GANREF特別企画 三脚の上手な選び方&使い方

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GANREF特別企画 三脚の上手な選び方&使い方

レポート:礒村浩一

三脚といえば誰もが知っているカメラ用品の代表的なアイテムだ。カメラの固定撮影には必ず必要なものである。だがカメラを持っていても三脚は持っていないという人や、三脚を持っているがあまり使ったことがないという人も少なくない。そこで今回は三脚をどのように選び、またどのように使えば良いのかということを考えていきたい。

三脚を使えば写真のレベルは絶対上がる!

 三脚を使う状況としてまず考えられるのが、カメラを据え付けての手放しでの撮影だ。一般的には撮影者も一緒に写る集合写真であったり、ツーショットなどの記念撮影だろう。それだけを考えるとあまり三脚の出番は多くなさそうに思われる。だが写真を撮影して作品にまで仕上げるという目的となるとまったく使い方が変わってくる。
 作品撮影においての三脚の大きな役割は、「構図の安定」「正確なピント合わせ」「ぶれ抑制」の3つが挙げられる。まず「構図の安定」だが、三脚を使えば、どこまでの範囲を画角の中に収めるかをしっかりと確認し決定した上で撮影することができる。風景の撮影であればカメラの水平をきちんと合わせることは基本であり、固定された構図の中で適切な露出を導き出すことも大事だ。手持ち撮影では構図を決めてからシャッターボタンを押すまでの間に画角がずれてしまったり、傾いてしまったりすることが多い。また「正確なピント合わせ」もライブビュー撮影ができるカメラなら、これを最大限に生かして正確なピント合わせを行える。これらは三脚でカメラを固定することにより確実に行うことができる。
 次に「ぶれ抑制」だが、夜景撮影や絞りを絞り込み被写界深度を稼ぐようなスローシャッター撮影では、カメラを手持ちで撮影すると手ぶれ(カメラぶれ)を起こす原因となる。ましてや数秒間シャッターを開いての長時間露光などは手持ち撮影では不可能だ。このような状況で確実にカメラを固定するには、やはりしっかりとした三脚に固定する必要がある。
 このようにカメラを三脚にしっかりと据え付けて撮影を行うことで、ミスを防止すると同時により慎重に写真の構図や露出を決定することができる。さらにはスローシャッターでの撮影ができるので、撮影表現の幅を広げることも可能なのだ。

三脚必須の被写体はコレ!

風景
作例

急激に冷え込んだ秋の夜が明け、湿原にたゆたっていた霧が差し込む日の光に暖められ一気に流れ去る。カメラを三脚に据え付け、まだほの暗いころより構図を決めシャッターを切り続けたなかのひとコマをセレクト。

カメラ:シグマ DP1 Merrill/焦点距離:19mm/露出モード:マニュアル/絞り:F6.3/シャッタースピード:1/160秒/ISO感度:100/WB:晴天

作例

小さくてかわいらしい花をマクロレンズでとらえる。ピントを正確に合わせて、かつ手前にある花を大きくぼかし幻想的なイメージにするために、ローアングルでの撮影が可能な三脚にカメラを据え付けた。

カメラ:キヤノン EOS 70D/焦点距離:150mm/露出モード:絞り優先AE/絞り:F2.8/シャッタースピード:1/60秒/露出補正:+1EV/ISO感度:400/WB:オート

夜景
作例

山の上の展望台より港町を見下ろす。きらきらと輝く街明かりと港湾施設から流れ出すオレンジ色の照明の混在が不思議な雰囲気を描き出す。ISO感度を極力控え高画質とするために、しっかりとした三脚で長時間露光のぶれを抑制する。

カメラ:キヤノン EOS 70D/焦点距離:18mm/露出モード:マニュアル/絞り:F4/シャッタースピード:15秒/ISO感度:100/WB:オート

三脚があればこんな写真にも挑戦できる

作例

三脚を使えば極端なスローシャッター効果を生かした表現ができる。この作例では約3分間シャッターを開け続けることで、動かない岩場はそのままで、海面と波だけをその動きのままにぶらし、あたかも山にかかる雲海のような表情の写真とすることができた。ただし通常の明るさのもとでシャッタースピード3分で撮影すると極端な露光オーバーとなってしまうため、レンズに入ってくる光を減らすためにNDフィルターを使用している。

カメラ:キヤノン EOS 5D Mark III/焦点距離:85mm/露出モード:マニュアル(バルブ)/絞り:F5.6/シャッタースピード:181秒/ISO感度:100/WB:晴天/NDフィルター使用

