写真家・川北茂貴が勧める! 試す! フォトライフ快適化計画

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誰も撮ったことがない夜景写真を撮るために

プロといえども、いや、プロだからこそ常にアンテナを張り、最新の情報を入手するよう心掛けている。だからこそ、見た人が驚くような写真を撮ることができるのだ。川北氏はどのように撮影地を探しているのかを聞いてみた!

インターネットを利用してより多くの情報を得る

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工場夜景で有名な川崎。GANREFには1,000件以上も登録されていて、撮影の参考になる写真も多い。

撮影に出かける際は、いつどこに行けば何が撮れるのか、ほぼすべての情報をインターネットで調べる。以前ならパンフレットを見たり電話で問い合わせたりしていたが、情報の正確さと早さではネットにかなわない。例えば被写体となる夜の豪華客船の停泊時間なども、ネットで検索すれば一発でヒットする。案外見逃せないのが、先に現地にいる人たちのSNS上での呟きだ。公式ページでは変更が間に合わないような細かなことも、呟きから推測することができる。

これから夜景写真に挑戦してみたいと思っている人は、まずは書籍やネットでいろいろな写真に触れて真似してみること。真似した結果何が足りないか、なぜ失敗したかなどを考えていけば上達も早い。こういった場合に大いに役立つのが、例えば今あなたが見ているGANREFだ。特に人気撮影地であれば、参考になる写真もたくさんあるので、まずは人気スポットから入るのが良いだろう。

行こうと思った場所でどのような写真が撮れるのかが判明したとしても、道順や三脚を立てる場所などが不明だと、周辺を歩き回るだけでその日が終わってしまう可能性もある。そのようなことを避けるために、マップサイトの、現場の様子を画像で見ることができるサービスを利用して下調べをしている。これを活用すれば、まだ行ったことのない場所でも雰囲気を予習できるので安心だ。

インターネットの情報は、このように下調べで大いに役立つが、サイトや掲示板によっては、ウイルスが仕込まれていたり、偽ショッピングサイトへの誘導があったりする場合もあるので常に注意する必要がある。撮影地情報を調べている間にパソコンに保存された写真やさまざまなデータがロックされてしまった、ということがないように、セキュリティソフトは必ずインストールしておくべきだ。

自分だけの撮影地を見つける

有名な撮影地で撮る夜景は素晴らしい。すでに評価が定まった場所なので、同じような写真を自分でも撮れた時の感動はひとしおだ。でもそればかり続けていると、いつかは行き詰ってしまう。見覚えのある新鮮味の薄い写真ばかりで個性がないからだ。

そこから抜け出すには、自分で撮影地を見つけること。難しく聞こえるかもしれないが、夜になればすべてが夜景。家から一歩外に出ればすべてが夜景写真になりえるのだ。夜の道路、公園、橋、港など、まずは自分の近所から探してみよう。誰も撮っていない手付かずの傑作が撮れるかもしれないし、それがいつの間にか世間に広まって、定番の有名撮影地になる可能性もある。

でもそこに至るまでには、それ以上の「行ってみたけどダメだった」撮影地にも数多く遭遇するだろう。それは決して徒労ではない。「ダメだった」を繰り返すことで目が肥えてくる。失敗を重ねることで経験値を高めていくのだ。

撮影地探しでもうひとつ大事なのが機材選択だ。すでに有名な場所なら必要なレンズの画角なども予想できるが、無名の場所ならそうもいかない。家に置いてきたあのレンズがあればもっと良い構図で撮れたのにと悔やんでも後の祭り。持ち運びの手間はあるが、可能なら広角から望遠まで、広い範囲をカバーした画角のレンズを持って行こう。もちろんズームレンズで大丈夫。さらに魚眼レンズもあればインパクトのある夜景が撮れるかもしれず、万全の装備となる。

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夜の原宿・表参道。イルミネーションの時期ならともかく、普段は日常に埋もれて目立たないどこにでもある光景だが、降りたシャッターの金属に反射する光の模様がおもしろくて、手持ちでスナップしてみた。夜景の名所でも何でもない光景だが、これも夜景写真のひとコマ。シャッターチャンスはいつでもどこでもやって来るのだ。非日常感を強めるためホワイトバランスを白熱球に設定した後、さらに色温度を下げて青味を強調した。
焦点距離:14mm/絞り優先AE/絞り:F2.8/シャッタースピード:1/60秒/ISO感度:6400/WB:白熱球(色温度調整)

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東京駅近くの丸の内で撮影。直線で構成された都会のビル群は、魚眼レンズでわざと歪ませて描写させることで、その違和感が手軽に強烈なインパクトとなる。このとき魚眼レンズを持っていたからこそ撮れた写真だ。ここではビル群だけでなく、カーブする車の光跡を入れることでさらに印象深くした。
焦点距離:15mm/絞り優先AE/絞り:F11/シャッタースピード:8秒/露出補正:-1.7EV/ISO感度:100/WB:蛍光灯(白色)

新しい建造物などの情報をチェック

私は常に、誰も撮っていないであろう被写体との出会いを大切にしているが、比較的簡単に出会えるのが新しい建築物だ。高層ビルや商業施設、それに橋や道路、ジャンクションなどが開業・開通した際には、夜になるとどのような表情を見せてくれるのか、楽しみにしながら訪れるようにしている。前宣伝が盛んなものは開業前からすでに多くの人に撮影されているが、そうでなければまだ撮られた写真は少ない。もしかしたら自分が一番乗りの可能性が高いのだ。

新規物件の情報はやはりネットが主役だが、それ以外にもテレビやラジオのニュースや交通情報の何気ない言葉から拾うこともある。「本日〇時に○○大橋が開通します」といった情報には常にアンテナを張っている。新しい被写体はまだ外観の汚れもなく美しい。そして、やがて風雨やサビなどで年月を感じさせてくれるようになるが、それはそれで味があるものだ。外観がきれいなときに撮影した写真を持っていれば、後々見比べることができるのも、写真のおもしろさといえる。

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都心のジャンクション夜景の撮影スポットとして有名な有明ジャンクションを、すぐ近くにできた新しい公園から新しい構図で撮る。遠くにレインボーブリッジと東京タワーが見つけられただろうか。構図中央の上には街灯を配し、絞りを絞り込んで光芒を伸ばしてみた。
焦点距離:16mm/絞り優先AE/絞り:F11/シャッタースピード:15秒/露出補正:-2EV/ISO感度:200/WB:蛍光灯(温白色)

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新しい首都高速横浜北線とつながるために規模が大きくなった首都高速生麦ジャンクション。汚れのない白い高架と橋脚が白色の街灯に照らされ闇夜に浮かぶ。これからみんなにたくさん撮られて有名になるだろうが、それはうれしくもあり、ちょっと寂しくもある。
焦点距離:31mm/絞り優先AE/絞り:F11/シャッタースピード:13秒/露出補正:-0.3EV/ISO感度:200/WB:蛍光灯(温白色)