションでの撮影が考えられる。そのような撮影で臨機応変に応用がきくのが明るい標準ズームレンズだ。この1本を自在に使って、個性的な彗星写真を狙ってもらいたい。
「冬の星をあおいで」高原の牧場にたたずむトラクターと冬の星座。オリオンと冬の大三角、淡い天の川が静かに頭上を巡る。
カメラ:キヤノン EOS 6D/レンズ:キヤノン EF24-70mm F2.8L II USM(焦点距離:24mm)/露出モード:マニュアル/絞り:F2.8/シャッタースピード:65秒/ISO感度:3200/固定撮影
固定撮影ではできるだけガッチリした三脚を使いたい。ぶれを少しでも防ぐために脚をめいっぱいには伸ばさず、エレベーターも使わない方がいい。露出中にリモコンを手から離すときも、カメラに振動が伝わらないように注意してそ~っと。
追尾撮影では、追尾エラーを未然に防ぐために、構図を合わせたらシャッターを開く前にもう一度極軸の方向を確認しておこう。固定撮影と同様、シャッターの開け閉めは慎重に。ショックを防ぐミラーアップの併用も効果的だ。
レンズに厳しい星の撮影には、高水準の光学性能と高精度な製造技術が要求される。今回使用したのは左からEF24mm F1.4L II USM、EF 24-70mm F2.8L II USM、EF70-200mm F2.8L IS II USM。一期一会のアイソン彗星を、明るい高性能レンズで出迎えたい。
画角(水平・垂直・対角線) | 74°・53°・84° |
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レンズ構成 | 10群13枚 |
絞り羽根枚数 | 8枚 |
最小絞り | 22 |
最短撮影距離 | 0.25m |
最大撮影倍率 | 0.17倍 |
フィルター径 | 77mm |
最大径×長さ | φ83.5mm×86.9mm |
質量 | 650g |
画角(水平・垂直・対角線) | 29°~10°・19°30'~7°・34°~12° |
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レンズ構成 | 19群23枚 |
絞り羽根枚数 | 8枚(円形絞り) |
最小絞り | 32 |
最短撮影距離 | 1.2m |
最大撮影倍率 | 0.21倍(200mm時) |
フィルター径 | 77mm |
最大径×長さ | φ88.8mm×199mm |
質量 | 1,490g |
画角(水平・垂直・対角線) | 74°~29°・53°~19°30'・84°~34° |
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レンズ構成 | 13群18枚 |
絞り羽根枚数 | 9枚 |
最小絞り | 22 |
最短撮影距離 | 0.38m |
最大撮影倍率 | 0.21倍(70mm時) |
フィルター径 | 82mm |
最大径×長さ | φ88.5mm×113.0mm |
質量 | 805g |