作例

夜景撮影でのスローシャッター。海上に架かる高速道路橋を10秒の長時間露光でとらえた。そこを通過するクルマのライトの軌跡が光跡となって写り込んでいる。スローシャッターを生かした撮影では普段肉眼では目にすることができない時間の流れを、光の動きとして写真に写し込むことができる。ただしそれにはしっかりとした三脚でカメラをぶらさないように固定する必要がある。

カメラ:キヤノン EOS 70D/焦点距離:150mm/露出モード:マニュアル/絞り:F5.6/シャッタースピード:10秒/ISO感度:100/WB:オート

三脚選びのポイント

ひとくちに三脚といっても実はさまざまな大きさや重さ、形状のものがある。それぞれ載せるカメラおよびレンズの大きさや重量、また撮影するシチュエーションによって最適なものを選ぶようにしよう。

重さ・大きさ

 三脚はその大きさと重さで、「大型」「中型」「小型」「テーブル三脚」の大きく4種類に分けることができ、風景撮影などで一般的に使われているのは「テーブル三脚」以外の3種類だ。安定性や堅牢性は大きさに比例して高くなる。したがって撮影に使用するカメラが大きくて重い場合、もしくは望遠レンズ使用時など、少しのぶれも大きく画質に影響するようなシチュエーションではできるだけ大きくてしっかりとした三脚を選ぶようにしたい。ただし大きくて重い三脚は持ち運びがなかなか大変だ。特に移動の多い撮影などでは三脚を持ち歩くだけで疲れてしまう。そういった不安があれば、中型~小型の三脚を考えた方が良い。中型および小型の三脚でも使用する機材、およびシチュエーションによっては必要十分な安定性を得ることが可能だ。また、より軽量なカーボンファイバー製のモデルという選択肢もある。自分の撮影スタイルにふさわしい最適な重さ、大きさの三脚を選ぶようにしよう。

大型ながら軽量なカーボン三脚
製品画像

ベルボン
ジオ・カルマーニュE635M

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初心者でも扱いやすい小型軽量モデル
製品画像

ベルボン
ウルトラ455

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使用時の高さ・収納時の大きさ

独自のシステムでローアングルにも対応
製品画像

マンフロット
055XPROB,804RC2
プロ三脚+3ウェイ雲台セット

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 三脚は撮影時に脚をすべて伸ばした状態で撮影者の目線と同等になるのが基本的な高さといえる。なぜなら風景などは人の目線の高さで撮影したものが一番自然な状態のアングルとなるからだ。その状態より低ければ小型の三脚、大きければ大型の三脚といってよいだろう。また三脚の最低高も要チェックだ。しゃがんだ状態の高さを基本として、さらに低くなる機能を持った三脚であればローアングル撮影にとても便利だ。
 次に収納時の大きさだが、これは脚の段数と一段の長さによって決まる。一段の脚の長さを短くして段数を増やすことで、三脚を縮めた際の長さを短くしたモデルであれば持ち運び時にも邪魔にならない。その一方、脚一段の長さは長めだが、段数を少なくすることで部材を最小限にして軽量化を図っているモデルもある。

旅行などに最適な軽量コンパクトな三脚

小型軽量と最大耐荷重5.5kgの剛性を両立
製品画像

ジッツォ
GK1580TQR4
トラベラー三脚キット 1型4段

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 三脚のなかでも旅行などに携行することに特化した非常に軽量でコンパクトなモデルもある。非常に軽量な素材となるカーボンファイバーやマグネシウム合金などを部材に使用しているのが特徴だ。また三脚の折り畳み方にも工夫がなされており、スーツケースに収めることも可能だ。ただし最も高くした際の高さや、安定させることができる機材の大きさや重さに制限があるケースもあるので、全伸高のほか、普段使用している機材と三脚の耐荷重とのバランスもチェックポイントとなる。

雲台について

三脚と組み合わせてカメラを固定するのが雲台だ。雲台にもいくつかの種類があり、一般的には縦・横・軸回転の3ウェイ雲台と、球状になった土台にカメラを固定して自在に方向を変えられる自由雲台の2種類から選ぶことになる。

製品画像 3ウェイ雲台

 カメラを雲台に据え付けた状態から、左右方向の回転と前後方向の仰角回転、雲台を軸にした左右方向の水平回転をそれぞれ行うことができる。一軸ごとに固定できるので、カメラの水平合わせや仰角合わせなどを確実に行える。また3軸を半固定にしてギアの回転で動かすことができるギア雲台のようなものもあり、厳密な位置決めのための微調整には非常に便利だ。

