こんにちは、ゲストさん
キヤノン初のAPS-C機の高級機「EOS 7D」は、ISO 6400の超高感度を常用化したほか、約8コマ/秒の高速連写と新設計の19点AFシステムにより優れた撮影パフォーマンスが与えられた。
公開日: 2009年10月29日
公開日: 2009年10月29日
キヤノン初のAPS-C機の高級機「EOS 7D」は、クラス最多画素数となる1,790万画素のイメージセンサーを採用し、ISO 6400の超高感度を常用化したほか、約8コマ/秒の高速連写と新設計の19点AFシステムによりフラッグシップ機のEOS-1D系にも匹敵する優れた撮影パフォーマンスが与えられた。以前お伝えしたボディレビューはベータ機でレポートしたが、製品版が入手できたので早速実写してみた。カメラの設定は、初期設定を基本にピクチャーコントロールは「スタンダード」、ホワイトバランスは「太陽光」または室内の一部で「オート」を使用、高感度ノイズ低減はすべて「標準」、オートライティングオプティマイザはすべて「しない」の条件でJPEG最高画質で撮影。レンズは「EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM」「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS」「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」「EF70-200mm F4L USM」の4本を使用している。
実写画像を見ると、常用範囲の上限とされるISO 6400をはじめ高感度特性が非常に優れていることがわかる。ノイズリダクションは強すぎると細かなディテールが消失し、弱すぎるとノイズ感が目立つことになるが、高感度域では解像感にあまり影響を与えない範囲で効果的にノイズ除去が行われている。ノイズリダクションの技術も秀逸だが、イメージセンサーおよび周辺回路を総合したノイズ特性の基本性能が高くなければ、やはりこれほどの描写性は得られないはずだ。優れた高感度の描写性を持ちながら、低感度域もISO 100から始まっているので、風景撮影やポートレート、花火の撮影などでも重宝するだろう。低感度域の描写性を見るとさすがにノイズ感は皆無で、ISO 400レベルまでなら低感度域と遜色ない画質が得られる。
JPEG画像の解像感については、全体にシャープネス(輪郭強調)のかかり具合は控えめながら、ハイライト部や明暗差の大きい境界部分ではシャープネスが強めにかかり、より解像感が高く感じられる。その一方で、中間調からシャドー部で明るさの変化が少ない部分ではシャープネスのかかり具合が抑えられ、低感度域でもノイズリダクションの影響のためかディテール部分の解像感が低下する場合も見受けられる。これは、「オートライティングオプティマイザ」を有効にした場合にシャドーの階調が持ち上がることがあるが、その際のノイズ感を抑える目的があるのではないかと推察される。その結果、風景撮影など、細かな樹木のディテールなどでやや解像感の不足を感じる場合もある。
このような場合は、高感度ノイズ低減機能を「しない」に設定するか、さらに解像感を高めに仕上げるにはRAWデータ撮影を行い、Digital Photo Professional(以下、DPP)上でRAW現像を行うとよいだろう。DPPではカメラ内部の画像処理とは別のアルゴリズムで画像処理しているので、現像結果はJPEGでの撮影結果より解像感が高めに仕上がる傾向がある。DPPでRAW現像する際の注意点は、デフォルトではJPEGの仕上がりとの差を少なくするためノイズリダクションのスケールが「0」ではない位置に設定されているので、解像感を重視する現像の際は「輝度ノイズ緩和レベル」「色ノイズ緩和レベル」とも「0」に設定する。こうすると、ノイズ感がわずかに上昇するものの、極めてシャープな描写が得られるようになる。それゆえ、解像感を重視したい風景撮影ではRAWデータを撮影しておくことをおすすめする。
さて、EOS 7Dは下位機種のEOS 50Dよりも2割ほど画素数がアップしたことでSN比では不利になるはずであったが、今回の実写結果によると高感度性能は総合的に見てほぼ同等で、ISO 6400以上ではむしろ向上しているとの印象を受けた。また、風景撮影などでの適性も、RAWデータ撮影+RAW現像の処置をとれば、1,790万画素の解像感をフルに生かした撮影が可能であることもわかった。加えて、ボディレビューでもお伝えした撮影の基本機能である、AF機能、ファインダー、迅速な基本動作の快適さは一般撮影においてはもはや申し分ない性能であるといえるだろう。トータルではAPS-C機における高級機として今最もバランスに優れた実力を持つデジタル一眼レフカメラという印象を強く感じた。
お詫びと訂正
