写真家 関一也が語る「物語を伝える」写真のつくりかた | GANREF
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「その1枚を物語に」セミナーシリーズ
写真家 関一也が語る「物語を伝える」写真のつくりかた
日中&星景ロケーションポートレートにおける編集テクニック

この記事は2019年8月24日に名古屋で開催された“「その1枚を物語に」セミナーシリーズ・写真家が語る「物語を伝える」写真のつくりかた”をレポートしたものです。

日中にダイナミックレンジを活かしたり、夜間に星景を超高感度を活かしたりして撮るポートレートの撮り方を覚えれば、写真の表現の幅が広がる。ダイナミックレンジを活かすには、どのようなことに気を付けて撮影して編集すればいいのか、超高感度はどのように対処したらいいのかなどを紹介しよう。

関一也関一也 Kazuya Seki
長野県出身。日本写真家協会(JPS)会員。長野理容美容専門学校卒業後、2011年より写真家礒村浩一氏に師事後、+ONE Film Worksを設立。写真、動画、ジャンルを問わず総合写真家として活動中。カメラメーカーのサンプル撮影、Photo NEXT2014にてカメラメーカーセミナー講師を担当。ストロボメーカー講師、テレビ関連の動画撮影、カメラ雑誌などの執筆、寄稿など行う。
https://www.plus-one-fw.com/

物語を伝えるために何が必要か

写真を撮影する際に、テーマであったりタイトルであったりと、それぞれにストーリーを持たせる人は多いだろう。一枚の作品を見た時にストーリー性を感じ取ってもらうために、Lightroomのさまざまな機能を駆使して作品を制作している。ここでは作品のBefore&Afterを見ていただきながら、どのようなイメージで作品を仕上げていくのかを解説する。

撮影時に必要なこと

まず撮影時に必要なのは、写真を見る人に自分がどんな物語を見せたいのかを想像してみることだ。次に、TPO(時と所と場合)を意識しよう。ドラマチックな雰囲気を伝えたい場合は、朝や夕の斜光やサイド光、半逆光や逆光の条件になる時間帯を狙う。ロケーション(所)探しは一番重要で、何度も同じ場所に出向いて季節ごとの光の方向や、色などをチェックする。とくに、星景ポートレートにおいては、日中にロケーションを探さないと人工物や背景がどの様になっているのかを確認できないので、必ず日中と夜の2回確認を行う。そして、モデルの表情(場合)を決めることも大切だ。喜怒哀楽どの表情をさせるのか、手先の動きにも注意して、物語を作り上げていく。

主なライティング機材紹介

ライティング機材としては、「Cactus RF60X」や「Godox AD200」、「Profoto B1」、「Profoto A1」、「Nissin Di60A」といったストロボのほか、「Phottix M180」や「Litra Pro」などのLED照明を幅広く使用している。アクセサリーとしては、Profotoの「オクタ」のほか、「ROGUE Flash Grid」や「ROGUE カラーフィルター」は星景ポートレートで使うことが多い。これらは、表現したいシーンに合わせて使い分けている。

カラーシフト

カラーシフトとは、ストロボなどの人工光の色温度に合わせてホワイトバランスを変えることで、背景の色をコントロールする表現手法のことだ。人工光のあたる人肌を本来の色のまま背景を青くしたい場合や暖色系の部屋の色にストロボの光の色を合わせたい場合はオレンジ系(暖色)、背景を赤くして夕焼けっぽさを強調したい場合はブルーやシアン系(寒色)のフィルターを使用する。人肌を正しく見せることが全てではないが、表現する際のポイントだ。

こちらは、花火の色温度でカラーシフトを行った例。光の色がオレンジ系なので、ブルー側にホワイトバランスを調整して天体のイメージをファンタジックな青系にしている。調整の際、顔に当たっている花火の色でバランスが崩れないように意識した。モデルのうなじには街灯の光が当たっているので、青すぎず、かと言って人肌にも寄りすぎない、夜っぽさを活かした肌のトーンに仕上げた。ちなみに、花火は使用する種類で色や光の強さも変わるので、事前にやってみて確認するなど注意が必要だ。