製品画像 自由雲台

 球状になった土台を回すことで自由な方向にカメラを向けることができる。3ウェイ雲台のように動かす軸にとらわれることがないので、自在なアングルに即座に固定が可能。特にローアングルでの花の撮影や、天頂にカメラを向ける星空撮影などには非常に便利。ただし全方向への動きをワンアクションで留めなければいけないため、例えば水平回転のみの構図調整などの微調整には慣れが必要だ。弱めのテンションを球にかけることで、仮留めしながら動かすことができるテンションコントロール機能付きの自由雲台もある。

撮影時のポイント

三脚を使用した撮影では、その効果を最大限に引き出すためにも正しい使用方法を心掛けたい。誤った使い方をすると本来の安定性を損なうばかりでなく、カメラごと転倒してしまうなど危険な状況になってしまうことがある。

センターポールの使用は最小限に

撮影風景脚を伸ばしてセンターポールを上げていない良い例

撮影風景脚を完全に伸ばさずにセンターポールを上げている悪い例

 三脚に備え付けられたセンターポールはカメラの高さを脚の高さに加えて、さらにカメラを高く持ち上げることができるので便利だ。しかし3本の脚で固定された三脚本体に比べ、1本のパイプのみで支えられたセンターポールは振動にも弱く、ぶれの原因となる場合もある。あくまでもセンターポールでのカメラの上下は微調整やより高い位置から撮影したいときのためと考え、まずは脚を十分に伸ばした上で補助的に使用するようにしたい。脚を伸ばしていない状態でセンターポールを伸ばしてしまうとバランスが悪くなり、転倒する危険も出てくる。また、センターポールを伸ばしてハイアングルで撮影する際には、十分に三脚各部のロックを確認した上で、カメラがぶれていないことを確認してシャッターを切るようにしよう。

リモートケーブルやワイヤレスリモコンを使用してぶれを防ぐ

撮影風景ぶれを防ぐにはリモートケーブルが重宝する。

撮影風景最新機種ではスマートフォンでリモート撮影ができる。

 三脚に据え付けたカメラでも実際に撮影する際にぶれてしまうことも少なくない。その要因のひとつに、シャッターボタンを押したときの振動がある。このぶれは、リモートケーブルやワイヤレスリモコンを使って、撮影時にはカメラに触れないようにすれば防ぐことができる。特にスローシャッターや長時間露光での撮影では必ずこれらを使うようにしたい。カメラによってはシャッターボタンを押した数秒後にシャッターが切れる遅延モードや、事前にカメラ内のミラーを持ち上げるミラーアップモードが用意されているので、それらと併用するとより効果的だ。もしもリモートケーブルもワイヤレスリモコンも用意できない場合には、セルフタイマーを利用して、シャッターボタンを押した振動が消えた後にシャッターが切れるように設定する方法もある。また、Wi-Fi機能を搭載しているカメラの多くは、専用のアプリをインストールしたスマートフォンでリモート撮影ができる機能が搭載されているのでぜひ活用してもらいたい。

斜面など安定しない場所での使用ポイント

撮影風景脚の長さを調節してまっすぐに立てることで安定性が増す。

撮影風景斜面に対して横向きになる場合も同様。

 三脚は安定した地面の上で使用するのが基本だが、撮影地によっては足元に礫(れき)があったり雪や砂地だったりすることもある。このような場合には脚の先端部をスパイクに替えたりスノー&サンドシューを装着するなど状況に合わせるようにしよう。また地面が斜面だったり石垣や階段など段差のある場所では、三本の脚の長さをそれぞれ調整(低い側を長く)して三脚をできるだけまっすぐ立てるようにしよう。

GANREF特選 おすすめ三脚

重量級のカメラにも対応可能な
アルミニウム三脚
製品画像マンフロット
055XPROB,804RC2 プロ三脚+3ウェイ雲台セット
重さは1.23kgと軽量ながら
最大耐荷重5.5kgの堅牢性を誇る
製品画像ジッツオ
GK 1580TQR4 トラベラー三脚キット 1型4段
快適操作のレバー式ロック機構を
採用したカーボン三脚
製品画像ベルボン
ジオ・カルマーニュE635M
小型一眼カメラを対象とした
しっかり使える携帯用三脚
製品画像ベルボン
ウルトラ455

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