掲載された作例写真のうち、奥日光・小田代ヶ原の朝の風景、および奥日光の山肌の写真におきまして、それぞれ「JPEGにて撮影」された写真と「RAWにて撮影」された写真が入れ替わって掲載されておりました。現在は修正されております。読者のみなさまと関係者の方々にご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。
(2009/10/29 20:15)
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キヤノン EOS 7D Amazonで購入する
公開日: 2009年09月30日
デジタル一眼レフカメラのラインアップの要となる中級機のレベルアップを目指して数年前に立ち上げられた「ミッドレンジプロジェクト」のもと、「妥協のない基本性能」「撮影スタイルを広げる先進機能」「五感に訴える感性品質」の3本柱をスローガンに開発が進められたという「EOS 7D」。今回は、どんな新機能が搭載され、そしてどんな最新技術が投入されているのかを詳細に見ていく。
注目のイメージセンサーには新開発のAPS-Cサイズ、約1,800万画素のCMOSイメージセンサーが採用された。先日発表されたコンパクトデジタルカメラの「PowerShot G11」では前モデルの約1,470万画素から約1,000万画素にあえて画素数を落として高感度ノイズ特性やダイナミックレンジを改善しており、センサーサイズが異なるとはいえ「EOS 50D」の約1,510万画素よりもさらに画素数アップすることは、一見これらの動きとは逆行する行為に見える。しかし、コンパクトデジタルカメラでは画素ピッチが非常に小さく、改善もすでに限界に達しているのに対し、デジタル一眼レフカメラの大型イメージセンサーではまだ改善の余地があり、今回のイメージセンサーでも、マイクロレンズのギャップをなくす構造の採用と合わせて、マイクロレンズとフォトダイオードの距離を短くする技術、微細化プロセスによるフォトダイオードの面積を確保する技術などにより集光効率をさらに改善し、約1,800万画素でありながら約1,510万画素のイメージセンサーと同等以上の性能を実現しているという。
一方、映像エンジンは最新の「DIGIC 4」を2個並列で使用する「デュアル DIGIC 4」を採用。14bitベースの大容量のデータを最高約8コマ/秒で処理するEOS-1D系並みのパワフルな処理能力が与えられた。同時に、高感度設定時の色ノイズや輝度ノイズを効果的に除去するノイズリダクションの技術により、常用ISO感度としてISO 100~6400、拡張設定によりISO 12800までの広範囲なISO感度設定を可能にしている。また、被写体の白飛びを抑える「高輝度側・階調優先」機能、被写体の明るさやコントラストを分析して、露出アンダーの場合は明るく、ローコントラストの場合はコントラストをアップするように階調を自動補正する「オートライティングオプティマイザ」機能などの高度な画像処理もリアルタイムで行う。
マイクロレンズの断面図比較 マイクロレンズの形状は「EOS 50D」同様レンズ同士の間隔がないギャップレスマイクロレンズを採用しているが、「EOS 7D」ではマイクロレンズとフォトダイオードの距離を短くし、微細化プロセスの導入で画素ピッチが小さくなりながらもフォトダイオードの面積を確保することで集光効率を上げている。
![]() (左)「EOS 7D」 (右)「従来機」 |
デュアル DIGIC 4 「EOS 7D」では画像処理の要となる映像エンジンに「DIGIC 4」を2個使用した「デュアル DIGIC 4」を採用。イメージセンサーから8チャンネルで読み出される膨大な画像データを高速に処理することで、約1,800万画素で約8コマ/秒の高速連写を可能にした。
記録画質 記録画質の面では、これまでの「S-RAW」に加え、「M-RAW」での撮影が可能になっている。「M-RAW」の画素数は「EOS 40D」と同じ1,010万画素なので、ある程度の画質は必要だが「RAW」の記録画素数である1,790万画素までは必要なく、記録容量を抑えたい場合などで大変有効だ。ちなみに「M-RAW」は1,010万画素だが、同じMでも「JPEG/M」は800万画素なので注意が必要だ。
さて、今回の「EOS 7D」では新しく開発された機能がめじろ押しであるが、その中でも筆頭に挙げられるのはEOS-1D系以外では初めて約8コマ/秒の高速連写を実現した点であろう。一眼レフカメラでは、ファインダー光学系とAF測距光学系に同時に光を送るため通常はレンズの後ろにあるメインミラーとサブミラーが下りた状態になっているが、シャッターを切ると両ミラーを跳ね上げ、後方にあるシャッターが走行してイメージセンサーに露光を与える。その後、再びミラーが下りてファインダー像が回復する仕組みになっている。連写を行う場合この動作を繰り返すのだが、AF測距はミラーが下りた位置でかつミラーが安定した状態でないと作動できないため、AF動作を行いながら高速連写を行うには、いかにミラーアップの時間を短縮し、早期にミラーを初期状態で安定させるかが重要になる。
