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特別補講 第1回
構図ドリルで学んだことを、さっそく撮影現場で実践してみましょう。今回訪れたのは、ローカル線として人気の小湊鉄道。折しも見ごろを迎えたイチョウの黄葉を列車とからめて、秋のあたたかな風景を表現します。
最高の条件がそろったローカル線の秋の風景。ですが、漫然と撮影してしまうと、ねらいはぼやけてしまいます。ここでは色づいたイチョウを主題に、列車を副題として、左にあげたその他の要素を取捨選択して、画面にバランスよく配置しようと思います。
主題をイチョウと決めたら、それがもっとも美しく見える立ち位置を探しましょう。今回は線路の手前にある看板がイチョウに重ならず、背景の山が高い位置を選ぶことで、イチョウが影に浮かび上がるように配慮しました。
イチョウと看板が重なる(B)は論外として、(C)は左下に列車を配置すればそれなりにバランスはよくなります。しかし、背景が空になるので、(A)のようなイチョウの透明感は損なわれます
ここではやはり、看板とイチョウが重ならない場所を選び、看板をカットするのがベスト。あとはタテ位置でイチョウを大きく写すか、ヨコ位置で右にイチョウを配置するかですが、重要なのは空の処理です
構図が決まったら、列車が来る前にピントを合わせましょう。このとき便利なのはライブビューAF。画面のなかで自由にピントの位置を決められます。もし使えない場合はAE/AFボタンにAF-ONを割り当てて、親指でAFしましょう。
構図を作る時点では列車は存在しないので、あらかじめ車両の大きさを予測して構図を作る必要がありますが、小湊鉄道のような非電化路線は目安となる架線柱などがなく、なかなかむずかしいのが現実。できれば早めに現場に行き、1本前の列車で確認してから本番に臨みましょう。下の完成カットを見ても列車は少ししか写っていませんが、適切な位置に置けば、存在感は失われないのです。
主題のイチョウと副題の列車を両面に置く位置は繊細に決めたいところ。パッと見た感じではいちばん右の写真がよさそうですが、日の丸構図に近くなっています。駅名板とほぼ対になる、左から2番目の写真がベストショットです。
ここで紹介するカットは両方ともイチョウを主題にしたものですが、列車の位置によって構図のバランスを変え、タテ位置とヨコ位置の2種類に撮り分けています。いろいろな構図を探すことで、自分だけの表現も生まれてきます。ぜひトライしてみてください。
絞り優先AE(F5.6、1/160秒)/ISO 250/WB:マニュアル
電柱や看板などの邪魔物をすべて排除し、縦位置でイチョウを大きく入れて空もカット。いいとこどりの構図になっています。列車の位置にも注目
今回はバーチャルな構図ドリルと、実際の撮影現場を紹介しながら構図の作り方を細かく開設しました。手順をおさらいすると、まずは主題がなにであるかを決めて、レイルマン比率などの構図作成法を参考にしながら、主題を置く位置を決めるところからスタートします。次に、副題を取捨選択し、バランスよく配置します。
じつはこの手順は、鉄道写真だけではなく、いろいろなジャンルに応用することができます。たとえばモデル撮影でも、モデルの目を主題と考えて、それを軸に構図を作ると見やすくなります。風景でもモデルでも鉄道でも、被写体のなかのどこに重点を置くか、を意識することが重要であり、そのことが「なにをどう撮るか?」の「なにを」に集約されているのです。
次回は露出とイメージについてお話しします!
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