信州の春夏を楽しむ 自然風景 おすすめ写真撮影スポット | GANREF
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信州の春夏を楽しむ 自然風景 おすすめ写真撮影スポット

大自然に囲まれた信州では、バリエーション豊かな風景に出会うことができます。美しい水の流れに癒しを感じたり、樹齢数百年の古木に歴史を感じたりと、それぞれの風景から感じ取ることができる印象もさまざまです。ここでは、ぜひ一度は訪れ、写真に残したい信州の自然風景を、風景写真家・萩原史郎氏のナビゲートでお届けします。 [執筆・撮影:萩原史郎]

萩原史郎ナビゲーター:萩原史郎 Shirou Hagihara
1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。著書に『四季の風景撮影』シリーズ(日本カメラ社)、『構図決定へのアプローチ法』『RAWから仕上げる風景写真テクニック』『自然風景撮影 上達の鉄則60』『風景写真の便利帳』(玄光社)ほか多数。2015年フジフイルムスクエア企画展『色 X 情』開催。長野県内各地で四季折々の景色を撮影しているので、信州の撮影地で出会うことができるかもしれない。

信州の魅力

「信州を特集しなさい」。かつて写真誌の編集者だった頃に教えられた格言のようなこの言葉は今でも鮮明に覚えています。信州の口絵や撮影地ガイドを組むとやはり売れ行きはよく、それほど信州には深い魅力があるのだと思い知らされたものです。春には桜を中心として、さまざまな風景がきらめき、夏には緑が水のせせらぎとともに美しい姿を見せてくれます。南北に長い信州ですが、そのいずこにも撮影したくなるスポットがあり、どこへ行っても写真が撮れるという魅力があるからこそ、写真家が訪れるのです。そんな信州の春から夏の撮影スポットをご案内しましょう。

おすすめ桜スポット3選

桜はそれこそ信州の全域にあります。それも全国的に有名な木が目白押しです。一方で名は知られていませんが、美しい姿態を見せる桜も探せばいくつも見つかります。名を馳せる桜を撮影する旅。名もなき桜を探す旅。いずれの旅もきっと楽しいに違いありません。

田多井のしだれ桜

安曇野の桜の中でも物語性を強く感じる桜の代表格が田多井のしだれ桜です。離れた位置から見ると2本の桜が寄り添って見えるので、その姿を望遠ズームレンズで切り取ることがこの桜を表現するときの基本形。背景に見える山の稜線をどのように絡めるか、この辺りも考えながら構図を作るとバランスの良い作品が出来上がります。桜は墓場にあるので、立ち入らない方がよいでしょう。

  • 田多井(たたい)のしだれ桜
  • 田多井(たたい)のしだれ桜/撮影時期:4月下旬/焦点距離:118mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/5秒/絞り数値:F11/露出補正:-0.3EV/ISO感度:200

    長野県安曇野市堀金三田
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黒部のエドヒガン桜

高山村にはしだれ桜を中心にして多くの桜がありますが、ひときわ異彩を放つ存在は、黒部のエドヒガン桜といわれる推定樹齢約500年の古木です。西側を背景にできるため、条件がよければ夕焼けと絡めて撮影できます。晴れた日は高山村の桜旅の最後に撮影することをおすすめします。

  • 黒部(くろべ)のエドヒガン桜
  • 黒部(くろべ)のエドヒガン桜/撮影時期:4月下旬/焦点距離:153mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/1,100秒/絞り数値:F4/ISO感度:800

    長野県上高井郡高山村高井黒部
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氏乗のしだれ桜

秀麗な形がなんとも魅力的なしだれ桜です。分教場の跡地にある桜で、寄っても引いても撮影できます。赤みが強い桜なので、晴れているときは青空によく映えます。超広角ズームを持っている場合は、近くまで寄って見上げるようにして構図を作ると、この桜の美しさを引き出すことができるでしょう。

  • 氏乗(うじのり)のしだれ桜
  • 氏乗(うじのり)のしだれ桜/撮影時期:4月中旬/焦点距離:18mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/80秒/絞り数値:F11/露出補正:+0.7EV/ISO感度:100

    長野県下伊那郡喬木村氏乗
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信州の桜情報  爽やか信州旅.net「信州さくらだより」