そこで「EOS 7D」では、ミラーを高速動作させるために駆動系のモーターを2モーター化すると同時に、ミラーダウン時の振動をキャンセルするためのミラーバウンド防止機構を採用、約8コマ/秒の高速連写のメカニズムを完成させた。これとイメージセンサーから8チャンネルで読み出された信号を「デュアル DIGIC 4」で高速に処理することで約8コマ/秒の高速連写を実現しているのだ。
2モーターシステムとミラーバウンド防止機構 「EOS 7D」ではミラー駆動系とシャッターチャージ系にそれぞれ専用のモーターを割り当て、より高速に撮影動作ができるようにしている。また、メインミラーとサブミラーの振動を抑えるミラーバウンド防止機構を採用。AF機能が追随する約8コマ/秒の高速連写を実現した。
次に高級機の証しともいえる新機能が視野率約100%・倍率1倍のファインダー表示である。視野率約100%は、大型のペンタプリズムが必要で位置調整にもコストがかかることから、これまでフラッグシップ機のEOS-1D系以外で採用された例はなく、APS-Cフォーマットの最上位機である「EOS 7D」にかけるキヤノンの意気込みが表れている。視野率約100%を実現しているAPS-C機は他社にもあるが、倍率1倍はクラス初であり、視野角29.4°の大きくて見やすいファインダー表示を実現している。
またファインダースクリーン上の情報表示にキヤノン初の液晶デバイスを使用した表示が取り入れられ、グリッド、AFフレーム、電子水準器、スポット測光範囲などの表示が液晶で行われるようになった。液晶が入ったことにより、ピント合わせやファインダーの明るさに対する影響が危惧されるが、実際にはまったく影響は感じられず、明るくMFでのピント合わせがしやすい快適なファインダー表示が実現されている。
3機種のファインダー表示比較
「EOS 7D」「EOS 50D」「EOS 5D Mark II」のファインダー表示の違いを見るため、各機種のファインダー像をコンパクトデジタルカメラで撮影して比較してみた(注)。これを見ると「EOS 50D」の表示に比べ「EOS 7D」では格段に視野率が高く、倍率も上がって、「EOS 5D Mark II」に迫る大きなファインダー表示が得られていることがわかる。ファインダーのグリッド線や液晶表示がなされるようになったAFフレームも印象的だ。
注:ファインダー接眼部にコンパクトデジタルカメラを密着させて撮影しているが、レンズがやや後方にあるため実際の目で見るより視野率が若干狭く見えることと、「EOS 7D」「EOS 50D」はほぼ同一条件で撮影しているが、「EOS 5D Mark II」はフォーマットが異なり、撮影焦点距離が異なるので厳密な比較ではないことを付け加えておく。
![]() 「EOS 7D」 |
![]() 「EOS 50D」 |
![]() 「EOS 5D Mark II」 |
![]() 実画面 |
撮影関連機能での目玉機能としては、新AFシステムが挙げられる。新設計のAFセンサーは「EOS 50D」に採用されていた9点測距のAFセンサーの技術をベースにAFフレームが19点に大幅増強されたのをはじめ、19点すべてをF5.6クロスセンサーとし、中央には斜めにレイアウトしたF2.8クロスセンサーを重ねて配置している。また測距エリア選択もEOSとして初めて、19点のAFフレームを5つのゾーンに分割してゾーンごとにAFフレームを自動選択する「ゾーンAF」を導入したのをはじめ、従来からある1点AFでは通常の「1点AF」のほか、指定したAFフレームの上下左右のAFフレームも活用してピントを合わせる「領域拡大AF」、これとは逆に指定したAFフレームの反応範囲を縮小し、よりピンポイントでピントを合わせる「スポット1点AF」にも対応するなどAFエリアモードの機能も大幅に強化された。同時に動体に追随してピントを合わせる「AIサーボAF」は「AIサーボAF II」に進化し、これまでの距離方向の被写体追随に加えて縦横方向にも被写体を追随可能になった。また、「AIサーボAF」時の「自動選択AF」では最初のAFフレームを指定できるようになり、被写体を捕捉すると、その後すべてのAFフレームを利用して動く被写体を追随し、捕捉中のAFフレームの表示も可能になっている。
