写真家 小川晃代が語る「物語を伝える」写真のつくりかた | GANREF

「その1枚を物語に」セミナーシリーズ
写真家 小川晃代が語る「物語を伝える」写真のつくりかた
ペットの姿をより生き生きと

この記事は2020年2月11日に東京で開催された“「その1枚を物語に」セミナーシリーズ・写真家が語る「物語を伝える」写真のつくりかた”をレポートしたものです。

小川晃代小川晃代 Akiyo Ogawa
トリマー、ドッグトレーナー資格など動物資格を保持したペトグラファーの第一人者で、今までに3万匹以上のペット撮影を手がける。制作会社勤務を経て動物に特化した制作会社&写真スタジオ「アニマルラグーン」を設立。現在は写真教室の講師をはじめ、ペットイベントの企画運営・ペットモデルのコーディネーター等活動は幅広い。著書は「ねこの撮り方まとめました!」「ねこもふ。ごーじゃす」「ねこきゅう」「こいぬ」他多数。@akiyo_ogawa

ペット、野良猫、野生動物を撮影するペットのフォトグラファー、“ペトグラファー”を職業としています。主な仕事は、犬・猫などのペットをテーマにした書籍・カレンダーへの写真提供です。

相手が動物ということで、撮影には独特の難しさがあります。人間のモデルと違い、快く指示を聞いてくれるわけではありませんから。現場で気をひいたり誘導のために使うのは主に猫じゃらしですね。猫だけでなくワンちゃんにも使ってます。

試行錯誤や思いつきを活かすことも難しいので、行き当たりばったりではなく先に背景などのシチュエーションを決めおくことが多いです。この写真はワンちゃんの代わりにブロアーを置いたりして、どう撮るかをシミュレートしている例です。

私がペットの撮影で主に使用するレンズは、24-70mm F2.8、70-200mm F2.8、35mm F1.4です。70-200mmは花などの背景をぼかしたいときや、被写体に動きがあるときに使います。速い動きを撮る場合は、シャッター速度を1/1,000秒以上に上げて瞬間を止めるように撮ると躍動感が出ます。35mm F1.4は屋内で暗い場合ですね。

  • 70-200mm
  • 35mm

では、私が行っている実際のRAW現像作業をご覧いただきましょう。例としてお見せするのはLightroom Classicでの作業になります。

この記事で解説する「Lightroom」について PCで使えるデスクトップ版のLightroomは「Lightroom」と「Lightroom Classic」の二つがあります。どちらもCreative Cloudの「フォトプラン」(980円/月)で使うことができます。「Lightroom」は、デスクトップ、モバイル、Webのどこでも動作する、クラウドベースの新しいフォトサービスで、「Lightroom Classic」は、デスクトップ向けデジタルフォト製品です。この記事では「Lightroom Classic」での画面や操作で解説していますが、同等のことが「Lightroom」でも可能です。

明暗差のあるシーンを自然に

最初の例です。明暗差が激しいシーンで、白い毛の子犬を撮りました。

  • 補正前

Lightroom Classicを使った補正の手順

  • 操作イメージ
    まず「色収差の除去」「プロファイル補正」を適用します。色収差やレンズ固有の歪みが抑えられるので、ほぼすべての作品で使用している機能です。
  • 操作イメージ
    少しトリミングをして、同時に水平を整えます。水平を取っているつもりでも、手持ち撮影だと傾いていることがありますので注意してください。
  • 操作イメージ
    「色温度」を少し低くして青みを加えました。白い毛が青っぽくならないよう、わずかに調整しています。
  • 操作イメージ
    全体を明るくするため「露光量」も少し上げます。白トビする箇所が出てきますが、「ハイライト」を下げることで対処できます。
  • 操作イメージ
    「明瞭度」「かすみの除去」を少しプラスにします。これで全体がシャープになりました。
  • 操作イメージ
    顔の影を明るくするため「補正ブラシ」を選択。明るくしたい部分をなぞり、「シャドウ」を上げます。「露光量」を上げると効果が強すぎるので注意してください。

これで完成です。実際より少し明るくした上で青みを足したので早朝の雰囲気が加わりました。ハイライトを抑えたことで白トビも気にならず、顔も明るくなっているのがわかると思います。

  • 完成
  • 補正前
    補正前
  • 補正後
    補正後

「かすみの除去」で青空をより青く

次は背景の青空をもう少し濃くしてみましょう。

  • 補正前

青空を青くするときに私が試すのは「かすみの除去」です。これをプラスにすることで、かすみが少なくなり色が出てくるのです。ただしやりすぎると不自然になるため、少しだけに抑えるのがコツ。「かすみの除去」を使うとコントラストも変わるので、それを抑える補正もしましょう。

Lightroom Classic & Photoschop CCを使った補正の手順

  • 操作イメージ
    「かすみの除去」は色を鮮やかにする効果があります。ただし適度に抑えないと絵が破綻するので、ほどほどにしておきましょう。
  • 操作イメージ
    「自然な彩度」も上げてみます。これで空がより青くなります。
  • 操作イメージ
    いままでの補正でコントラストが強くなりましたので、「コントラスト」を下げることで対処します。
  • 操作イメージ
    影が強く感じられるので、「シャドウ」を上げます。
  • 操作イメージ
    顔の影に乗ったノイズを「ノイズリダクション」で抑えます。
  • 操作イメージ
    白内障などで黒目が白っぽくなってしまっている場合には、Photoshopの「焼き込み」ツールで瞳の中の白い影をなくします。

こうして出来上がったのがこの作品です。

  • 完成

気になるエリアに「段階フィルター」

次の例はコスモスの花と猫ちゃんの取り合わせです。全体的に明るくすると同時に、暗く見える画面の左側を明るくしたいと思います。

  • 段階フィルター前

画面内のある範囲を変化させたい場合は「段階フィルター」を使います。メインの被写体にかからないよう範囲を設定。その後、範囲内のシャドウを明るくしました。

  • 段階フィルター適用中
  • 段階フィルター後

「段階フィルター」の適用範囲が狭いと、変化が急峻になるため不自然になりがちです。範囲を広めに設定することをおすすめします。トリミング、水平出し、色温度の変更、露光量のアップも行っています。

ついでに目元の涙やけをPhotoshopで消してみました。「コピースタンプ」ツールでも大丈夫ですが、今回は「スポット修正ブラシ」を使います。半径・硬さの調整は必要ですが、なぞるだけで近くのものを見て自動的に修正してくれます。

  • スポット修正ブラシ前
    スポット修正ブラシ前
  • スポット修正ブラシ後
    スポット修正ブラシ後

綺麗に消せるのですが、涙やけがあることをチャームポイントとしている飼い主さんもいらっしゃるので、程よく消すように加減することもあります。

[まとめ] RAW現像で撮影時のイメージを取り戻そう

Lightroomを使うと、撮影していたときに抱いていたイメージへと簡単に近づけます。モバイルアプリも用意されていますので、まずはモバイル版を試していただいて、デスクトップ版に進まれてはいかがでしょうか。みなさんがLighroomで作品を仕上げてSNSにアップロードされるのを楽しみにしてます。


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