野鳥撮影で双眼鏡が必要な2つの理由
野鳥撮影になくてはならないモノ。それはカメラとレンズと双眼鏡である。
なぜ双眼鏡が必要なのか。理由は2つある。1つ目の理由は対象種の識別にある。野鳥は季節によって見られる種類が異なるのはもちろん、同じ種類でも雄雌や年齢、夏羽や冬羽というように季節によっても羽衣が変わるので、観察条件によっては識別が難しい場合もある。目の前の野鳥を正しく識別することはとても重要であり、優れた野鳥撮影者は例外なく良い双眼鏡を使っている。
双眼鏡が必要な2つ目の理由は野鳥の行動をつぶさに観察することにある。野鳥の動きを先読みし、たとえば野鳥が飛び立つ予備動作を観察できればシャッターチャンスを予期することができるし、あらかじめ画が見えればカメラの設定を詰めたり構図を追い込むのにも役立つ。
また、野鳥の表情が読み取れれば緊張しているのかリラックスしているのかということもわかる。もし相手が緊張していればストレスを与えないようその場を離れるなどの対処ができる。特にカメラ好きの延長で野鳥写真を楽しむ人のなかには、野鳥観察の経験を経ずに情報を頼りに動いてしまい、ほとんど周りが見えていないケースがある。結果として野鳥にストレスを与えて営巣放棄させてしまうなどの問題があるのだ。
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双眼鏡で野鳥の動きや表情を読むことが重要。撮影することばかりを考えるのではなく、野鳥観察を楽しむことが、先読みする力の向上にもつながるはずだ。
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コガモのメスが大きく羽ばたいた。日頃の観察を通じて「カモ類は水浴び後の仕上げに羽ばたく」ということを知っていれば、水浴びをしている個体に狙いを定めてこのようなダイナミックなシーンを撮影することも可能だ。
野鳥写真を始めたばかりの人は、双眼鏡を使わずともカメラの超望遠レンズで観察できると思われるかもしれない。しかし良い双眼鏡を覗いたときに感じる像の立体感や野鳥の生命感は、ファインダースクリーン越しに見る平面な像とは比べものにならない。双眼鏡で見ているシーンに感動して、写真に撮るのがもったいないとさえ思うことも少なくない。ミラーレスカメラが普及するであろう今後においては、生の光学ファインダー像ですらない電子ビューファインダー像を見ることになるため、ますます双眼鏡の必要性は高まるだろう。
フィールドで使う双眼鏡の選び方
良い双眼鏡の条件は、当然ながら「対象物がよく見えること」である。それは像がシャープに見えて適度なコントラストがあり、逆光時にフレアが出づらいことである。野鳥観察では野山を歩きながら対象物を探すことが多く、手持ちでの使用が前提になるので、双眼鏡の重量や手に持ったときのバランス、ピントリングなどの操作性の良さも重要である。
双眼鏡を選ぶ主なポイントは、「倍率」と「口径」である。野鳥観察においては8倍か10倍が人気だ。8倍は視野が広いため野鳥を導入しやすく、10倍は倍率が高いため遠くの野鳥が大きく見えるというそれぞれのメリットがある。口径とは対物レンズの口径で、25mm、30mm、40mm、50mmそれぞれのクラスがある。このうちスタンダードともいえるのが30mmクラスと40mmクラスで、30mmは軽量コンパクト、40mmは明るいというそれぞれのメリットがある。
多くの双眼鏡ブランドでは8×30、10×30、8×40、10×40というように8倍と10倍のモデルが30mmクラスと40mmクラスの口径でラインアップされており、ユーザーのニーズに合わせて選べるようになっている。
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野鳥を撮るときの基本セット。「ニコン D500」に、レンズは500mm f/4と1.4×テレコンを組み合わせて700mm f/5.6とし、35mm判換算1,050mm f/5.6相当で使っている。双眼鏡と三脚は堅牢かつ軽量なものを選びたい。
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双眼鏡はバックパックの雨蓋やサイドポケットなど、ほかの荷物の荷重や圧力がかかりづらいところに収納している。
双眼鏡を選ぶときにチェックすべきポイント
- 倍率
野鳥観察では8倍から10倍程度が使いやすい。視野の広さを優先する場合は8倍、少しでも大きく野鳥を見たい場合は10倍がおすすめだ。 - 見掛視界
同じ倍率なら見掛視界が広いほど実際に見える範囲が広い。野鳥は動きが素早いため、見掛視界が広い方が野鳥を導入しやすく追跡もしやすい。 - 明るさ
野鳥観察用双眼鏡では対物レンズの口径が30mmもしくは40mmクラスのものが一般的で、軽快さを重視するなら30mm、暗い場所で使うことが多いなら40mmとなる。 - 防水性
いつ現れるとも知れない野鳥に対応するためには、双眼鏡は常に首に掛けておくもの。そのため双眼鏡は防水性が高いものを選びたい。
双眼鏡の使い方の基本を覚えよう
双眼鏡の性能を最大限に発揮させるためには、正しい使い方を覚える必要がある。使い方といってもいたって簡単。使用前に各部調整を済ませれば、現場では対象物を捕捉してピントを合わせるだけで観察を楽しめる。
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1 アイポイントを合わせる
裸眼では接眼目当てを引き出して使用し、メガネ使用時は接眼目当てを引き出さずに使用することでアイポイントが合い、視野全体がケラレなく見られる。
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2 目幅を合わせる
両目で覗きながら左右の鏡筒を両手で持ち、開閉させることで目幅を合わせる。左右の視野がひとつの円形に見えれば両眼視できている証だ。
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3 左目でピントを合わせる(視度調整1)
両目の視度調整をするため、目標物を決めて左目だけで覗き、中心軸にあるピントリングを回してピントを合わせる。
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4 右目でピントを合わせる(視度調整2)
左目でピントを合わせたものと同じ目標物を、今度は右目だけで覗き、右側鏡筒にある視度調整リングを合わせてピントを合わせる。これで両目の視力差調整が完了する。
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5 使用時には対象物を目指して双眼鏡を構える。
まず肉眼で対象物を見つめて、間に双眼鏡を差し込むようにするとすんなりと対象物を導入できる。対象物の位置がわかりづらい場合は、近くの目立つ目標物を導入し、そこから辿るようにしていくのも有効だ。