AFフレームの表示方法自体も、「EOS 50D」などではフォーカシングスクリーン上に配置されたAFフレームを合焦時に赤く照明することでスーパーインポーズしていたが、「EOS 7D」ではファインダー内の液晶で常時選択中のAFフレームが表示されるようになっている。また、「自動選択AF」では合焦時に使用したAFフレームをすべて表示する。これは従来からもEOS-1D系で採用されていた方式に近いが、液晶で表示可能になったところが新しい。また、合焦時の照明はグリッドを含めた液晶全体が赤く照明される方式であるが、デフォルト設定では明るい場所では照明されず、暗い場所でのみ照明される。ただしこれはカスタム設定で常時照明または照明なしを選択することも可能だ。
オールクロス19点測距のAFセンサー 「EOS 50D」の9点から、測距点が倍以上に増えた。19点すべてのAFフレームでF5.6クロスセンサーを採用、中央1点にはF2.8対応クロスセンサーを斜め方向に配置する。AF専用のプロセッサーも装備することで、多彩なAF機能に対応している。
AFフレーム選択(測距エリアの選択) 従来測距エリアの選択は「1点AF」または「自動選択AF」しかなかったため測距エリア選択画面はなかったが、「EOS 7D」では、「1点AF」のバリエーションとして「領域拡大AF」と「スポット1点AF」、新規に設定された「ゾーンAF」が加わったため最大5種類の測距エリアが選択できるようになった。測距エリアの切り替えはAFフレーム選択/拡大ボタンを押した後にマルチファンクションボタンで行う。
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AIサーボ時の被写体追従敏感度 EOS-1D系から移植された機能で、AIサーボAFで被写体を捕捉中に手前を別の被写体が横切った場合に別の被写体にピントを合わせる敏感度を設定する。「速い」に設定するほど別の被写体に対する敏感度が強くなる。
AIサーボ時の測距点選択特性 こちらもEOS-1D系から移植された機能。AIサーボAFで被写体を捕捉中に手前を別の被写体が横切った場合に、横切る被写体にピントを合わせる(測距中心優先)か、無視してもとの被写体にピントを合わせ続ける(測距連続性優先)かを選択する。
ファインダー情報の照明 デフォルトではAFフレームを赤く光らせる「ファインダー情報の照明」は「自動」になっており、合焦時でも明るい場所ではAFフレームは赤く光らない。これまでのように合焦時にAFフレームを常に赤く光らせるには「ファインダー情報の照明」を「する」に設定する必要がある。
「EOS 7D」では、測光システムも大幅に刷新され、「iFCL測光」(iFCL:Intelligent Focus Color Luminance)と呼ばれる新しい測光方式が導入された。まず、測光センサーには新設計の2層構造の63分割デュアルレイヤー測光センサーが採用され、被写体の明るさだけでなく色情報や光源の情報も同時に取得することで、従来被写体の色や光源によってばらついていた露出を、より適切にコントロールできるようになっている。また、63分割された測光エリアは19点のAFエリアと1対1で対応しているため、AF情報から被写体領域の検出が可能になり、被写体と背景のバランスを考慮した露出や主被写体に重みを置いた露出決定を可能にしている。ただ、選択したAFエリアと一致した測光エリアをピンポイントで測光する機能は見送られている。このほかにも露出関係では、ようやく露出補正幅が±5段まで可能になったのはうれしい改善点だ。
63分割デュアルレイヤー測光センサーの概念図 測光センサーの受光部分は2層に分けられており、光を電荷に変えるシリコンが深さによって吸収する光の波長が異なる性質を利用。上の受光層ではB+Gの光、下の受光層ではR+Gの光を検出して、被写体の色情報を得ることができる。将来はイメージセンサーにも応用できそうな技術だ。
63分割測光エリアとAFフレームの一致 63分割の測光エリアは中央部の19点が完全にAFエリアと一致しており、AF情報により被写体領域を分析し、被写体に重みを置いた露出決定が可能になった。また、測光センサーから得た被写体の光源や色の情報はAFの高精度化にも生かされている。
露出補正 露出補正がようやくではあるが、これまでの±2段から±5段に強化された。これにより、これまではマニュアル露出で撮影するしかなかった露出補正幅の大きな被写体も、撮影モードの切り替えなしに撮影できるようになった。
風景派にとってうれしい改善点としては、電子水準器が装備されたことであろう。左右の水平方向だけでなく前後の傾きも検知することができるので大変重宝する。感知精度は1°であるが、実際の使用では十分な精度だと感じられた。表示方法はライブビューや動画撮影時にINFOボタンによる画面切り替えで表示可能になるほか、撮影待機中にINFO画面のひとつとして背面液晶モニターに単独で表示することも可能だ。また、ファインダー内のAFエリアを利用して表示することも可能になっている。
