GANREF特別企画 金環日食で始める天体写真ガイド 5月21日の金環日食を撮影しよう!
実勢価格:9万円前後
赤道儀は天体の日周運動を追尾する装置だ。長時間露出で星を点像に撮影したいときに使用するが、最近では星景写真の人気上昇にともなって一般にもよく知られるようになってきた。しかし、今回の日食は高速シャッターで撮影できる太陽面の撮影だ。太陽も日周運動をしているとはいえ、露出中に流れてしまうことはない。そこで「なぜ赤道儀を?」と疑問を持つ方もいるだろう。
その答えは、一度でも太陽や月のクローズアップ撮影をしたことがある方ならわかるはず。とにかく想像以上に日周運動は速いのだ。画面いっぱいに太陽を撮影しようとすると、あっという間に構図がずれてしまう。もちろんライブビューの拡大MFでピント合わせをしていても、じっくり腰を据えてできるものではない。
また、日食のピークが近づくにつれて緊張も高まり、必要以上にアセってしまうことも考えられる。構図合わせどころではなくなってしまって、ついつい思わぬミスの連発も……。金環日食という貴重なイベント。なんとしてもそのような失敗は避けたいものだ。
そこで使用をおすすめしたいのが赤道儀である。自動的に太陽を追いかけてくれるので、一度レンズの向きを合わせてしまえば、数分以上はそのままでだいじょうぶ(極軸合わせの精度にもよる)というわけだ。構図修正のわずらわしさから解放されるだけで、撮影成功の確率がグンとアップすること間違いない。
赤道儀がその機能を発揮するためには、何と言っても正確な極軸合わせが不可欠。赤道儀の回転軸と地球の自転軸を平行に据え付けないと太陽がどんどん写野から外れて行ってしまって、それでは赤道儀を使う意味がないからだ。
夜間の星空撮影では、赤道儀は北極星を目印にして極軸を合わせる。日食の撮影では前夜のうちに極軸を合わせておくというのもひとつの方法だが、そんな時間はとれないという人も多いだろう。となると、北極星なしで極軸を合わせなければならないわけだが、そんなときのことも考えられてデザインされているのがTOAST-Proだ。
TOAST-Proの三脚取り付け部は斜めにデザインされているのが特長で、その角度は35度になっている。つまり、水平な三脚に載せるだけで北緯35度に合ったセッティングになってしまうのだ。東京(北緯35.7度)、静岡(北緯35度)、大阪(北緯34.7度)といった地域ではそのままで1度以内という精度で据え付けられる。それ以外の南北に離れた地域では「傾斜計」やスマートフォンアプリの「水準器」機能を使用して傾斜を微調整すればOK。
一方、方位角調整はオリエンテーリングなどに使用できる目盛りつきのコンパスがあればよいし、スマートフォンアプリのコンパスを使用するのもいいだろう。その場合は偏角(コンパスの針と実際の北の方向にはズレがあり、現在関東付近ではコンパスの針は7度ほど西を指す)の修正を忘れずに。ちなみに、TOAST-Proは磁石を使った方位合わせを想定し、磁石に反応する部品はほとんど使用していないというこだわりも覚えておこう。
わずか1.5kgという軽量なTOAST-Proだが、軽合金のモノコックボディの剛性は非常に高く、直径83.5mmという大径ウォームホイールを使用することによって日周運動との誤差を±7"角以内という精度を実現しているという。これは400mm程度の焦点距離でも星を点像に写せる精度である。
太陽撮影は短時間露出なのでもっと長い焦点距離でも問題なく、軽量な望遠鏡であれば1000mmほどの焦点距離で使用するのも不可能ではない。300~500mm程度の望遠レンズなら楽々とこなすという感じ。この強度と精度を生かすために、できるかぎり頑丈な三脚を使いたいもの。
オプションのジンバルフォーク(超望遠での野鳥撮影などによく使われているもの)を使用すれば天体望遠鏡や超望遠レンズでもバランスの取りやすいシステムが構築でき、構図合わせも楽に行える。
名称 | TOAST-Pro |
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型式 | モバイル型自動天体追尾赤道儀 |
方式 | ビッグウオームホイール方式 |
本体寸法 | 幅:100mm×高さ:40mm(70)×奥行き:180mm ※( )は突起部含む |
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本体質量 | 約1.5kg ※本体のみ |
カラー | ブラッドオレンジ(濃赤色) ※モニターなどご利用の環境により、実際の色とは異なる場合がありますので、ご了承ください |
外部電源電圧 | DC6V-12V |
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動作温度 | 0℃~40℃ |
駆動時間 | 20時間以上(20℃)※単3形アルカリ電池4本使用時 |
歯数 | 150歯 |
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直径 | 83.5mm |
ピリオディックモーション | ±7″角以下 |
Pモーション周期 | 約9分35秒 |
追尾方式 | 完全自動追尾方式 |
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モーター | 超小型高精度ステッピングモーター |
モード | 星野撮影モード(キングスレート)、星景撮影モード(1/2倍速)、 北半球駆動モード、南半球駆動モード |