Lightroom、Photoshopで何を意識すべきか

この記事で解説する「Lightroom」について
 PCで使えるデスクトップ版のLightroomは「Lightroom」と「Lightroom Classic」の二つがあります。どちらもCreative Cloudの「フォトプラン」(980円/月)で使うことができます。「Lightroom」は、デスクトップ、モバイル、webのどこでも動作する、クラウドベースの新しいフォトサービスで、「Lightroom Classic」は、デスクトップ向けデジタルフォト製品です。この記事では「Lightroom Classic」での画面や操作で解説していますが、同等のことが「Lightroom」でも可能です。

LightroomとPhotoshopにはそれぞれに役割があり、Lightroomでは、セレクトとベースとなるRAW現像を行う。まず、撮影してきたデータを取り込んだら★印や色で目印を付けてベストカットを素早く絞り込む。次に、ハイライトが白飛びしたり、シャドウが黒つぶれしたりしないように調整しつつ、レンズの色収差やフリンジ、ノイズなどにも気を配って丁寧にRAW現像していく。とくに白飛びは物語を伝える上で極力避けよう。なぜなら、人間の目は白飛びを感じることはほぼないので、それがあると写真に違和感を感じてしまうからだ。

PhotoshopではLightroomで行えないレイヤーを使用した画像調整や、ゆがみツールを中心に作品を仕上げる調整を行う。肌などの修正は被写体が気になりそうな部分を意識すると効果的だ。

超高感度撮影時におけるノイズ処理

  • 完成カット
    完成カット
  • 操作イメージ
    Lightroomのノイズ軽減には、「輝度」ノイズと「カラー」ノイズの2種類ある。輝度ノイズは白いドットのようなノイズで、カラーノイズはRGBの色の付いたノイズだ。
  • 操作イメージ
    カラーノイズが気になるので先に軽減しておく。気にならない程度に「カラー」のスライダーで調整する。
  • 操作イメージ
    全体的なカラーのムラが気になる場合は「滑らかさ」のスライダーを上げる。
  • 操作イメージ
    カラーの「ディテール」を少し上げる。上げすぎると色のトーンが崩れてしまうので注意。
  • 操作イメージ
    「輝度」は上げすぎると解像感が失われて立体感がなくなり、色のトーンがなくなってしまうので注意しながら調整する。
  • 操作イメージ
    輝度の「ディテール」は、輝度ノイズ軽減によって失われた解像感を少し強調させるのに使用する。コントラストに関しては全体的なバランスを見て判断する。
  • 操作イメージ
    LightroomからPhotoshopに画像を移行し、レイヤーをコピーして複製。[フィルター]→[ノイズ]→[ダスト&スクラッチ]を選択する。
  • 操作イメージ
    半径は「1」、しきい値は「0」レベルにして適用する。星にも少し影響が出てしまうので不透明度は「75」%に下げる。
  • 操作イメージ
    ダスト&スクラッチ Before
  • 操作イメージ
    ダスト&スクラッチ After
  • 操作イメージ
    レイヤー画像を統合した後、レイヤーを複製して「ぼかし(表面)」を適用する。半径は「5」、しきい値は「15」レベルで適用し、レイヤーの不透明度を「75」%に下げておく。
  • 操作イメージ
    背景のレイヤーをコピーしてレイヤー階層の一番上に移動する。
  • 操作イメージ
    [フィルター]→[その他]→[ハイパスパスフィルター]を選択。半径「2.5」にして適用する。
  • 操作イメージ
    そのレイヤーの描画モードを(オーバーレイ)にし、「不透明度」を「30」%に設定する。

[まとめ] 撮影技術はもちろん、編集技術によって伝えたい表現の幅が広がる。

写真で物語を伝える上で重要なことは撮影技術だけでなく、レタッチ技術も身につけることで表現の幅が広がるということ。

しかしCGや合成でない限り、レタッチには限界がある。レタッチを沢山やっていると、どうしても修正できない部分が出てくる。光の当たっていないモデルの表情の肌のトーンを出そうと思ってももともと光が当たっていないので、トーンどころかディテールも失われているのでどうにもできない。

光の方向を読み、必要ならライティングをして魅せたい部分を撮影の段階で決めること。RAW現像前にベースとなる絵をしっかり作り込み、ダイナミックレンズを活かした現像を行い、Photoshopでレタッチすることでノイズが少なく、自分の表現したいものがより伝わりやすくなる。

何度も言うが、ノイズが少なければ良いわけではない。技術的に、ノイズを増やすよりも減らす方が難しいので、ノイズをより少なく出来れば作品作りでも色々な表現にチャレンジできると思う。ぜひ今回の技術を応用して自分の物語を広げてみてほしい。

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