ライブビュー撮影・動画撮影機能では、まず専用の切り替えスイッチとスタート・ストップボタンが新設され、操作方法がわかりやすくなった。また、ライブビュー機能については電子水準器の表示が可能になったほかに、コントラストAFの「ライブモード」と「顔優先ライブモード」時に、シャッターボタン半押しで動作が開始されるようになり、合焦スピードも体感的には約2倍に高速化されている。
新たに追加された動画撮影機能は「EOSムービー」と命名され、初搭載された「EOS 5D Mark II」のユーザーの意見を踏まえてさらに進化してきた。まず記録画質は1,920×1,080のフルHD画質で、フレームレートは30pと24pが選択可能(PAL方式は25p)になったほか、1,280×720のHD画質と640×480のSD画質では60p(PAL方式は50p)の撮影が可能。用途に応じて多彩な記録画質が選択できるようになった。露出もマニュアル露出が可能になったため、露出を固定したり、ハイキーやローキーな表現やレンズのぼけ味を生かした撮影など、多彩な表現を可能にしている。また、動画の前後をカットする編集機能も備わったため、パソコンなしに余分なシーンをカットできるようになった。
ライブビュー撮影時の画面 ライブビュー機能は従来と大きく変わることはないが、ライブビュー画面で水準器を表示できるようになった。また、コントラストAFの「ライブモード」と「顔優先ライブモード」では、シャッターボタン半押しでAFが動作し、速度も体感的には約2倍に高速化されている。
動画記録サイズ 動画記録サイズはフルHD画質では通常の30pと、映画などで使われる24pが選択可能で、HD画質とSD画質では動きに強い60pでの撮影となる。フルHD画質の25pとHD画質、SD画質の50pは別メニューでPAL方式を選択すると撮影可能になる。
「EOS 7D」では、外観デザイン、操作ボタン類の使い勝手とその品質、連続撮影のメカニズム、AFシステム、AEシステム、ライブビューや動画撮影などの最新機能、そして最新のイメージセンサー技術と画像処理技術による高画素化と高感度化の両立など、ありとあらゆる部分に最新の要素技術が投入されている。それと同時に微に入り細をうがち改良が重ねられ、従来のキヤノンの中級機のイメージを払拭する高級機に仕上げられた。このことは、スペック上でも明らかだが、実機を手にして撮影してみるとより一層実感できるはずだ。特に視野率100%ファインダーと新AFシステムの使い心地はEOS-1D系の操作感にも共通する部分があり、極めて快適で高い満足感が得られる。近ごろはライブビューがもてはやされ、光学ファインダーが軽視される傾向があるが、気持ちのよいファインダーとAF機能によって、あらためてファインダー撮影の楽しさを再認識することとなった。
今回は実写での評価はできなかったので、実写レポートは後日となるが、「EOS 7D」は少なくとも撮影機能面では“破天荒”(前人のなしえなかったことを初めてすること)という言葉がぴったりの高級機と結論づけておこう。
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公開日: 2009年09月18日
10月2日、キヤノンから発売される「EOS 7D」は、これまでのキヤノンのデジタル一眼レフカメラのラインアップにはなかったAPS-Cフォーマットの高級機という新しいカテゴリーのデジタル一眼レフカメラだ。キヤノンではこれまで、APS-Cフォーマットのデジタル一眼レフカメラにおいては、初級機に「EOS Kissシリーズ」という巨大ブランドがあり、中級機には「EOS 50D」に至る2ケタシリーズがラインアップされていたが、それ以上の性能を求めるといきなりハイエンドのEOS-1Dシリーズしか選択肢がないという状態が続いていた。そこで「EOS 7D」は、EOS-1Dシリーズを購入するほどの予算はないが、「EOS 50D」の基本機能では物足りないと感じる、いわゆる「ミドルハイクラス」のカメラを求めるユーザーのために開発されたモデルだ。他社ではこのクラスにはすでに、ニコン D300Sやペンタックス K-7などがあり、これらのライバル機種と真っ向からぶつかるモデルともなる。それでは早速「EOS 7D」を、「EOS 50D」「EOS 5D Mark II」との比較を交えて詳細に見てみることにしよう。
「EOS 7D」を実際に手にすると、「EOS 50D」や「EOS 5D Mark II」などのEOSらしいデザイン基調を継承しながらも、EOSの原点をほうふつとさせる「超流体デザイン」を取り入れ、すべて曲面で構成された頭頂部のデザインに新しい息吹が感じられる。一方で、そのズシリとした心地よい重量感は高い品位を予感させ、機能やメカニズムの凝縮感を演出すると同時に少々のことではダメージを受けない堅牢感が伝わってくる。