おすすめ花スポット3選

信州の花は桜だけではありません。百花繚乱というようにさまざまな花が咲き乱れる、信州はまさに全域が花園と言ってよいかもしれません。伊那梅苑を代表とする梅があり、4月から5月にかけては各地で菜の花が咲き乱れ、山麓では水芭蕉も見られます。夏になれば、八千穂高原や鉢伏山ではレンゲツツジ、車山や霧ケ峰ではニッコウキスゲなどの大群落も撮影できます。

丹霞郷の桃と菜の花

10haほどのエリアに約1,500本ほどの桃の木があり、洋画家・岡田三郎助が「丹(あか)い霞がたなびいているようだ」と言ったことから丹霞郷(たんかきょう)と呼ばれているそうです。まさに桃源郷。菜の花も咲いているので、晴れた日は空の青、桃のピンク、菜の花の黄色の3色を重ねた色表現が楽しめる場所です。

  • 丹霞郷(たんかきょう)の桃と菜の花
  • 丹霞郷(たんかきょう)の桃と菜の花/撮影時期:4月下旬/焦点距離:35mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/150秒/絞り数値:F11/露出補正:+0.3EV/ISO感度:100

    長野県上水内郡飯綱町平出
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戸隠森林植物園

森の奥へ歩いて行くと、白い妖精のような水芭蕉が見えてきます。遊歩道の上から見ることになるので、群落風景として表現することが基本となりますが、場所によっては低い位置まで降りることができます。そういう場所ではカメラポジションを低くして、水芭蕉と同じ高さの目線から、超広角レンズを使って撮影すると個性的な表現ができます。

  • 戸隠(とがくし)森林植物園
  • 戸隠(とがくし)森林植物園/撮影時期:4月下旬/焦点距離:15mm//絞り優先AE/シャッター速度:1/250秒/絞り数値:F11/ISO感度:100

    長野県長野市戸隠
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菜の花公園

千曲川に沿って斜面が黄色く染まる場所がありますが、それが菜の花公園です。斜面を利用しているので起伏があり、立体的な撮影を楽しめる場所です。背景には山や千曲川、赤い橋などを入れることもでき、夕方には夕日と絡めることもできます。年によっては菜の花畑にある桜と満開が重なることもあり、そういった年は傑作が狙えるチャンスです。

  • 菜の花公園
  • 菜の花公園/撮影時期:4月下旬/焦点距離:36mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/250秒/絞り数値:F11/露出補正:+0.3EV/ISO感度:100

    長野県飯山市瑞穂
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信州の花情報  爽やか信州旅.net「信州花だより」

おすすめ残雪スポット3選

信州には海がない代わりに、峻険な山があります。春から夏にかけて山には雪が残り美しい残雪模様を描きますが、風景を撮ろうとするとき、それは自然に背景になり、ときには主役にもなってくれます。また山へ分け入れば、雪解けしかかった雪と木々の共生が見られ、写欲をそそります。残雪のある森へ入るなら、根空きが美しいブナ林がおすすめです。

上高地の残雪

夏山のイメージがある上高地ですが、初夏の美しさも格別です。大正池と穂高の山々の組み合わせをはじめ、梓川と穂高、河童橋と穂高なども上高地を代表する風景です。残雪をきれいに見せるには、背景が青空であることが望ましく、PLフィルターを使ってより鮮やかに表現する工夫も必要です。

  • 上高地の残雪
  • 上高地の残雪/撮影時期:5月下旬/焦点距離:36mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/50秒/絞り数値:F10/露出補正:-0.7EV/ISO感度:100

    長野県松本市安曇 上高地
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四十九院のコブシと残雪

白馬村の一角にコブシの大木があり、白馬の山々と重ねたり、田んぼの水と組み合わせることができるため、近年人気のスポットとなっています。一部に菜の花も咲かせているので、「菜の花+コブシ+山」という組み合わせも楽しめます。

  • 四十九院(しじゅうくいん)のコブシと残雪
  • 四十九院(しじゅうくいん)のコブシと残雪/撮影時期:5月上旬/焦点距離:57mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/80秒/絞り数値:F16/ISO感度:200

    長野県北安曇郡 白馬村北城
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鍋倉山

雪に埋まったブナは、初夏を迎える頃になると根の周辺から雪が解け、根の周りに円形の地面が見えるようになります。これを根開きなどと言いますが、被写体として高い人気を誇ります。鍋倉山ではこの根開きが見られます。早朝の朝日が入るタイミングや、霧がかかる条件で撮影できれば最高です。

