1実例で学ぶ! 作品仕上げテクニック(Lightroom編)
美しい背景のトーンを残しつつ
モデルの人肌をきれいに仕上げる
モデル:清水麻里
白とびと黒つぶれを意識してトーンをコントロールしよう
背景を活かしたポートレート写真では、撮影するシーンの一番明るい部分と一番暗い部分を把握することから始める。ここでは雪の中のポートレートを例に解説していこう。まず、雪が人物よりも明るいという点を理解しておく必要があり、このシーンでは、一番明るい部分というのは雪であって、一番暗い部分といえばモデルさんの髪だろう。
ポートレートの撮影では、JPEG撮って出しの場合は人肌に露出を合わせて撮るのがセオリーだが、RAW現像を前提とした撮影の場合はダイナミックレンジを最大限に引き出すために、白とびしないギリギリの露出で撮影する。その場合、[Before]のように、一見すると全体が暗い写真になる場合がある。撮影のときにどうやってハイライトギリギリに露出を合わせるかというと、ヒストグラムでハイライト側に注意するか、カメラのゼブラ表示機能を使って白とびが100%にならないようにする。白とびさせてしまうとデータが無くなってしまい、RAW現像でも階調を取り戻すことは不可能になるので、白とびしないように撮影時に気を付ける必要がある。
RAW現像で階調をコントロールする方法としてトーンカーブを使いこなすことも覚えておきたい。トーンカーブのチャンネルにはRGBの他にレッド、グリーン、ブルーのチャンネルがあるのでそこを操作できるようになると、劣化を抑えて明るさとカラー調整ができるようになる。
作品仕上げのポイント&Lightroom 活用ポイント
2実例で学ぶ! 作品仕上げテクニック(Lightroom & Photoshop連携編)
モデルさんに視線を集めるために
背景の細部にも気を配ろう
モデル:minori
Photoshopと連携させることで作品性を高める
LightroomとPhotoshopの役割については前述したように、それぞれに得意分野がある。Lightroomは大量の写真を簡単にセレクトできて、RAW現像にも最適だが、レイヤーを使った修正はできない。Photoshopはレイヤーを使用した高度なレタッチは可能だが、大量の写真のセレクトやRAW現像にはあまり向いていない。
Lightroomでレーティングを付けてセレクトし、RAW現像。そして、気に入った色が作れたらプリセットを作る。プリセットを作ることで次回の現像時間を大幅に短縮できる。現像が終わったら、「他のツールで編集」という項目からPhotoshopに画像を送ってレタッチを行う。
レタッチに関してのポイントは、「シンプルに見せるためには何が不要か」を考えると分かりやすい。顔のシミやシワ、小枝などの小さいものは修正ブラシツールやスタンプツールを使って消していく。大きいものを消す際は階調にも注意が必要だ。この作業のときに、あらかじめトーンカーブを使って階調をわかりやすくチェックできるレイヤーを作っておくとよい。色の階調に注意して修正作業を行えるので違和感のない修正結果が期待できる。ここではより作品性を高めるための修正作業のポイントを解説していこう。
作品仕上げのポイント&Photoshop活用ポイント
3実例で学ぶ! 作品仕上げテクニック(Photoshop編)
マスク作成は必要なし!
これが直感的にレタッチできるブラシテクニック
モデル:minori
ブラシツールと修復ブラシツールを使った肌修正
ポートレートのきれいな写真を撮ろうと思うと、逆光で撮りたくなることも多い。逆光ではどうしてもレンズのゴーストが写り込んでしまうことがあるが、その場合、諦めてそのまま使うか、違うカットを選ぶことになるだろう。しかし、カットによってはどうしても諦められない場合もある。そんなときこそPhotoshopに搭載されているブラシツールを使用する方法をおすすめしたい。上級者じゃないと無理と思ってしまうかもしれないが、慣れれば数分で修正することができるほど簡単だ。
使い方は至ってシンプル、「ブラシツール」のモードを「カラー」(不透明度100%)にして、ゴースト近くの影響ない部分の色を「スポイトツール」で拾ってゴースト部分を塗るだけだ。それでゴーストの色は消える。一方で色が全体的に同じになってしまいメリハリ感が失われてしまうので、ここでは「焼き込みツール」(範囲:シャドウ/露光量:3%)で明るさを落としてみた。これだけで違和感なく修正できてしまうのだ。
ブラシツールのモードの「色相」「彩度」「カラー」「輝度」は使い分けた方がいい場合がある。これらと修正ブラシツール、スタンプを使用することでじつはメガネに映り込んだ反射も違和感なく修正が可能なのだ。
作品仕上げのポイント&Photoshop活用ポイント
[まとめ] 写真家・関 一也は「Lightroom」「Photoshop」をこんなユーザーにおすすめする!
ポートレートはモデルさんがあってこそ成立する写真だ。モデルさんが喜んでくれるような写真を素早く提供できるようにセレクト、RAW現像、レタッチすることを心がけたい。それを実現するためには、Lightroomのプリセットを活用することと、Photoshopと連携することがポイントになる。実際に手順を踏んで試してもらえれば意外に簡単なのでぜひ試してもらいたい。まずはこれまで失敗して諦めていた写真を再RAW現像・再レタッチしてみると新しい発見があるかもしれない。「Lightroom」「Photoshop」の連携を覚えて、ポートレート写真をさらに楽しんでもらえればうれしい。