これと並行して操作ボタン類のレイアウトは「EOS 5D Mark II」同様に液晶モニターの左側で縦方向に並べるスタイルを復活させ、ライブビュー・動画撮影切り替えスイッチやクイック設定ボタン、ワンタッチRAW+JPEGボタン、マルチファンクションボタンなどの追加により、操作性を大きく改善してきた。また主なボタン類を大型化し機能名をボタン表面にプリントしたほか、ボタン表面をつや消し仕上げとしてシックなイメージを演出したり、押したときの操作感やダイヤル類のクリック感に至るまで、細部にわたってこだわりを持った改善が施されている。
さらには、シャッターボタンのフィーリングも、半押し時のクリック感がなくなり、EOS-1D系に近いしっとりとした操作感となったほか、シャッター音についてもこれまでのプラスチック感が抜けて、キレのある心地よい音に作り込まれている。シャッター音を録音したので、実際に聞いて心地よい音を体感してほしい。
EOS 7Dのシャッター音 |
EOS 50Dのシャッター音 |
EOS 5D Mark II のシャッター音 |
グリップについても、伝統のグリップの基本形状を維持しながら、よく見ると前面グリップ部の内側が若干削られていたり、背面の親指の掛かる部分が以前より盛り上げられたほか、従来はすべて同じ厚さであった表面のラバー素材も場所によって厚めにするなど、フィット感を大きく向上させ、長時間の使用でも疲れにくくしている。このように「EOS 7D」は、デザイン面の多くの部分で「本質感」が与えられ、従来キヤノンのこのクラスのカメラにはあまり感じられなかった「高級感」の演出に成功しているといえるだろう。
ボディカバーは当然ながらマグネシウム合金製で十分な堅牢性を確保しているのに加え、カバーのつなぎ目部分は高精度な段差合わせ技術により、細かなホコリや水の浸入を防いでいる。また、ボタンやダイヤル部分の内側や、メモリーカードスロットカバーやインターフェース部の開口部などもすべてシーリングされ、「EOS 5D Mark II」とほぼ同等の防塵・防滴性に優れた構造を採用している。
ボディサイズは148.2×110.7×73.5mm(W×H×D)と、「EOS 50D」(145.5×107.8×73.5mm)よりも若干大きく、「EOS 5D Mark II」(152.0×113.5×75mm)よりやや小さいが、頭頂部が大きく盛り上がっているため「EOS 5D Mark II」とほぼ同じサイズに見える。重量は約820g(本体のみ)と、「EOS 50D」比で90gほどアップ、「EOS 5D Mark II」よりも10g重く、3機種中では最も重い。しかし、無駄に重いというよりは中身がたくさん詰まった凝縮感のある重みなので、重量感とともに重厚感もアップしたように感じられるのが不思議だ。
背面液晶モニターは3型約92万ドットのスペックに変更はないが、表面の保護カバーを従来の樹脂製カバーから強化ガラスに変更し、液晶パネルと強化ガラスの間に光学弾性体を充填することで反射面を減らした「クリアビュー液晶 II」が採用された。「クリアビュー液晶 II」では、従来の「クリアビュー液晶」よりもカバーガラスを含めた反射面が2面少なくなっているため、余分な外光の反射を最小限にとどめることができ、過去最高のクリアで明るく見やすい液晶表示を実現している。
操作体系の基本は「EOS 50D」と大きく変わることはないが、電源スイッチが独立したり、クイック設定ボタンやワンタッチRAW-JPEGボタン、ライブビュー撮影/動画撮影スイッチの新設で操作がよりわかりやすくなっている。しかし、「EOS 50D」では背面液晶モニターの下側にレイアウトされていたボタン類がモニター左に移っていたり、特にAF関連の表示や機能が従来と比べて大幅にグレードアップしているため、「EOS 50D」の操作に慣れている場合は多少戸惑いもあるだろう。しかし、使い込むうちに操作の流れの上では「EOS 7D」の方が洗練されていて、使いやすく感じられるはずだ。
また「EOS 7D」では、EOSとしては初めての本格的な操作ボタンのカスタマイズ機能が追加されている。これまでもシャッターボタン、AF-ONボタン、AEロックボタンの機能の組み合わせをセットで変更できたものの、これらを個別にカスタマイズすることはできなかった。カスタマイズの一例としては、例えばAF-ONボタン、AEロックボタンの双方に「AE・AF開始」機能を割り当て、AF-ONボタンは選択中のAFフレームでのピント合わせを指定し、AEロックボタンにはあらかじめ登録したAFフレームでのピント合わせを指定しておくと、AF時に押すボタンを選ぶだけで、選択AFフレームでのピント合わせか登録AFフレームでのピント合わせかを瞬時に切り替え可能になる。また絞り込みボタンや超望遠レンズに装備されているレンズボタンに「登録AF機能に切り換え」機能を割り当てると、ボタンを押している間だけ使用中のAF機能からあらかじめ登録しておいたAF機能設定に切り替え可能になる。