  • 鍋倉山(なべくらやま)
  • 鍋倉山(なべくらやま)/撮影時期:5月下旬/焦点距離:28mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/20秒/絞り数値:F11/露出補正:-0.3EV/ISO感度:100

    長野県飯山市
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おすすめ水辺3選

山に囲まれた信州は、水が豊富だとも言えます。そのため渓流や滝、湖沼に恵まれ、四季を通して水辺の風景を存分に楽しむことができます。こういった水辺の風景は、緑が乏しい春よりも新緑が展開し始める初夏以降の方が楽しいものです。またひとことに水と言ってもさまざまで、滝に虹が架かったり、あるいは水自体の色が緑や青といった美しい色合いであるなど、被写体としての魅力は尽きません。

阿寺渓谷の碧色の清流

南木曾エリアにある極めて美しい色をした渓流。碧色と言えばよいでしょうか、緑でもなく青でもない、独特の色をたたえた渓流は、岩の美しさもあって、被写体としては高い魅力を放ちます。水の色は新緑とマッチしているので、5月以降に訪れることをおすすめします。

  • 阿寺(あてら)渓谷の碧色の清流
  • 阿寺(あてら)渓谷の碧色の清流/撮影時期:6月中旬/焦点距離:39mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/5秒/絞り数値:F11/露出補正:-0.7EV/ISO感度:200

    長野県木曽郡大桑村野尻 阿寺国有林内
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唐沢の滝の虹

菅平高原の一角にある滝。美しい直瀑は迫力はもとより、アプローチが楽という点もおすすめする理由のひとつです。飛沫が激しいため、夏の強い光が入ってくると虹や光芒が発生し、さらに魅力が増します。この滝を撮影するためには特別なレンズは必要なく、標準ズームレンズがあれば十分に対応可能です。注意したいのは、飛沫がレンズ前面にかかること。水滴を拭き取りながら撮影をしてください。

  • 唐沢(からさわ)の滝の虹
  • 唐沢(からさわ)の滝の虹/撮影時期:8月上旬/焦点距離:50mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/1.6秒/絞り数値:F11/ISO感度:100

    長野県上田市菅平高原
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大沼池の青い水

志賀高原にはたくさんの湖沼があります。周辺には、木戸池、一沼などアプローチが楽で人気の場所もありますが、濃い青い色の水をたたえた大沼池は数ある湖沼の中でも白眉と言えるものです。平坦な道を約1時間ほど歩きますが、目の前に現れた青い水を見ると、疲れは吹き飛びます。池の東側から俯瞰して見ることができる場所がありますが、ここから撮影する場合は超広角レンズが必要です。

  • 大沼池(おおぬまいけ)の青い水
  • 大沼池(おおぬまいけ)の青い水/撮影時期:7月中旬/焦点距離:15mm/絞り優先AE/シャッター速度:1/60秒/絞り数値:F8/露出補正:-0.7EV/ISO感度:200

    長野県下高井郡山ノ内町志賀高原
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信州の大自然をさまざまな視点で楽しもう

日本で4番目に広い面積を持つ長野県は、風景写真のドリームランド。そこに行けばどんな写真も叶うと思えるほどです。今回はそれぞれのテーマに基づいた3つの撮影スポットを挙げましたが、同じ場所であっても、撮影する時間やアングルを変えてみる、あるいは絞りやシャッター速度を工夫することで、表情はさまざまに変化します。自分だけの視点を持ち、オリジナリティに溢れる表現に、ぜひチャレンジしてみてください。

※この記事に掲載されている焦点距離は、すべて35mm判換算です。

信州キャンペーン実行委員会 春夏のおすすめ撮影シーン

信州には、アクティビティを楽しみながら、あるいはいろいろな場所で街並みを楽しみながら、写真撮影を楽しめるシーンが多数あります。一例をご紹介いたしますので、信州にお出掛けの際にはぜひご予定ください。

アウトドア
春:残雪トレッキング、春スキー、サイクリングなど
夏:登山、パラグライダー、SUP(スタンドアップパドルボート)、カヌーなど

歴史・文化
春:高遠城址、松本弘法山、上田城址、雪形と農業風景など
夏:軽井沢の教会、夏の戸隠など


春:信州の山菜料理、飯山のアスパラなど
夏:開田高原のとうもろこし、ブルーベリー料理など