アドビツールで作品をデザインする
1非対称の構図
前段でも書いたが、構図は撮影時にしっかりと決めておくべき要素だ。現像は、その構図の意図をより強調する作業になる。カメラプロファイルやレンズプロファイルを適用してベースを作ってから、どこまでコントラストを高めるのかを設計して作業を進める。この画像では、上部の暗部と畝の土の部分を暗くし、緑の畝を立ち上げることで、畝の曲線と右上に流れていくイメージを強調するのが狙いだ。実際の作業は、コントラストスライダを使っても良いしトーンカーブを使っても良い。大切なことは、写真のどの部分が影響しているのかを見極めながら調整を進めること。Lightroomではマウスを置くと、ヒストグラム上がグレー反転するので、それを見ながら作業していくといいだろう。また、彩度に関しては必要以上に上げないことが重要だ。2斜線の配置によるダイナミズム
霧が生み出す斜線の印象を強くするための設計書はこうだ。朝の雰囲気を出すためにホワイトバランスを青系に振る。ハイライトをわずかに立て、中間調からシャドウ側を暗くして画面にメリハリを出す。「かすみの除去」をマイナスにすることで霧の雰囲気を強めてから、斜線の印象が強くなるまでコントラストをアップさせる。当然彩度が上がってくるので、その都度自然な彩度をマイナス方向に動かしながら、不自然な色合いにならないよう作業を進める。この作業は過剰に現像作業をしているのではなく、あくまで撮影時に抱いたイメージを再現する作業になる。つまり、ありえない条件を現像で作り出すのではないということを理解して欲しい。RAWデータの情報量は豊富なのだが、撮影時とは少し異なる印象を覚えることが多いと思う。あくまでそのイメージのギャップを埋めていく作業なのだと肝に命じて欲しい。
3デフォルメ
撮影時にある程度デフォルメした構図で仕上げているので、現像ではその印象をより強いものへと仕上げていく。この写真で最も強調したいのは空のディテール。流れ行く雲のモコモコとした立体感をいかにして出していくかが、この写真の現像の答えだ。実際にスライダを動かしてみるとわかるが、ここでコントラストをアップさせると不自然なほど彩度が高くなってしまう上に、それほどディテール感が強調されない。そこで活躍するのが「明瞭度」と「かすみの除去」スライダだ。とくに「かすみの除去」はこのような凹凸のある雲には有効で、とても立体感のある空の表情を生み出してくれる。さらに地上部のディテールも少しだけ出すのもコツだ。これはプリントした時に差が出てくるだろう。地上部が黒つぶれしていると黒ベタになってしまうが、わずかに情報を残すことで土の感じが引き出せて、リアリティのあるプリントになるだろう。
[まとめ] 絶妙のさじ加減で想像力を掻き立てる写真に仕上げよう
RAWデータの持つ情報量は豊富だ。しかし、その全てを映像として再現することが本当に必要だろうか。人の目で見ている光景と、カメラで捉えた映像は違っていて当然なのではないか。そして、見えない部分があるからこそ、より想像力を掻き立てられ、イメージが膨らむ写真になると信じている。自然界のコントラストや色彩は確かに驚くべきところはあるが、作者はその中でもどこに最も感動したのかを再現して欲しい。言い換えれば、一番見せたい部分をどうやって強調するかということをイメージして現像作業を行って欲しいと思うのだ。LightroomとPhotoshopの組み合わせは、表現の可能性をどこまでも広げてくれる。しかし、ツールが全面に出てしまっては本末転倒だ。主役は写真であり、作者の思いなのだから、あくまで隠し味として絶妙のさじ加減で使ってこそ、最高にカッコいいと思う。