これまでも一部のボタンでは機能の入れ替えなどが可能であったが、「EOS 7D」では主な操作ボタンやダイヤルに自由に機能割り当てができるようになった。もちろん各ボタンで設定できる機能は、ある程度限定されているが、それでも従来から比べるとはるかにユーザーの設定自由度が広がっている。
絞り込みボタンには、本来の絞り込み機能のほか、AE-OFF、AEロックなどの5種類の機能が割り当てられるが、このなかでも注目したいのが「登録AF機能に切り換え」機能だ。この機能を選択すると、ボタンを押している間だけ使用中のAF機能からあらかじめ登録しておいたAF機能設定(AFエリア、AIサーボAF時の被写体追従敏感度、1コマ目/2コマ目以降動作、測距点選択特性が設定可能)に切り替えることができるようになる。これは例えば自動選択AFモードでスポーツなどを撮影している際、急に1点AFやゾーンAFでひとつの被写体を追いかけたい場合などでも、登録AF機能に希望の測距エリアモードや各種AF設定を登録しておけばボタンを押している間だけ登録AF機能に切り替えることができる。
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公開日: 2009年09月01日
キヤノン株式会社は、9月1日、APS-Cフォーマットのなかでは最上位モデルとなる「EOS 7D」、「EOS 7D」の標準キットレンズとなる「EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM」、および「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS」を発表した。
「EOS 7D」は、有効画素数約1,800万画素のCMOSセンサー(APS-Cサイズ)を採用。レスポンスと高画質の両立を実現するため映像エンジン「DIGIC4」を2つ搭載する「デュアル DIGIC4」、約8コマ/秒の連写速度、全点クロスセンサーの19点AFセンサー、視野率100%、ファインダー倍率1倍のファインダーなど、最上位機にふさわしい性能を持つデジタル一眼レフカメラとなっている。
また、測光システムには19点のAFフレームに対応し、どのAFフレームで被写体をとらえても、その測光エリアに適切にウエイトがかけられる、新開発の「iFCL測光システム」を搭載。AF情報や色情報を利用し、安定した露出制御を実現しているという。
ISO感度に関しては、「EOS 50D」の常用ISO感度100~3200に対して、100~6400まで拡大されている。感度拡張による最高ISO感度は12800と、「EOS 50D」と同様。
そのほか、ライブビュー撮影時に水平および前後の傾きを確認できる電子水準器の搭載、露出補正幅を±5EVに拡大、耐久回数15万回のシャッターユニットの搭載、防塵・防滴性能の向上など、さまざまな部分で「EOS 50D」を上回るスペックとなっている。
背面液晶モニターは、3型・約92万ドット(VGA)と、スペック上は「EOS 50D」と同じだが、強い外光下での見やすさが向上するという「ソリッド構造」を採用している。
そのほかの「EOS 50D」とのスペックの違いは、このページの最下部にある表および機材DBのスペック表を参考にしてほしい。
動画撮影に関しては、EOS 5D MarkIIと同様にフルHDによる動画記録が可能。内蔵マイクでのモノラル録音、外部マイクを使用したステレオ録音に対応している。
「EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM」は、フルタイムマニュアルや円形絞りの採用、シャッタースピード換算約4段分の手ぶれ補正効果が期待できるIS機構の搭載が特長だ。
「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」は、新開発の「ハイブリッドIS」を搭載。従来の、ボディを中心として扇状にぶれるアングルブレを打ち消すと同時に、ボディが水平のまま上下にぶれるシフトブレに対しても補正効果を発揮するという。
「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS」は、455gという軽さが特長。高倍率ズームレンズは欲しいけれども、焦点距離18~200mmのズームレンズでは重く感じるというユーザーには最適のレンズだ。
EOS 7D対応アクセサリーとして、「バッテリーグリップ BG-E7」、「ワイヤレスファイルトランスミッター WFT-E5」、「レザーケース EH20-L」も同時に発表された。
今回発表された各製品の発売予定日と価格は下にある表のとおり。「EOS 7D」のレンズキットは、「EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM」を加えた「EF-S15-85ISU レンズキット」と、「EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS」を加えた「EF-S18-200IS レンズキット」の2種類となっている。
キヤノン株式会社は、9月1日、デジタル一眼レフカメラ「EOS 7D」の発表会を開催した。発表したのは上記のとおり、「EOS 7D」や交換レンズなど。
発表会ではまず、キヤノンマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長 川崎正己氏が、国内一眼レフ事業戦略について説明。エントリー機でのシェアNo.1のEOS Kissシリーズが、デジタル一眼レフユーザーの裾野を広げることに成功したが、写真やカメラは経験を積めば積むほど、上達すればするほど奥が深まっていくものであり、その楽しさを多くのユーザーに体現してもらうためにも、「ミドルハイクラス」の拡充が重要である。その「ミドルハイクラス」の決定版が「EOS 7D」であると話した。
続いて、キヤノン株式会社 取締役 イメージコミュニケーション事業本部長 真栄田雅也氏が、新製品の特長について説明。開発・企画・販売が一体となった社内横断的検討チームで推進する「ミッドレンジプロジェクト」を立ち上げ、写真とカメラを愛するハイアマチュアユーザー層に満足してもらえるカメラを追求。「EOS 7D」の機能や性能、デザインなどは「妥協のない基本性能」「撮影スタイルを広げる先進機能」「五感に訴える感性品質」を求めた結果であることを話した。
最後に、キヤノンマーケティングジャパン株式会社 常務取締役 コンスーマイメージングカンパニー プレジデント 佐々木統氏が、新製品の国内マーケティング戦略について説明。「EOS 7D」の広告宣伝スケジュールのほか、2008年には600講座だったEOS学園を2009年は800講座に増やすなど、フォトカルチャー活動を活発化させることの重要性について話した。
![]() キヤノンマーケティングジャパン株式会社 |
![]() キヤノン株式会社 |
![]() キヤノンマーケティングジャパン株式会社 |
製品名 | 希望小売価格・税込み (予想実勢価格) |
発売予定日 |
---|---|---|
EOS 7D ボディ | オープン価格 (190,000円前後) |
2009年10月2日 |
EF-S15-85ISU レンズキット | オープン価格 (270,000円前後) |
2009年10月2日 |
EF-S18-200IS レンズキット | オープン価格 (260,000円前後) |
2009年10月2日 |
EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM | 110,250円 | 2009年10月2日 |
EF100mm F2.8L マクロ IS USM | 126,000円 | 2009年10月2日 |
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS | 68,250円 | 2009年10月2日 |
バッテリーグリップ BG-E7 | 21,000円 | 2009年10月上旬 |
ワイヤレスファイルトランスミッター WFT-E5 | 99,750円 | 2009年11月上旬 |
レザーケース EH20-L | 13,650円 | 2009年10月上旬 |
EOS 7D | EOS 50D | |
---|---|---|
有効画素数 | 約1,800万画素 | 約1,510万画素 |
ファインダー視野率 | 約100% | 約95% |
ファインダー倍率 | 1倍 | 約0.95倍 |
測距点 | 19点(全点クロス測距) | 9点(全点クロス測距) |
測光方式 | 63分割TTL開放測光 | 35分割TTL開放測光 |
ISO感度 | 100~6400、 12800までの感度拡張が可能 |
100~3200、 12800までの感度拡張が可能 |
露出補正幅(最大) | ±5EV | ±2EV |
シャッター耐久回数 | 約15万回 | 約10万回 |
内蔵ストロボの照射角 | 焦点距離15mm相当の画角に対応 | 焦点距離17mm相当の画角に対応 |
連続撮影速度(最高) | 約8コマ/秒 | 約6.3コマ/秒 |
動画撮影 | あり | なし |
液晶モニター | 3型・約92万ドット TFT式カラー液晶モニター |
3型・約92万ドット TFT式カラー液晶モニター |
ボディ素材 | マグネシウム合金 | マグネシウム合金 |
大きさ(W×H×D) | 148.2×110.7×73.5mm | 145.5×107.8×73.5mm |
重さ(ボディのみ) | 約820g | 約730g |
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